“エルサレムを首都” 猛烈な反発 どうなる?

トランプ大統領は6日、中東のエルサレムについて、イスラエルの首都と認めると宣言。そのうえで現在、テルアビブにあるアメリカ大使館をエルサレムに移転する方針を明らかにしました。エルサレムを将来の独立国家の首都と位置づけるパレスチナは強く反発していて、各地で抗議デモが拡大しています。

トランプ大統領の宣言は

6日、ホワイトハウスで演説したトランプ大統領は、中東のエルサレムについて「イスラエルの首都と認める時が来た。これは現実を認めることで、正しいことだ。新たなアプローチの始まりだ」と述べ、公式にイスラエルの首都と認めると宣言。
国務省に対し現在、テルアビブにあるアメリカ大使館をエルサレムに移転する準備を始めるよう指示すると明らかにしました。

一方でトランプ大統領は「この判断は和平合意の促進にアメリカが強く関与するという決意を変えるものではない」と述べ、中東和平の実現に強い意欲を示しました。

理由は何か?

ティラーソン国務長官は7日、「トランプ大統領は、単にアメリカ国民の意志を実行しているだけだ」と述べ、判断は正当だと強調。

ホワイトハウスのサンダース報道官は定例の記者会見で、アメリカ議会が1995年にアメリカ大使館をエルサレムに移転するよう求める法案を可決していることに触れ、「今回の決定はトランプ大統領の勇気ある、大胆な行動であると同時に、議会が長く求めてきたものだ」などと述べました。

なぜ今なのか?

ワシントン西河記者
ワシントン支局 西河記者

ワシントン支局の西河記者が指摘するポイントは:

▼トランプ大統領は「国際社会からどう見られるか」よりも「国内の支持者にどうアピールするか」を優先させたということ。

▼トランプ大統領の強い支持層は国際的な評価よりもいかにトランプ大統領が既存の政治家とは異なる取り組みを行っているかを重視する傾向にある。

▼歴代の大統領は、大使館の移転を見送っていて、トランプ大統領もことし6月には反対の声を踏まえて、いわばしぶしぶ移転を見送っていた。

▼来年には審判の場となる中間選挙も控える中、今回も移転を見送れば、「結局、歴代の大統領と同じで口先だけだ」と支持者が離れるのを避けたかったのだと思う。

なぜ大きな問題に?

エルサレムをめぐり、なぜこれだけ大きな問題になっているのか、動画で解説します。

(動画2分8秒)

抗議の動き広がる

石を投げるパレスチナ人

トランプ大統領の宣言に対し、同じくエルサレムを、将来、国家を樹立する際の首都と位置づけるパレスチナ側は強く反発していて、すべての政治勢力が抗議デモを呼びかけています。

7日、パレスチナ暫定自治区のうちヨルダン川西岸では、主要都市のラマラで、抗議集会が開かれたのに続いてパレスチナ人の若者数百人がイスラエル軍の検問所に向けて一斉に石を投げ、これに対して軍はゴム弾を発射したり、催涙ガスを使ったりして衝突に発展。

また、ガザ地区では、デモ隊がイスラエルとの境界付近に展開しているイスラエル軍に向けて石を投げ、これを軍が催涙ガスを使って強制排除するなど、治安が悪化しています。
ガザ地区の武装組織がイスラエル領内に向けて短距離のロケット弾を数発発射し、「トランプ大統領への反撃だ」との声明を出したのに対し、イスラエル軍は戦車が砲弾数発を発射しましたが、双方とも被害は無かった模様です。

事態はどうなる?

澤畑支局長
エルサレム支局 澤畑支局長

エルサレム支局の澤畑支局長が指摘するポイントは:

▼強い反発が起きているが、さらにエスカレートする懸念はある。2000年代前半に、パレスチナの武装グループとイスラエル軍との間で繰り広げられ、多数の死傷者が出た暴力の応酬はエルサレムをめぐる対立が発端だった。

▼8日金曜は、イスラム教の集団礼拝が行われる。その後は、エルサレムでも礼拝に続いて大きな抗議デモが起きる可能性がある。聖地エルサレムでの衝突が回避されるのかが、今後の情勢を見極めるポイント。

▼イスラム諸国からは、宗派や民族の枠を超えて、トランプ大統領が就任以来、最大級の非難の声が上がってる。アメリカへの強い反発や抗議のデモは、パレスチナにとどまらず、広がるおそれはある。

▼中東で、アメリカの影響力が低下するのは避けられず、反米感情の高まりにつけ込んだ過激派によるテロが起きることも指摘されていて、アメリカ政府は、自国民に安全確保を呼びかけている。

▼エルサレムの問題は中東紛争の核心とも言われている。トランプ大統領は、いわば「パンドラの箱」をあけてしまったわけで、どう決着するのかは、まったく見通せない情勢だ。