パラリンピック卓球“できないことはない”エジプト選手の思い

東京パラリンピック、卓球の男子シングルス、腕や足に障害のあるクラスのエジプトのイブラヒーム エルフセイニ・ハマドトゥ選手。口にラケットをくわえてプレーするハマドトゥ選手は、27日の試合に敗れたことで予選リーグ突破はなりませんでした。試合後は「“できないことはない”と世界中の人に知ってほしい」とメッセージを残しました。

目次

    「卓球はできない」と言われたから…

    エジプトのイブラヒーム エルフセイニ・ハマドトゥ選手は48歳。
    口にラケットをくわえ、首を振って左右にショットを打ち分けるプレー。さらに足の指でボールをはさんでサーブトス。そのスタイルは、数多くの努力を積み重ねてできあがったものでした。

    ハマドトゥ選手は10歳のときに列車の事故で両腕を失いました。
    活発な少年で、事故のあともサッカーに打ち込んでいたというハマドトゥ選手。13歳のとき、友人から「卓球はできない」と言われたことが、卓球を本格的に始めるきっかけになったといいます。
    当初は脇の下にラケットをはさんでのプレーなどを試したものの、うまくいかず、口にラケットをくわえるスタイルにたどり着きました。しかしー

    「最初は10分間で歯の痛みに耐えられなくなった」

    しばらくは歯の痛みとの戦いだったといいます。

    積み重ねた努力 パラリンピックへ

    痛みに慣れるまで毎日数時間、ひたすら練習を重ねました。それだけでなく、ハマドトゥ選手によりますと、歯の強化のためにルッコラや牛乳など、「カルシウムをとれるものならなんでも摂取した」ということです。

    選手として活躍するようになってからは専門の歯科医師もつき、いかに歯に負担をかけずに競技をするかアドバイスを受けてきました。また、専門家とともに首のトレーニングも続けてきました。
    その結果、4時間から5時間は連続でラケットを口にくわえてプレーできるようになりました。

    また、足の指でボールをはさんでサーブのトスを上げる練習も重ねました。そして2016年のリオデジャネイロ大会でパラリンピック初出場を果たしたのです。

    「不可能はないということを証明したい」

    2大会連続出場となった東京大会。
    初戦は25日、韓国の選手と対戦しました。ハマドトゥ選手は、足でボールを高くあげ、口にくわえたラケットでサーブ。相手が返してきたボールを、鋭く打ち返しました。

    最初の2ゲームを奪われてあとが無くなった第3ゲーム。粘りましたが9対11でこのゲームを落としストレート負け。試合後は「勝つつもりでいたので悔しい」と話しました。

    中国の選手との対戦となった27日の第2戦。
    この試合も、ゲームカウント0対3で敗れ、0勝2敗となり予選リーグ突破はなりませんでした。

    試合のあとハマドトゥ選手はー
    「不可能はないということを証明したい。できないことはないと世界中の人に知ってほしい」

    これから挑戦したいことを尋ねました。

    「私と同じように両腕がない人はたくさんいる。そういった人たちが平等に戦えるチャンスを得るため、腕のない人のクラスを作ってもらうよう、国際パラリンピック委員会に働きかけていきたい」

    少年時代の友人のひと言から、数多くの努力を積み重ねてきたハマドトゥ選手。不可能と思われることを可能にするための挑戦は続きます。

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