新時代へ 東京オリンピック 世界のアスリートからのメッセージ

東京オリンピックでは海外の選手たちが新しい記録を生み出しています。陸上男子400メートルハードル決勝では世界新記録をマークして金メダルを獲得したノルウェーの選手が興奮のあまりユニフォームを破いて絶叫。歓喜の一方で、さまざまな思いを胸に“TOKYO”の舞台に立ち、強いメッセージを発信している選手もいます。

目次

    次々と生まれる新記録

    新型コロナウイルスの感染拡大と向き合う東京オリンピック。世界のおよそ200の国と地域から1万1000人余りが参加し、連日、新しい記録が次々と生まれています。

    ミハイン・ロペス ヌニェス選手

    キューバのミハイン・ロペス ヌニェス選手、38歳。レスリング男子グレコローマンスタイル130キロ級でレスリング男子で史上初となるオリンピック4連覇を達成しました。

    「信じられない実績を残して本当に幸せだ。キューバの人たちも幸せになってくれたと思う。望めば目標を達成できることをレスリングの選手たちに伝えたい」

    ユリマル・ロハス選手

    ベネズエラのユリマル・ロハス選手は、陸上女子三段跳び決勝で、これまでの世界記録を17センチ上回る、15メートル67センチの世界新記録で金メダル。
    この種目の世界記録を26年ぶりに塗り替えました。

    エレイン・トンプソン ヒラ選手

    ジャマイカのエレイン・トンプソン ヒラ選手。陸上女子100メートル決勝で10秒61のオリンピック新記録で2大会連続の金メダルを獲得。さらに今大会は200メートルも勝って二冠を達成しました。

    11年後も参加?

    62歳のメダリストも誕生しました。
    オーストラリアのアンドリュー・ホイ選手は2日に行われた馬術の総合馬術の決勝で団体で銀メダル、個人で銅メダルと2つのメダルを獲得しました。

    ホイ選手

    「とてもとても特別なことだ。特にオリンピックでは4位や5位、6位になるために来るのではないから」

    アンドリュー・ホイ選手

    ただ、アスリートとしては年齢が高いため選手村で会った人たちからは「あなたは何をしている人なの?スタッフですか?」と聞かれ「いえいえ、私は選手です」と答えているそうです。
    ホイ選手の母国オーストラリアのブリスベンでは、11年後の2032年にオリンピックが開かれることが決まっています。この大会に出場するかどうか問われホイ選手はー

    ホイ選手

    「きょうの時点では準備はできています。(出場するかは)競技を続けていれば時が教えてくれるでしょう」

    注目は記録以外にも…

    陸上女子800メートルでアメリカに53年ぶりの金メダルをもたらしたのが19歳の新星、アシング・ムー選手です。

    アシング・ムー選手

    競技だけでなく、ヘアスタイルでも注目されました。7月31日の準決勝では、いわゆる“おだんご”が2つある髪型で登場。
    試合後のインタビューではー

    「(この髪型を)“スペースバンズ”と呼ぶ人もいますが、私はただのおだんごと呼んでいます。私はただ、ネットで見てまねしているだけなんですけどね」

    ちなみにムー選手、決勝では“おだんご”を1つにまとめていました。

    観客席で編み物をしていたのは、男子シンクロ高飛び込みの金メダリスト、イギリスのトーマス・デーリー選手です。

    トーマス・デーリー選手

    自身のインスタグラムで友人のために犬用のセーターを編んでいたことを明らかにしています。金メダルを獲得し、日本と英国の国旗がデザインされたメダル入れの袋も作ったそうです。

    コロナで“世界1位”が欠場

    射撃の女子スキート。世界ランキング1位、イギリスのアンバー・ヒル選手は日本に向かう直前の7月20日に新型コロナウイルスへの感染が確認され、欠場を余儀なくされました。ヒル選手はインスタグラムで「“心が粉々になった”今感じている痛みを表すならこんなことばしかありません」と悲痛な思いをつづっています。
    世界1位不在の中のオリンピック。金メダルを手にしたアメリカのアンバー・イングリッシュ選手は複雑な心境でした。

    アンバー・イングリッシュ選手

    イングリッシュ選手

    「彼女が来られなかったことは残念だし、この場に一緒にいられたらいいと思うけど、私たちにできることは何もなく、できることは自分のシューティングに集中することだけだった」

    1年の延期 アスリートへのストレス

    シモーネ・バイルズ選手

    アメリカの体操女子のエース、シモーネ・バイルズ選手。予選で個人総合トップの成績を出すなど決勝に進んでいましたが、団体決勝では2種目め以降の演技をしませんでした。その理由についてー

    “今大会は1年間の延期や無観客での開催など、いろいろな要素が重なって非常にストレスがたまっていた”

    バイルズ選手はその後、8月3日に種目別の平均台の決勝に出場し銅メダルを獲得しました。

    アメリカのウォールストリート・ジャーナルは「メンタルヘルスはこれまで水泳界のレジェンドであるマイケル・フェルプス氏など、ほんの数人の勇気あるアスリートが口にできる話題だったが、今回は史上最高のオリンピック選手が考えられる最も大きな舞台で、リアルタイムに公の場でその問題に取り組んだ。理由を隠したまま日本を去ることもできたが彼女はそうせず、エネルギーに満ちた存在であり続けた」と称賛しました。

    アスリートからのメッセージ

    「多様性と調和」がコンセプトの1つに掲げられている東京オリンピック。
    世界のアスリートたちは、大会を通じてさまざまなメッセージを発信しています。

    ボディースーツで演技をしたドイツの選手

    体操女子の予選にのぞんだドイツの選手たち。従来のレオタードではなく、全身を覆うボディースーツのユニフォームで演技しました。背景には女性アスリートの盗撮被害や性的な目的での画像の拡散が問題になっていることがあげられます。

    サラ・フォス選手のSNSより

    “ほかの女性や特に若い選手に最も快適なものを身につけることを促すパフォーマンスを見せることが特に重要だった”

    ローレル・ハッバード選手

    ウエイトリフティングの女子87キロ超級。ニュージーランド代表のローレル・ハッバード選手は心と体の性が一致しないトランスジェンダーの選手として初めてオリンピックに出場しました。
    ハッバード選手は2013年にトランスジェンダーであることを公表し、性別適合手術を受けていました。

    ハッバード選手

    「私がオリンピックの舞台に立ったことで、誰かを勇気づけられればいい。人生で困難に突き当ったり苦労したりしている人たちに、この世界では、ありのままで生きていいんだということに気付いてほしい」

    サッカー女子のイギリス代表の選手たち。予選リーグの試合開始前に片方のひざを地面について人種差別への抗議を表明しました。

    一方、陸上女子砲丸投げの表彰式では、銀メダルを獲得したアメリカの選手が両手を頭上で交差させました。「抑圧された人々」への連帯を示す抗議行動です。

    オリンピック憲章は、競技会場などでデモや政治、宗教、人種に関する宣伝活動を禁止していますが東京オリンピックではこの一部が緩和されました。ただ表彰式では禁止されていて、IOC=国際オリンピック委員会が調査しています。

    そして金メダルは輝く

    2人の選手が同時に金メダルを獲得する珍事もありました。
    8月1日、陸上の男子走り高跳び決勝。
    カタールのムタエッサ・バーシム選手とイタリアのジャンマルコ・タンベリ選手が、ともに試技を1回も失敗することなく1位で並びました。

    ジャンプオフと呼ばれる追加試技で勝敗を決することもできたのですが、「ジャンプオフをやりますか」という審判員の問いかけに対し、バーシム選手が「(ジャンプオフをしなければ)金メダルは2つもらえるの?」と尋ねました。

    「可能です」という審判員の答えにふたりはうなずきあい、バーシム選手が「友よ、歴史だ。オリンピックチャンピオンだ」と語りかけ、互いの金メダルを認めました。

    熱戦が繰り広げられている東京オリンピック。さまざまなストーリーとともに、新たなレガシーが生まれようとしています。

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