オリンピック なでしこジャパン 立て直す時は“今”

7月30日午後8時50分すぎ。サッカー女子の日本代表「なでしこジャパン」は、準々決勝で敗れ、自国開催の東京オリンピックを終えた。突きつけられたのは「世界との差」だ。2011年にワールドカップを制してから10年。1度は頂点に立った日本が、着々と強化を進める世界から取り残されつつある。

目次

    世界との切実な差

    その差が最も如実に現れたのが、敗れた準々決勝、スウェーデン戦だ。と言っても、この試合、日本は持ち味を見せることはできた。
    高い技術を備えた複数の選手がパスやドリブルを駆使して連動するサッカー。同点に追いついた場面はまさに日本の得意の攻撃パターンだった。

    長谷川唯選手のパスにうまく抜け出した清水梨紗選手が右サイドを突破しクロスボールをあげる。これを田中美南選手が正確に押し込んだ。
    その後もエースの岩渕真奈選手が起点になるなど主導権を握る時間帯はあった。

    では何が違ったのか。
    大きかったと感じたのは身体能力の差だ。この試合では開始直後に相手の高さに対応できずクロスボールを頭で合わされて早々に失点。そしてペナルティーエリア内では競り合いに負け、追加点を奪われた。その後も縦への1本のパスからスピードの差で抜け出した相手選手に何度もゴールを脅かされた。

    「うまいだけでは勝てない」

    フランス1部の強豪でプレーしてきたキャプテンの熊谷紗希選手は試合後に危機感を募らせていた。

    熊谷紗希選手

    「おととしのワールドカップフランス大会の負け方ときょうの負け方を考えた時に、自分たちがうまくてボールを支配できて、相手の嫌なプレーができて怖いかと言われて、じゃあ結果が出せたかと言われると、やっぱりこれが本当に今の世界との差かなと感じている。自分たちがこれから世界で勝っていくために、何をしていかないといけないかというのをもう一回考えるべきだ。自分たちのウィークな部分をどれだけ戦えるまでにしていくかというところが、これからの日本の女子サッカーの課題。ここで終わった原因をこれからまだまだ続く日本の女子サッカーのためにも、もっともっと追求していかないといけない」

    強化も及ばず

    ただ、身体能力の差というのは、2011年、日本が初めてワールドカップを制した時から言われ続けてきた課題だ。

    なでしこジャパンも大会に向けて特別なキャンプを行うなど、全くの無策だったわけではない。だが世界の進化のスピードは日本の予想を超えていた。

    高倉監督

    「何を武器に戦おうと思ったときに、やはり技術的な部分であったり組織的に戦っていけるところ。ただそんな中で足りないのはフィジカル的な要素。どんなところを強化していくべきかというところを共有して、選手もそれに対して本当に努力してきた。ただきょうの敗戦に関しても、自分たちが最後、点を取りきれなかった部分は、そのフィジカル的な要素。選手たちは補うべくして、努力を重ね、レベルアップした部分もあった。世界中の女子サッカーの急速な進歩というところの幅が自分の計算とはちょっと違っていた」

    世界の潮流は

    世界との差が広がると懸念されるのはそれだけではない。ヨーロッパでは、男子の大型クラブが女子部門に力を入れて強化を図り始めている。女子リーグにも巨額のスポンサーがついて普及・育成や選手の強化にとどまらず、競技人口を増やす努力を続けている。

    一方の日本。
    小学生年代のチームは男女混合のところが多く、日本サッカー協会の去年の登録数は8337。中学生年代になると男女で体格差が出てくるため、選手のほとんどは女子のみのチームに入る。

    ところがこの女子のチームの登録数が1303にとどまる。このため、関係者によると中学生になったとたん、サッカーを辞めざるを得ない選手は少なくないという。

    こうした普及や強化の土台を整備していくことにも、より目を向けていくべきではないか。

    高倉監督も今後、環境を充実させることの重要性に改めて言及していた。

    高倉麻子監督

    「強豪国のほとんど、例えばアメリカで言えば160万人の女子サッカー選手がプレーしていて、ドイツも100万人、日本は5万人。秋にはプロリーグがスタートするが、子どもたちがサッカーを始めてくれること、またはその選手たちがプレーを続ける環境ができあがることが大切。さらに言えば、圧倒的な個の力というのは必要だと思うし、育成年代から日本の武器であるうまさに加え、決定的な仕事ができる、決定的な仕事をさせないとという要素を課題にして取り組んでいきたい」

    立て直す時は“今”

    ワールドカップ優勝という栄光から10年。
    この期間に女子のサッカーを巡る環境の厳しさが改善されたとは言いがたい。おととしからFIFA=国際サッカー連盟が女子のサッカーの普及に力を入れるという声明を出したことを受けて、日本サッカー協会もようやく動き出した状況だ。

    今回の東京オリンピックの敗戦の責任を選手や監督だけにその押しつけるようでは次なる飛躍は見込めない。現実的な問題を言えば資金も人材も必要になるだろう。選手や監督だけでなく、すべてを統括する協会の本気も問われることになる。2年後には次のワールドカップ、3年後にはパリオリンピックと大きな大会は今後も次々にやってくる。
    世界に追いつくため、立て直すタイミングは今しかない。
    (スポーツニュース部 記者 鈴木笑)

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