オリンピック 大会後半の“華” 陸上がいよいよスタート

東京オリンピックは日本のメダルラッシュが続いているが、大会8日目から、後半の“華”とも言われる陸上がスタートする。
世界との差が大きく上位進出が厳しいと言われ続けてきた陸上だが、東京オリンピックに向けて日本のレベルは急激に向上している。各種目で日本記録の更新が相次ぎ、オリンピックのファイナリストに近づいていることを実感している選手も多い。また、ひと味違った強い思いを持って自国開催の大会に臨む選手もいる。
東京を舞台にしたオリンピックで日本のアスリートがどこまで世界に迫れるか。その見どころを日程ごとに紹介する。

目次

    7月30日 最初の決勝は男子10000m

    相澤晃選手

    最初の決勝種目に出場するのが、男子10000メートルの相澤晃だ。
    24歳の相澤は代表選考会となった日本選手権で27分18秒75と圧倒的な日本記録を出して代表をつかんだ。その相澤が強く意識する伝説の選手がいる。

    円谷幸吉さん

    1964年の東京オリンピックのマラソンで国立競技場を埋めた満員の観客を沸かせた円谷幸吉(銅メダルを獲得)だ。
    相澤はいまも語り継がれる伝説のランナーと同じ福島県須賀川市出身、円谷ゆかりの陸上クラブ「円谷ランナーズ」で陸上を始めた。まさに円谷の直系とも言える存在だ。
    その相澤が見据えるのは、東京オリンピックで円谷に並ぶこと。実は円谷は10000メートルにも出場し、入賞を果たしている。
    ケニアやエチオピアなど、アフリカ各国に強豪が多いこの種目では決して簡単な目標ではないが、相澤は黙々と走る円谷の背中を追い続ける。

    7月31日 男子100m予選に多田、山縣、小池が

    過去3大会、あのウサイン・ボルトが頂点に立ち続けた男子100メートル。

    日本選手の歴史をたどると「暁の超特急」と言われた吉岡隆徳が、1932年ロサンゼルスオリンピックで6位に入賞したほかは、決勝のスタートラインに立った選手すらいない。

    左から多田修平選手 山縣亮太選手 小池祐貴選手

    今回、その決勝に挑むチャンスをつかんだのは、10秒01の自己ベストを持ち、日本選手権で優勝した多田修平。9秒95の日本記録を持つ山縣亮太。日本歴代3位の9秒98が自己ベストの小池祐貴の3人だ。
    89年ぶりにファイナリストの称号をつかむことはできるのか、そのための最初のレースとなる予選がこの日に夜に行われる。

    また、午前のセッションでは、女子100メートルハードルの予選が予定されている。

    寺田明日香選手

    注目は子育てをしながら日本記録を連発する寺田明日香だ。
    今シーズンだけで日本記録を12秒87まで更新した。まだまだ伸びしろがある選手で、どこまで記録を伸ばし、準決勝、決勝とどこまで進めるのか、まずは予選の走りに注目だ。

    8月1日 男子100m準決勝・決勝 男子走り高跳び決勝

    もちろんこの日の最大の注目は、人類最速の男が決まる男子100m決勝だ。そのスタートラインに日本選手が立てるのか、期待は高まる。

    戸邉直人選手(左)と衛藤昂選手

    同じ日に決勝を迎えるのが男子走り高跳びだ。
    この種目には戸邉直人と衛藤昂が出場する。2日前の予選を通過することが条件だが、戸邉の持つ2メートル35センチの日本記録は十分表彰台が狙える記録だ。目標としてきた国立競技場で舞台で、どんな跳躍を見せるか、注目してほしい。

    8月2日 男子走り幅跳び決勝

    跳躍種目で上位進出が期待できる、もう1つの種目が男子走り幅跳びだ。

    左から城山正太郎選手 橋岡優輝選手 津波響樹選手

    8メートル40センチの日本記録を持つ城山正太郎、8メートル36センチの橋岡優輝、そして8メートル23センチの津波響樹の3人が出場する。
    中でも橋岡は、直前の日本選手権で自己ベストを更新するなど大きなジャンプを連発し、好調を維持している。
    こちらも2日前の予選通過が条件だが、決勝で自己ベストを更新するような大ジャンプを見せることができればメダルも見えてくる。

    8月3日 男子200m予選・準決勝

    左からサニブラウン アブデル・ハキーム選手 飯塚翔太選手 山下潤選手

    この日の注目は男子200メートルの予選、準決勝だ。日本からはサニブラウン アブデル・ハキーム、飯塚翔太、山下潤の3人が出場する。
    中でも期待されるのがサニブラウンだ。6月の日本選手権は左太ももの違和感のため欠場と心配されたが、その後短期間で走りを修正するため、海外に渡って調整を積んできた。もともと200メートルを得意とする選手でユース時代には年代別の世界選手権で優勝した経験もある。
    どこまで調子を戻してこられるか、ここでの走りが男子400メートルリレーの走順にも影響を及ぼしそうだ。

    8月4日 男子110メートルハードル準決勝

    左から泉谷駿介選手 金井大旺選手 高山峻野選手

    午前のセッションで行われる男子110メートルハードル準決勝。日本選手としてはじめての決勝進出なるかの期待がかかる。
    13秒06の日本新記録を持つ泉谷駿介、13秒16の金井大旺、13秒25の高山峻野。この3人はいずれも本来の力を発揮できればチャンスはある。
    中でも泉谷が日本選手権でマークした13秒06の日本記録は、リオデジャネイロオリンピックならば銀メダルに相当するタイムだ。
    前日の予選を通過後、万全のコンディションで臨むことができれば決勝に届く走りが期待できる。

    この日の最終種目は男子200メートルの決勝。日本選手がファイナリストに残れるか、また世界のトップスプリンターがどんな記録を出してくるのかにも注目が集まる。

    8月5日 男子400メートルリレー予選 男子20キロ競歩

    午前のセッションで行われる男子400メートルリレー予選は、金メダルを目指すチームジャパンにとって重要なレースとなる。
    誰が何走を務め、バトンパスはうまくいくのか。順当に走れば決勝進出は間違いないが、ここをミスなく走りきり勝負の決勝につなげていきたい。

    山西利和選手

    午後4時半から札幌で行われる男子20キロ競歩は、金メダルへの期待が高まっている。
    山西利和は、おととしの世界選手権で金メダルを獲得、世界ランキングでも1位をキープしてきた。勝負どころを逃さず一気にスパートし海外勢との駆け引きを制することができれば頂点が現実味を帯びてくる。

    8月6日 男子50キロ競歩 女子やり投げ 男子400mリレー決勝

    川野将虎選手(左)と丸尾知司選手

    午前5時半から札幌で行われる男子50キロ競歩はメダル獲得が有力な種目だ。
    日本記録保持者である川野将虎、歴代2位の丸尾知司に注目だ。
    4時間近く行われるレースでは暑さとの戦いになるが、日本は本番のレースに向けて「暑熱対策」に力を入れてきた。こうした戦略が実を結べば表彰台はすぐそこだ。

    北口榛花選手

    国立競技場では女子やり投げの決勝が行われ、日本からは北口榛花が唯一この種目に出場する。
    3日前の予選を通過することが条件だが、自己ベストの66メートルはメダル獲得が十分に狙える記録だ。6月の日本選手権では助走を試行錯誤していて、それが本番でピタリとはまるか、注目される。

    そして、午後10時50分から行われるのが男子400メートルリレー決勝だ。
    日本は、前回リオデジャネイロ大会で銀メダルを獲得して以降、金メダル獲得を目標に掲げ準備を進めてきた。
    そのなかで100メートルで9秒台の選手を4人生むなど、男子スプリント界の急激な成長につながった。このレースでは最も速い4人が日本の期待を背負ってバトンをつなぐ。
    最大のライバルは9秒7台や8台のタイムをそろえるアメリカだ。
    しかし、バトンパスの技術では日本が大きくリードしており、日本が伝統のアンダーハンドパスを決めてベストな走りをみせれば、悲願の金メダルも夢ではない。

    8月7日 女子マラソン

    左から前田穂南選手 鈴木亜由子選手 一山麻緒選手

    午前7時から札幌で行われるのは女子マラソン。前田穂南、鈴木亜由子、一山麻緒の3人が出場する。
    中でも好調なのが一山だ。代表内定を決めた去年の名古屋ウィメンズマラソンの後、大阪国際女子マラソンで優勝、3か月前に本番と同じコースで行われたハーフマラソンでは自己ベストを更新するなど成長著しい。当日のコンディションや海外勢のできしだいでは十分に上位進出をねらっていける。

    左から新谷仁美選手 安藤友香選手 廣中璃梨佳選手

    国立競技場では、午後のセッションで女子10000メートルの決勝が行われる。新谷仁美、安藤友香、廣中璃梨佳の3人が、世界の強豪相手にどこまで食らいつくことができるのか。
    中でも新谷は、ことし国内では圧倒的な強さを見せ、世界を意識した練習を重ねてきた。アフリカ勢が強さを見せるこの種目で、どこまで上位に食い込んでいけるか、粘りの走りに期待したい。

    8月8日 男子マラソン

    左から中村匠吾選手 服部勇馬選手 大迫傑選手

    最後を締めくくるのが男子マラソンだ。
    日本からは中村匠吾、服部勇馬、大迫傑が出場する。
    中でも注目は、今大会かぎりでの現役引退を表明した大迫。これまでマラソン大国のケニアでトレーニングを積み、東京オリンピックにすべてをかけてきた。世界とのタイム差は大きくメダル獲得は容易ではないが、勝負に徹するオリンピックでは何が起こるかわからない。

    「このレースで終わりなんだと決めたいま、自分の持てるすべての力が出せる気がしている」と、状態のよさをうかがわせた大迫。
    低迷する日本マラソン界の復活が、この男の走りにかかっている。

    (スポーツニュース部 記者 小林達記)

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