卓球 日本代表 最強中国の壁を崩せるか

卓球がオリンピックの正式競技になった1988年ソウル大会以来、シングルスや団体などのすべての金メダルの数は「32」。このうち中国の金メダルは「28」にのぼります。特に2008年北京大会から前回2016年リオデジャネイロ大会までの3大会は、男女のシングルスと団体で中国がすべて金メダルを獲得。それが「卓球王国・中国」の絶対的強さです。
東京オリンピックの舞台で、日本代表の選手たちがその壁を崩し、頂点をつかみ取ることができるか注目されています。

目次

    シングルス 女子は伊藤と石川 メダルへの挑戦

    卓球のシングルスに出場できるのは、1つの国と地域から最大2人です。
    日本代表の女子は伊藤美誠選手と石川佳純選手です。

    もっともメダルに近いとみられているのが女子の伊藤選手です。
    前回のリオデジャネイロオリンピックは団体のみの出場だったため、シングルスは初めての出場。国際大会では、2019年以降、中国以外の海外選手に1回も負けていません。
    また、中国のトップ選手にも2018年以降、たびたび勝利するなど世界トップクラスの力をつけ、2021年7月13日時点の世界ランキングは2位となっています。

    その伊藤選手の前に立ちはだかるのが中国の2人。世界1位の陳夢選手と世界3位の孫穎莎選手です。

    陳選手は攻守両面に穴がなく、すべての技術でミスが少ない選手で、伊藤選手がこれまでに唯一、1回も勝ったことがない中国のトップ選手です。

    もう1人の孫選手は伊藤選手と同じ20歳。パワフルなショットを武器にした攻撃力が持ち味で、おととしから急激に力をつけて国際大会でも結果を残していて、伊藤選手とは何回も対戦し、互いにライバルと認め合う存在です。

    女子シングルスでは卓球がオリンピックの正式競技となった1988年ソウル大会以来中国選手が全大会で金メダルを獲得しています。
    唯一無二といえる変幻自在のプレースタイルで、中国から最大のライバルとして警戒される伊藤選手が厚い壁を打ち破って初の快挙を達成できるのか、期待が高まっています。

    また、28歳の石川選手は3大会連続のシングルス出場です。
    ロンドン大会では3位決定戦で敗れてメダルにあと一歩及ばず、前回のリオデジャネイロ大会は初対戦だった北朝鮮の選手に初戦で敗れました。
    3回目のオリンピックで個人種目では自身初となるメダル獲得を目指します。

    男子シングルス “攻め”の張本 “スピード”の丹羽

    男子の日本代表は張本智和選手と丹羽孝希選手です。
    張本選手はオリンピック初出場の18歳。2017年からシニアの大会に本格的に参戦し、高速バックハンドを武器に中国のトップ選手を続けて破るなど快進撃を見せて、世界のトップクラスへといっきに駆け上がりました。
    しかし、世界ランキングもトップファイブに入り、10代にして追われる立場になったことで、おととしと去年はランキングが下の相手に受け身になって取りこぼすなど思うような結果を残せない時期がありました。

    その反省を生かし、2021年3月に行われたオリンピック前、最後の国際大会では、中国選手が出場を見送る中、ランキングが下の選手に対しても本来の強気の攻めを貫いて優勝を果たし、精神面での成長を見せました。
    オリンピックでもランキングが下の選手と対戦する序盤の戦いで守りに入らず、持ち味の高速バックハンドなどで自分から積極的に攻撃することができればメダル獲得の可能性が高まります。

    また、丹羽選手は身長1メートル62センチと小柄なため、卓球台から下げられて力勝負の打ち合いになると分が悪くなります。
    卓球台の近くに立って速いタイミングで打ち返す持ち味のスピードを生かした攻撃ができれば上位進出が期待できます。

    団体 最初のダブルスで勢いに乗れるか

    団体はダブルス1試合、シングルス4試合を戦い先に3勝したチームが勝利します。東京オリンピックではこれまで3試合目だったダブルスが、1試合目に行われることになり、チームの流れを作る上で重要なカギを握ります。

    【女子】

    中国と日本の2強と見られていて、順調に勝ち進めば決勝で対戦します。日本のメンバーは伊藤美誠選手と石川佳純選手、それに平野美宇選手の3人です。日本は伊藤選手がシングルス2試合に出場することが見込まれ、1試合目のダブルスは石川選手と平野選手のペアが有力視されています。

    シングルスではしれつな代表争いを戦った石川選手と平野選手ですが、コンスタントに女子ダブルスで国際大会に出場し、連携を深めてきました。
    2人が重点的に強化してきたのがレシーブです。ダブルスはシングルスと違い、相手のサーブは卓球台の半分の面にしか来ません。
    コースが限定される分、卓球台のすみやネットすれすれの高さを狙うなど、相手に強く打たれないより攻撃的なレシーブが返せるように練習を積んできました。中国に対してもレシーブで主導権を握って有利な展開で攻めることができれば、勝機が見えてきます。

    【男子】

    男子は中国が頭1つ抜けていて、日本とドイツ、それに韓国などの2番手を争うチームの力がきっ抗しています。
    前回のリオデジャネイロ大会で銀メダルを獲得した日本は今回、張本智和選手と丹羽孝希選手、それにオリンピック4大会連続出場の水谷隼選手の3人が出場します。エースの張本選手がシングルス2試合に出場する可能性が高く、1試合目のダブルスはともに左利きの丹羽選手と水谷選手がペアを組むとみられています。

    利き手が同じ選手がペアを組む場合、立ち位置が重なってラリーなどの際にスムーズに入れ代わることが難しくなるため、ふだんとは違う動きが求められます。右利きの選手に対して人数が少ない左利きの選手どうしがあえてダブルスでペアを組むことは世界的にもほとんどありません。
    経験豊富な丹羽選手と水谷選手にとっても左利きの選手とダブルスを組んだ経験はほとんどなく、オリンピック本番でどんな戦いを見せるのか、注目です。

    新種目 混合ダブルス 初代チャンピオンは

    卓球の混合ダブルスは東京オリンピックの新種目で、卓球で最初にメダルが決まる種目です。1つの国や地域から出場できるのは1つのペアのみで、16のペアがトーナメント形式で争います。

    日本から出場するのは水谷隼選手と伊藤美誠選手のペア。2人はともに静岡県磐田市出身で同じ卓球クラブの出身です。

    水谷選手が32歳、伊藤選手が20歳と12歳離れていますが、伊藤選手が幼いころから交流があるため、水谷選手は「昔からずっと知っているので言えないことはない。何でも自分が思ったことを試合中に言うことができる」、伊藤選手も「水谷選手に意見を言える選手はほとんどいないと思うが、私は小さいころから性格などを知っているので言うことができる」と話すなど信頼関係も抜群です。
    2人はともに多彩なサーブを持ち、そのサーブで主導権を握ってポイントにつなげます。さらに、伊藤選手が変幻自在のプレーでチャンスを作り、水谷選手が確実に決める攻撃スタイルも持ち味です。

    最大のライバルは、中国の許※キン選手と劉詩※ブン選手のペア。2019年の世界選手権で金メダルを獲得しています。
    水谷選手と伊藤選手のペアは中国ペアの欠場による不戦勝を除いてこれまでに4回対戦し、1回も勝ったことがありません。しかし、フルゲームにもつれたり、中国ペアをあと一歩のところまで追い詰めたりする試合もありました。
    水谷選手と伊藤選手のペアが日本卓球界初となる金メダルを獲得できるのか、注目されます。
    (※キンは「日」に「斤」。※ブンは「雨」の下に「文」)

    (スポーツニュース部 記者 吉本有里)

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