マラソン日本代表の現在地 東京オリンピックテスト大会から

東京オリンピックの開幕まで3か月を切った5月5日。札幌市でマラソンのテスト大会となるハーフマラソンのレースが、本番のコースを使って行われました。東京が舞台となった代表選考レース「MGC(=マラソン・グランド・チャンピオンシップ)」から1年8か月、会場が札幌に変わり、大会も1年延期されるなかで迎えたレースには、男女合わせて4人の代表内定選手が出場。その走りや大会後のコメントから、選手たちの現在地が見えてきました。

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    本番のコースで

    東京オリンピックのマラソン、日本代表に内定しているのは、男女3人ずつ。男子は、2019年に東京で行われたMGCで優勝した中村匠吾選手と、2位の服部勇馬選手。そしてMGCは3位も、2020年の東京マラソンに出て当時の日本新記録2時間5分29秒で代表をたぐり寄せた大迫傑選手。女子は、MGCで優勝した前田穂南選手、2位の鈴木亜由子選手、そしてMGCは6位も名古屋での最終選考レースで日本歴代4位となる2時間20分29秒で優勝し最後の五輪切符を手にした一山麻緒選手の3人です。

    札幌で行われたテスト大会には、このうち男子の服部選手と、女子の3選手が出場しました。コースは本番と同じ大通公園西4丁目(北大通)をスタート。16kmすぎ、道幅が狭くなり曲がり角が連続する北海道大学の構内を走り、本番のマラソンコースの中間地点をフィニッシュとする21.0975kmで実施されました。

    服部勇馬「ターゲットタイム修正しなければ」

    男子の代表内定選手でただひとり参加した服部勇馬選手は、トップ選手としてもの足りない1km3分5秒というペースを設定してハーフマラソンに臨みました。

    その理由は、ずばり夏場に行われる本番のレースをイメージしたため。本番の優勝タイムを2時間8分から10分と想定し、そのペースを体にしみこませようと考えたのです。
    ところが、走り始めると平たんなコースが後押しし、涼しい表情のまま1km3分を切るペースで走り、そのままフィニッシュしました。

    服部選手

    「今回走ってみて、オリンピックでも3分5秒のペースより少し早くなるんじゃないかと、感じた。自分のターゲットとするタイムを修正しなければいけない」

    服部選手の持ち味は高い調整能力。この時期に本番のコースを走った経験を今後の調整にどう生かすか、まさに調整能力が問われることになりそうです。

    一山麻緒「本番で元気な走りを」

    女子では成長著しい一山選手が「調子が上がりきっていない」と言いながらも、自己ベストを更新する走りで優勝しました。

    前半は、すこしキレを欠いたような走りでしたが、後半になるにつれて力強さが加わり最後は松田瑞生選手を振り切ってトップでフィニッシュしました。フルマラソンでの2時間20分切りを見据えるその勢いを改めて示しました。

    一山麻緒

    「ほっとしています。苦しい場面もありましたが風も押してくれましたし、走りやすかったです。(東京オリンピックに向けては)まだ万全な状態まで持ってこれていないので、残り3か月で状態を少しずつ上げていって本番では皆さんの前で私らしい元気な走りをしたいです」

    鈴木亜由子「いい状態でスタートラインに」

    その一山選手に対し、日本陸連の関係者からも心配する声があがっていたのが、鈴木選手です。女子の代表選手で1人だけ「MGC」以降、マラソンにもハーフマラソンにも出場しておらず、3月に再び足を痛め、マラソンの出場を見送っていました。

    この日は、序盤から一山選手、松田選手と互角の走りで18キロ付近まで先頭集団で走りました。最後こそ「きつくなってしまった。今の地力がでたのかな」と一山選手らに後れをとって3位に終わりましたが、回復途上の復帰のレースとしては及第点の走りで、関係者をほっとさせました。

    鈴木亜由子

    「オリンピックの実際のコースを走ってみて、細かなアップダウンや、現状の力を確認できた。(本番のレースに向けては)しっかりとスピードと持久力を養えるように今できることに集中して、いい状態でスタートラインに立てるよう頑張りたい」

    今回のテスト大会、鈴木選手の闘争意欲に火を付けたのが補欠の松田選手です。
    レース前「代表の3人の選手のお尻に火を付けたい」と公言したとおり、積極的に先頭集団で鈴木選手らと競り合いました。松田選手は「レース後に鈴木選手から『お尻に火がついた。ありがとう』と言われたのはすごくうれしかったし、今回のレースに私が出てよかったなと心から思った」と笑顔を見せました。チームジャパンとしての一体感が見えた一場面でした。

    前田穂南「あと3か月で強化していく」

    一方、気になったのがMGCで優勝してオリンピックを決めた前田選手です。序盤から3人と離れ「本当によくない状態だった」と振り返りました。

    しかし、前田選手はMGCでも見せたように、暑さに強い選手と言われています。本番までは3か月あります。さらに札幌といえども、8月の暑さは過酷です。これからどこまで調子を上げられるかに期待がかかります。

    前田穂南

    「思った以上に曲がり角が多く、位置取りなどのポイントをつかみながら走りました。オリンピックでも重要になってくると思うので、いいレースになったと思います。(オリンピックに向けては)きょうのレースでイメージを作り、あと残り3か月で強化していきたい」

    “高速レース”の予感…

    今回のレースには出場しませんでしたが、男子の中村匠吾選手は大会の前日にコースの下見を行い、虎視たんたんと本番を見据えていたほか、大迫傑選手はケニアなど海外で世界を見据えたトレーニングを積んでいます。

    テスト大会を経て、高速レースの予感はさらに強くなりました。3か月後、世界の選手たちと日本代表が戦う姿は見るものの胸を熱くさせそうです。

    (スポーツニュース部 記者 本間由紀則)

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