田中希実が示した“新たな強さ” 陸上女子5000m

陸上長距離の日本選手権、女子5000メートルはスピードが持ち味の田中希実選手が、残り300メートルでスタミナが自慢の廣中璃梨佳選手をかわして初優勝。田中選手が新たな強さを示したレースとなりました。
(大阪局スポーツ 記者 今村亜由美)

レースは最初の1000メートルを、3分6秒とやや遅い入りでスタートしました。
本来、序盤からハイスピードで飛ばし、レースを引っ張る田中選手ですが、「ラスト勝負になると思っていたので、最後に勝ちきるというほうの自分らしさを優先させた」と先頭がしっかり見える集団の3番手の位置につけていました。
レース中盤、2500メートルを過ぎたあたりでライバルの廣中選手が飛び出しましたが、田中選手は慌てませんでした。田中選手は廣中選手の背後にぴったりとついていき、3000メートルからの1000メートルは2分56秒と2人でペースを上げました。
そして、残り300メートルとなったあたりで田中選手が廣中選手にならび、一気に抜き去りました。

スタミナが自慢の廣中選手に田中選手が終盤勝負で競り勝ったのです。
レースを「100点」と振り返った田中選手。ことし1500メートルと3000メートルで日本記録を塗り替えた新星が、日本選手権では1500メートルと5000メートルの二冠を果たしました。

一方、2位に終わった廣中選手はレース後、「希実先輩のほうが断然強いというのはわかっていた。今までやってきたことを自信に変えて、さらに強くなりたい」と話し強烈なライバル心を隠さず目に涙を浮かべました。
1学年違いで高校時代からしのぎを削ってきた2人。大会前、田中選手は「廣中選手の意志の強さは尊敬している。どっちが勝っても負けてもお互いのこれからの競技への取り組み方とかのターニングポイントになる」と話していました。
2人が競い合い、高め合った先に、この種目で世界に通用する日本代表が生まれるかもしれません。

田中希実とは

田中希実選手は兵庫県出身の21歳。レース序盤からトップスピードを維持する走りが持ち味です。
2020年7月に女子3000メートルで8分41秒35の、日本記録をマークすると8月には女子1500メートルでも日本記録を更新しました。
田中選手の両親は、ともに陸上選手で母親の千洋さんは北海道マラソンで2回の優勝を誇ります。幼いころから千洋さんの練習を見て育ってきた田中選手は、駅伝の強豪、兵庫の西脇工業高校に進学し高校総体や国体などで好成績を収め、高校駅伝や全国女子駅伝でも活躍しました。卒業後は同志社大学に進んで父親の健智さんがコーチを務めるクラブチームで練習を重ね、おととしフィンランドで開催された20歳以下の世界選手権では女子3000メートルで優勝しました。
また、2020年10月の日本選手権では1500メートルで、初優勝していました。

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