“頑張れば人生は変わる”
ことし3月に行われたワールドツアー、カタールオープンの準決勝。伊藤選手はリオデジャネイロオリンピックの金メダリストで中国の丁寧選手を相手に、序盤から得意のスマッシュを次々と決めていきました。極めつきは第3ゲーム。巧みなサーブで翻弄し、丁寧選手を全く寄せ付けませんでした。
スコアは11対0。
金メダリストに1ポイントも取らせず、このゲームを奪い、そのままストレート勝ちしました。
数々の国際大会で優勝し、卓球王国・中国の中でも絶対的な存在として君臨してきた丁寧選手がなすすべなく、首をかしげるしかなかった試合内容。さらに、会場で試合を見つめた中国卓球協会会長の怒りに満ちた表情。まさに“事件”でした。
試合後の伊藤選手は感慨深そうに話しました。
伊藤美誠選手
「オリンピックを何度も見ていて丁寧選手がすごく活躍していたのを小さい頃から知っていた。
それから10年もたたないうちに、頑張れば人生はこんなに変わるものなんだと思った」
“無敗の女”になるため
去年の夏以降、伊藤選手が東京オリンピックへの意気込みを聞かれるたびに口にしてきたことばがあります。それが「無敗の女」。
金メダル獲得を意味する、このことばを目標に掲げ人一倍、練習に励んできました。
ワールドツアーの会場では、誰よりも長く練習場にこもり、ボールを打ち続けてました。
食事や仮眠も含め、ほぼ1日を会場で過ごす毎日。
日ごろ、私たちに見せる明るい笑顔からは想像できない卓球だけを追い求める姿に強い覚悟を感じました。
完璧を求めて自分を追い込み過ぎた時もありましたが、試行錯誤を繰り返しながらミスをしない基本能力の底上げと、持ち味の相手の意表を突く独創的なプレースタイルに磨きをかけた伊藤選手。
4月の世界ランキングで2位となり、1991年に現在の制度になってから日本選手で男女を通じて最高の順位を記録しました。
“来年、確実に強くなっている”
ことしの夏にピークを合わせ「無敗の女」に着実に近づいていた矢先に決まった東京オリンピックの延期。少し気落ちしたかもしれない、と心配していましたが、伊藤選手はそんな予想を見事に裏切ってくれました。
4月上旬に行われたテレビ電話でのインタビューで、いつもと変わらない明るい笑顔で延期の受け止めをこう話しました。
伊藤美誠選手
「自分の中で1か月でも2か月でも成長できていると思うので、1年ということはどれだけ成長できるんだろうと想像できないぐらいすごく楽しみ。
成長できる1年間をもらった。来年、オリンピックに出た方が確実に強くなっていると思う」
ここまでの歩みに確かな手応えがあるからこその力強い言葉でした。
どこまでも前向きな伊藤選手。
1年延期をプラスに考えるこんな楽しみも見つけていました。
伊藤美誠選手
「オリンピックがことしだったら誕生日が来ていないので、19歳だった。
来年ならば誕生日が来ているので、20歳でオリンピックに挑める。
ことしだったら終わっても乾杯ができなかったので、来年、おめでとうの乾杯をしたい」