東京オリンピック・パラリンピック 招致からこれまで【経緯】

2020年の夏に予定されていた東京オリンピック・パラリンピックは新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、1年延期され2021年夏の開催となりました。2013年9月に2020年東京大会の招致が決まってから、これまでの動きをまとめました。

目次

    東京大会決定は2013年9月

    2020年東京大会の開催が決まったのは、2013年9月7日。アルゼンチンのブエノスアイレスで開かれたIOC総会でした。

    総会では、開催都市に立候補していたトルコのイスタンブール、東京、スペインのマドリードの3都市が順番にプレゼンテーションをしたあと、IOC委員による投票が行われました。
    1回目の投票ではイスタンブールとマドリードが同数で並び、再投票の結果、マドリードが落選。最終投票は東京とイスタンブールを候補に行われ、その結果、東京が過半数を集めて開催都市に選ばれました。

    東京は、財政基盤が安定していて世界で最も安全な都市であることをアピール。最終プレゼンテーションでは、懸念が広がっていた福島第一原子力発電所の汚染水の問題について、安倍総理大臣が「影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメール範囲内の中で、完全にブロックされている」と説明し、対策について責任を持つと表明しました。

    国立競技場をめぐって

    東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる新しい国立競技場。整備計画はJSC=日本スポーツ振興センターが事業主体となって行われました。
    2011年11月。新しい国立競技場のデザイン案にイギリスに事務所を置くイラク人の女性建築家、ザハ・ハディドさんのデザインが選ばれました。

    入札の不調などで遅れた解体工事は、2015年3月から本格化しましたが、この年の7月、安倍総理大臣は、建設費が膨らんだことに対する批判が強まっていることを踏まえ「計画を白紙に戻す」と述べ、計画をゼロベースで見直す方針を表明しました。新たな整備計画の取りまとめが進められ、この年の12月、建築家の隈研吾さんと大成建設、それに梓設計で作るグループが設計と施工を行うことが決まりました。

    本体工事は、2016年12月にスタート。最も多い時期で1日当たり2800人が作業にあたり整備を進めました。この中では働いていた男性が自殺し、極度の残業での過労が原因だったとして労災に認定され、現場に医師を配置したり、作業員のストレスチェックを促したりして健康管理の徹底がはかられることになりました。

    2019年11月30日、新しい国立競技場が完成。外周に47都道府県の木材を作った「軒庇(のきびさし)」を取り付けるなど、伝統的な日本建築の技法を取り入れたデザインが特徴で、神宮外苑の緑との調和を意識した「杜のスタジアム」と紹介されています。

    工事費は、政府が決めた上限の範囲内に収まる1529億円となり、設計などを含めた整備費でも上限の1590億円より少ない1569億円となりました。

    エンブレムをめぐって

    延期前の日程で東京オリンピックの開幕まで5年となった2015年7月24日。東京都庁前の広場で、華々しく大会エンブレムが発表されました。
    エンブレムは、大会のシンボルとして競技会場や開催都市の街中、記念グッズなどさまざまな場面で使用される、いわば大会の“顔”です。
    デザインしたのはアートディレクターの佐野研二郎氏。オリンピックのエンブレムは「TOKYO」など3つのことばの頭文字「T」をイメージしたデザイン。パラリンピックのエンブレムは、平等を意味する「=(イコール)」をイメージしたものでした。

    このエンブレムについて、組織委員会は似たようなデザインがすでに存在しないかどうかIOCと情報交換したうえで、国際商標登録を申請していました。
    しかし、発表の直後にベルギーのグラフィックデザイナーが、以前作ったベルギーの劇場のロゴマークに極めて似ていると主張。その後IOCに対してエンブレムの使用差し止めを求め提訴しました。またスペインのデザイナー事務所が東日本大震災からの復興のため作ったデザインと配色が同じだったことをもわかりました。
    佐野氏はエンブレムについては「模倣していない」と盗用を否定しましたが、審査の応募資料として提出した空港や街中での使用例の画像について、インターネット上の画像を無断で転用していたことを認めました。
    こうしたことから組織委員会は9月1日、「一般国民の理解は得られない」としてエンブレムを白紙撤回しました。

    改めてエンブレムが決定したのは2016年4月。市松模様と藍色が特徴の東京都在住のアーティスト、野老朝雄さんのデザインが選ばれました。前例のない白紙撤回から7か月余り、前のエンブレムの発表から9か月も遅れての決定でした。

    招致めぐる贈賄疑惑

    東京大会の招致をめぐる贈賄疑惑は、2016年1月、WADA=世界アンチドーピング機構の第三者委員会が、ロシアの一連の組織的なドーピングを調査していた中で持ち上がりました。
    指摘を受けてフランスの検察当局が捜査を開始。日本の銀行口座から国際陸連のラミン・ディアク前会長の息子に関係するとみられるシンガポールの会社に東京大会の招致を名目に、2回に分けて合わせておよそ2憶2000万円が振り込まれたとして贈賄の疑いで捜査していると公表しました。

    招致委員会の理事長だったJOCの竹田恒和前会長は、振り込みを認めたうえで、「招致計画づくり、ロビー活動など多岐にわたる招致活動のコンサルタント料で、正式な業務契約に基づく対価として行ったものだ。なんら疑惑を持たれるような支払いではない」などと潔白を主張していました。
    2016年9月、JOCの調査チームが調査結果を公表します。当時の招致委員会が行った金銭の支払いに違法性はなかったと結論づけました。
    しかし2018年12月になって、フランスの裁判所が竹田前会長について、裁判を開くかどうかどうかを判断するための手続き「予審手続き」を開始し、予審判事がフランスで竹田会長本人を聴取したことが明らかになりました。

    竹田前会長は、2019年1月に会見を開き「報告書では、コンサルタント業務に対する適切な対価だったと結論づけている。私が、シンガポールの会社と、国際陸連の前会長とその息子がいかなる関係だったか知らなかったことも確認している。この会社との契約の締結が日本の法律において違法性はないと結論づけた」と改めて潔白を主張しました。
    しかし、この会見で竹田前会長は、記者からの質問には応じず、会見を7分余りで打ち切って退席したことに批判が高まりました。
    またIOCが、東京大会へのダメージなど強い懸念を関係者に伝えたこともわかりました。そして3月、竹田前会長は「今回世間を騒がせたことを大変心苦しく思っている」として会長を退任することを表明しました。

    マラソン・競歩の札幌移転

    2019年10月16日、突然の発表でした。
    IOCがマラソンと競歩の会場を札幌に変更ことを検討していることを明らかにしたのです。

    理由は、東京の“暑さ”。バッハ会長は「アスリートファースト」を最優先に考えて検討を始めたと説明しましたが、日本の関係者からは「なぜ今になって」という戸惑いの声。東京都の小池知事も「かなり唐突な話だ」と驚きを隠しませんでした。 それもそのはず、東京の暑さは、招致が決まった2013年から懸念されていました。開幕まで10か月というタイミングで会場変更の案が浮上した背景にあったのは、直前に中東のカタールで開かれた陸上の世界選手権でした。

    気温が30度を超え湿度も70%を上回る厳しいコンディションの中でマラソンや競歩が行われ、途中棄権する選手が続出。女子マラソンでは出場選手の4割が棄権し、選手やメディアから批判の声があがったのです。
    “暑さ”の怖さを目の当たりにしたことで、会場の変更に大きくかじを切ったIOC。突然の発表からわずか半月余りの11月1日。札幌への会場変更が決定します。小池知事は「あえて申し上げるならば、合意なき決定だ」と強調しました。

    IOCのいわばトップダウンの形で決まった会場変更。すでにマラソンの日本代表に内定していた選手からは「大勢の観客が迎えてくれる国立競技場にゴールしたかった」という声も聞かれ、「アスリートファーストって何」という疑問が広がりました。

    オリンピック聖火リレーをめぐって

    2020年3月12日、ギリシャでオリンピック聖火の採火式が行われました。新型コロナウイルスの感染が広がる中、式典は無観客で行われましたが、無事、ギリシャ国内の聖火リレースタート。第2走者は、アテネオリンピック女子マラソンの金メダリスト、野口みずきさんが務めました。
    しかし聖火リレーの2日目、セレモニーの会場に多くの観客が集まったことで、それ以降のリレーは中止になってしまいます。19日、首都アテネで行われた日本への聖火の引継式には、組織員会の森会長や聖火ランナーを務める予定だった柔道の野村忠宏さんやレスリングの吉田沙保里さんの出席が見送られたほか、日本の文化などを紹介するパフォーマンスも中止されました。

    それでも聖火は、3月20日に宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地に無事到着しました。26日からの聖火リレースタートを前に、宮城・岩手・福島の3県で「復興の火」として展示されました。
    しかしスタート2日前の24日、安倍総理大臣とIOCのバッハ会長が東京大会を1年程度延期することで合意。これによりオリンピックの聖火リレーは中止が決まりました。

    組織委員会は全国各地を走る予定だったおよそ1万人の聖火ランナーと121日間で全国をめぐるルートは、新たに行われる聖火リレーでも基本的に維持することを明言。聖火は、スタート地点に予定されていた福島県のJヴィレッジに1か月程度展示されたあと、東京都内に保管されることが検討されています。。今後は新しい大会日程に合わせた新たな聖火リレーの日程を決めることになりました。

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