トップページネット NEWS UPトラブル急増 仮想通貨の投資ビジネスを追う

ニュース詳細

News Up トラブル急増 仮想通貨の投資ビジネスを追う

3月8日 16時33分

ニュース画像

NHKの情報窓口「ニュースポスト」に、首都圏に住む40代の女性から、「母親が『絶対損はない』などと言われ、高額な仮想通貨を購入したのですが、信用できるか不安です」という内容の投稿が寄せられました。
仮想通貨の利用者を保護する新たな法律が来年度に施行される見通しですが、それを前に国民生活センターには仮想通貨に関するトラブルの相談が増えています。仮想通貨の投資ビジネスとはどのようなものか、取材を始めました。

「母親が仮想通貨に投資を…」

ニュースポストに投稿した女性に記者が詳しく話を聞いたところ、女性の60代の母親はことし1月、ある仮想通貨のセミナーに参加したということです。そこでは「フィリピンの開発に投資する新しい仮想通貨」について説明され、「絶対に損することはない」とまで言われ、女性の母親は200万円分の仮想通貨を購入したということでした。

ニュース画像

仮想通貨は、ネットを通じて取り引きできる電子的な通貨のことで、「ビットコイン」が有名ですが、実は世界には少なくとも700種類もの仮想通貨が流通していると言われています。仮想通貨の中には現金に交換できるものもあり、交換する業者はことし4月から金融庁に登録が必要になりますが、現在は何も規制がない状態です。
女性の母親は、「領収書も発行されず、来年の夏までは一般公開されず取引きや現金との交換もできないと説明された」ということで、女性は不信感を持ったといいます。
本当にそうなのか、この仮想通貨のWEBサイトを記者が確認したところ、「両替業務なので領収書は発行されない」「最初の年は20%の配当がある」などと書かれ、仮想通貨を購入した人には「販売代理店」の権利が与えられ、知り合いに紹介して売ることで手数料が入る、などと書かれていました。
女性は「不審な点が多くだまされていないか不安だが、まだ市場に公開されていないということで、確かめようがない」と悩んでいます。

氾濫する仮想通貨への投資情報

ニュース画像

ソーシャルメディアで「仮想通貨」「暗号通貨」などのワードで検索すると、購入を勧める内容の数多くの投稿が見つかります。
例えば、「話題騒然の仮想通貨○○、今後高騰する可能性大!興味がある方はメッセージをください」「ついに暗号通貨○○の情報が公開。リリースまでに投資しなければ間に合わない、今がチャンス」など、その多くが値上がりをうたい、投資目的での購入を呼びかけていました。
金融商品のような説明ですが、仮想通貨は金融商品ではないため、金融商品取引法の規制は受けません。「絶対にもうかる」などの大胆な勧誘も行われています。

増加する仮想通貨トラブル

ニュース画像

国民生活センターによりますと、仮想通貨に関するトラブルの相談は、おととし3月までの1年間で194件でしたが、昨年度は440件、今年度は2月23日までの時点ですでに614件と急増しています。
このうち昨年度まではお年寄りを狙った「仮想通貨の訪問販売」のトラブルが多発していましたが、今増えているのは、知り合いから仮想通貨の購入を勧められたり、ソーシャルメディアやセミナーで勧誘されたりするケースだということです。
例えば去年12月に相談があったケースでは、40代の女性が知人に誘われてセミナーに行き、「必ず値上がりする」と言われて仮想通貨を購入しましたが、事前に言われていたほど値上がりせず、普通のお金に換金しようとしても、両替に応じてくれる相手が見つからず、換金できないというものでした。
ほかにもことし1月、50代の男性が、インターネットの動画で「もうかる」という宣伝を見て10万円余りの仮想通貨を購入したものの、「購入後に業者と連絡を取ろうとしたら電話番号が記載されておらず困っている」という相談もありました。
国民生活センターでは、仮想通貨法の施行までの間、さらにトラブルが増えるのではないかと懸念しています。

怪しいビジネスをどう見分けるか

仮想通貨の普及活動を行っている、日本デジタルマネー協会理事の大石哲之さんに、注意すべき「仮想通貨ビジネス」の特徴を聞きました。
1つは、セミナーや、人づての紹介、代理店など、特定のルートでしか購入できない形態です。大石さんによると、「本来、仮想通貨は世界中の誰でも直接買えるものなので、人の紹介や、代理店を作る必要がありません」とのことです。
2つめは、最低購入価格が設定されているケースです。例えば「10万円からしか売らない」などというもので、大石さんは「仮想通貨は少ない金額から取引できる性質のものなのでおかしい」と指摘します。

「知識のある人間から見るとあきらかに詐欺のような仮想通貨の宣伝が、去年の春から増加しています。価値が出るか不透明なものが売れる、言ってみれば『だましやすい商品』として広まっているのでは。仮想通貨は本来は上場企業の株のように取引所で誰でも自由に売り買いできるものです。特に、『絶対もうかる』といった宣伝文句のものは避けたほうがよいでしょう」(大石哲之さん)

仮想通貨の投資ビジネスについては今後も取材を進めていきます。投資目的で仮想通貨を購入したことがある方や、仮想通貨ビジネスに関する情報をお持ちの方など、NHKの「ニュースポスト」からお寄せください。

→ ネット NEWS UPトップへ