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News Up 「お城ブーム」に意外な背景

3月7日 19時42分

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「去年の大河ドラマの影響かどうか、全国的にお城の入場者数が増えているらしい」とデスクに言われた記者。「だいぶ前から『お城ブーム』はあったのでは?」と懐疑的になりつつ調べたところ、「お城SNS」や「城アプリ」など、ソーシャル時代ならではの要因が分かってきました。
一方で関係者からはブームに当惑の声も上がっています。

城の入場者数「増えている」

まずは全国49のお城の管理団体が加盟する「全国城郭管理者協議会」に問い合わせたところ、姫路城や名古屋城など加盟するお城の総入場者数は平成27年度で約2200万人でした。この5年で約600万人増加、去年と比べても約300万人増えています。
増加の要因は何か、「日本100名城」を選定している日本城郭協会を訪ねました。事務局長の加藤良明さんによりますと、今は「第2次お城ブーム」で、平成18年に「日本100名城」を発表したあと全国でお城巡りがブームになり、それまであまり知られていなかった城にも注目が集まったといいます。

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例えば「天空の城」として有名な兵庫県朝来市の竹田城です。もともと国の史跡に指定されていましたが、平成18年度の来場者数は2万人で、当時は入場者数を駐車場にある公衆トイレの水量から推計していたということです。平成18年に「日本100名城」に選ばれたことをきっかけに、雲海に浮かぶ城跡の幻想的な写真がネットで拡散、映画やCMでの紹介も相次ぎました。

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入場者は、平成24年度には23万人、25年度、26年度には連続で50万人を突破しました。現在は有料になり、入場者数も実数で管理。市の部署として「竹田城課」も設置しました。まさにお城版「シンデレラストーリー」です。

要因に城アプリやSNSも

SNSに気に入った城の写真を投稿するなど、城巡りの新たな楽しみ方が次々に登場したことも、来場者数の増加につながったと見られています。
例えばスマートフォンの「発見!ニッポン城めぐり」というアプリは、位置情報を基に近くにある城を攻略するゲームで、スタンプラリーのような遊び方ができます。

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最新のVRやARなどの仮想現実の技術を使ったアプリも登場しており、「AR滝山城跡」は、約450年前に今の八王子市にあった滝山城の歴史について、体感しながら学べるアプリです。去年4月に八王子市観光課が制作したもので、観光課の担当者は「滝山城は城郭が残っておらず観光資源として厳しかった。実際に再建するには莫大なお金がかかるが、ARの中でなら再建できるのではないかと考えた」と話していました。

ブームには困った面も

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日本城郭協会の加藤さんは、ほかにも要因として、戦国時代に建てられた城の「築城400年ラッシュ」でニュースで紹介される例が増えたこと、文化庁の方針が、文化財の保存から活用へと転換してきたことなどを挙げました。さらにそれぞれの城が仕掛けた人気ゲームとのコラボレーションや、プロジェクションマッピングなどのイベントが功を奏し、より幅広い層を取り込んだ第2次お城ブームにつながっていると見ています。

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一方で加藤さんは「ブームは困るんです」とも語ります。竹田城では、急増した観光客に対応しきれず、史跡の損傷や車の渋滞が問題になったこともありました。また全国のお城にスタンプラリー目的の客が増えて、閉館10分前に訪れたり、大型バスで来て30分しか滞在せず、ガイドがスタンプラリーをまとめて押して帰ったりと、お城を十分楽しまない人が多いと、城側の苦情が増えているそうです。協会にもたびたびスタンプラリーの最短記録について問い合わせがあるそうですが、加藤さんは答えないことにしているとのこと。
取材の最後に、加藤さんにお勧めの城を聞くと、「すべてのお城にそれぞれ魅力があるんです。ぜひ実際に足を運び、じっくりと城や歴史の魅力に触れてほしい」と話していました。

ことし4月6日(城の日)には、「続日本100名城」が発表される予定です。今回はどんな知られざる名城に光が当たるのか。当初、お城ブームには懐疑的でしたが、この週末は、お目当ての城に行ってみようと思います。

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