トップページネット NEWS UP町からガソリンスタンドが消えた そのとき住民は

ニュース詳細

News Up 町からガソリンスタンドが消えた そのとき住民は

3月6日 19時50分

ニュース画像

「行きつけのガソリンスタンドがある日突然閉鎖。まだプリペイドカードが残っていたのに」「ガソリンスタンドが閉店したので灯油が買えない、寒い」こんな投稿をソーシャルメディアなどで時折目にします。ガソリン需要の低下や、後継者不足、そして多額の設備更新費用などで全国的にガソリンスタンドの閉鎖に歯止めがかからない状況に、地域の住民が立ち上がりました。

「ガソリンスタンド40年問題」とは?

資源エネルギー庁によりますと、全国のガソリンスタンドの数は去年の3月末の時点で3万2000か所余り。ピーク時(平成6年度末)に比べてほぼ半減しています。
人口減少や自動車の燃費向上などで、もともとガソリンの販売量の減少が続いていることが大きな要因ですが、それに加えてガソリンスタンドの「40年問題」があるといいます。6年前に消防法が改正されて、設置から40年を超えるタンクは改修工事が義務づけられ、もともと需要の拡大が見込めない地方では改修費用が負担となり、そこに後継者不足などもあって廃業が増えるきっかけになっています。

増加する「SS過疎地」

ニュース画像

資源エネルギー庁の調査で、この10年間のガソリンスタンドの「減少率」を見ると、東京が37.9%、大阪が37.1%など、都市部のほうが全国平均(29.6%)より高くなっています。都市部では地価が高いこともあってコンビニやショッピングセンターなど、ほかの業種に「転用」しやすいためと見られます。
しかし、スタンド不足が深刻なのはやはり地方で、ガソリンスタンドが3か所以下の「SS過疎地」とされる市区町村は全国で288か所あり、その多くは、地方の小規模な自治体です。(去年3月末時点・資源エネルギー庁調べ)

要望受け 町がスタンド設置

ニュース画像

「SS過疎地」を打破しようと、各地で取り組みが始まっています。和歌山県すさみ町の江住地区では先月、町が設立したガソリンスタンドがオープンしました。スタンドが地区から13キロも離れていて、住民は車やバイク、農作業の機械など、暮らしのさまざまな場面で不自由を強いられていたため、住民からの強い要望を受けて、町は「地域エネルギー供給拠点整備補助事業」という国の補助を利用して地区にスタンドを建設しました。新たなスタンドは、災害時に給油を行う防災拠点としても期待されているということです。

行政に頼らず みずからの手で

ニュース画像

地域の住民たちが運営を始めたガソリンスタンドもあります。岡山県と鳥取県の境にある旧阿波村は、平成17年に合併して津山市の一部になりましたが、その後農協が撤退、小学校は閉校、ガソリンスタンドも閉鎖と、合併を期に地域の衰退が加速していきました。なんとかしようと地元の人たちは「あば村運営協議会」という自治の仕組みを作って活動を開始しました。協議会にはかつての役場のように「総務部」や「環境福祉部」など5つの部があり、NPOや企業も協力しています。

ニュース画像

このうち「エネルギー事業部」では、地域住民から220万円の資金を集めて「合同会社あば村」を設立し、閉鎖したガソリンスタンドを復活させて運営しています。地域の住民が協力しながら給油作業や冬場の灯油の配達などを行っています。

厳しい状況は続く

「合同会社あば村」の田辺高士執行役員は、「利用している住民からはありがたいという声をもらっているが、正直、経営的には厳しい。なんとか状況を改善しつつ、サービスを続けていきたい」と話しています。

資源エネルギー庁石油流通課でも、「もともと採算がとれないからガソリンスタンドが閉鎖されたという場所が多く、厳しい状況は理解している」として、災害対策の視点から、ガソリンスタンドの自家発電の設備に補助金を出す事業を始めるなど、「住民拠点SS」を平成31年度までに8000か所に増やしたい考えです。
地域のコミュニティーに欠かせない存在にもなっているガソリンスタンドを、限られた財源の中でどのように支え、続けていくか。ガソリンスタンド単独ではなく、防災や町作りの拠点などほかの事業と連動した運営も視野に入れながら考えていく必要があります。

→ ネット NEWS UPトップへ