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News Up 情報公開の流れに逆行?経産省の“施錠”

2月28日 22時47分

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「すべての執務室にカギをかけます」ー。
経済産業省が2月27日、このような対応を始めました。情報管理を強化するためという説明ですが、経済産業省を取材する記者からは、取材活動の制限につながり、情報公開の流れに逆行するのではないかと懸念が出ています。
何が問題となっているのでしょうか。

情報管理を強化するため

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『本年2月27日より、執務室扉の開閉については職員によるセキュリティー解除を行うことを原則とする運用を開始します』ー。

2月20日、経済産業省が『今後の庁舎管理について』という表題のリリースを突然発表しました。
一見、何を始めようとしているのかが読み取りにくいこのお知らせ。
要するに、夜間のみならず日中も執務室の入り口は施錠するという内容です。
施錠は一部ではなく“すべて”の執務室が対象となっています。

施錠だけではありません。
経済産業省の担当者が記者と面談する場合は別の場所にある応接スペースで会うこと、また、取材内容を記録する別の担当者も同席させたうえで内容は広報室に報告するとしています。

理由について、経済産業省は「外交や企業活動に関する機微な情報を多く持っているため、情報管理を強化するものだ」と説明してます。つまり、多くの部署が外交上の機密情報や企業の再編・統合に関する内部情報などを多く抱えているので、取材者や企業の関係者が自由に執務室に出はいりしている現状は、情報漏えいを招きかねず、見直す必要があったというのです。

こうした対応に、経済産業省を日頃、取材している報道各社からは、驚きの声が上がるとともに、取材活動の制限につながり、情報公開の流れに逆行するのではないかと懸念、ルールの撤回を申し入れたのです。

情報管理を徹底すること、それ自体は中央官庁として当然といえば当然です。ではなぜ報道各社が驚いたのか?それには経済産業省の特徴を知る必要があります。

経産省の“社風”急変に驚き

経済産業省は、かつては通商産業省、略して通産省と呼ばれ、戦後復興期に数々の企業を指導することで産業政策を立案し、高度経済成長を支えた官庁として、世界に名をとどろかせてきました。

日本が経済発展を遂げたあと、こうした通産省的な役割は徐々に小さくなっていきました。

経済産業省に名前が変わってから、官庁の存在意義を積極的な提案力、情報発信力に見いだしていったのです。

『未来の自動車戦略』『クールジャパン』『ヘルスケア産業の発展』ー。ほかの官庁が手を出さないような分野にも積極的に関与し、情報発信をどんどんしていく。中央官庁の中でも、オープンな雰囲気として知られています。

経済同友会の小林代表幹事は2月28日の記者会見で、「私の印象では、経済産業省はこれまで意図的に情報をリークすることで国民に知らしめるという技を使っていたような面もある」と、ユニークな言い回しで経済産業省の特徴を表現しています。

こうした特徴とは180度違う今回の措置に報道各社は驚いたわけです。

何が問題?

これまで同様取材ができるのであれば、さほど問題はないように思われるかもしれません。

しかし、執務室の扉が閉ざされると、担当者は、政府にとって都合のいい案件は応じ、政府にとって都合が悪い案件は応じないという対応を取ることが可能になります。応接スペースの不足を理由にアクセスが難しくなるかもしれません。
取材内容を記録する別の担当者が同席するとなれば、本音での議論もできなくなるかもしれません。

こうしたことが取材活動の制限につながり、ひいては国民の知る権利を奪うことにつながりはしないか。そんなことを記者たちは心配し始めたというわけです。

施錠、どうして今なのか?

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実は、経済産業省の中では、各執務室を電子的に施錠できるシステムはすでに導入されていて、日中は作動していないだけでした。

これが年始や年度初めなどの切りのいい節目ではなく、2月27日から作動するのはどうも唐突だという印象はぬぐえません。

28日に行われた世耕経済産業大臣の記者会見では、出席していた記者から「2月10日に行われた安倍総理大臣とトランプ大統領の初めての日米首脳会談に関する一連の事前報道が関係しているのではないか」という質問が出ましたが、世耕大臣は「全く関係がない。個別の案件とは関係がない」と否定しました。

報道各社は、世耕大臣にも執務室の施錠を撤回するよう申し入れましたが、世耕大臣は「信頼の高い行政を進めるために庁舎管理はしっかりやっていきたい」と述べ、施錠は続ける考えを強調しました。

取材制限にならぬよう

アメリカでは、トランプ大統領がメディアと全面対決し、CNNテレビやニューヨーク・タイムズなど、自分に厳しい論調のメディアを会見から閉め出すという行動に出ています。

経済産業省の意図が庁舎のセキュリティー強化であるとしても、取材の制限や間接的なけん制につながらないかどうか、厳しく見ていく必要がありそうです。

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