海自の手当不正受給で元隊員逮捕問題 木原防衛相が陳謝

木原防衛大臣は、防衛省が先週公表した海上自衛隊での潜水手当の不正受給をめぐり、元隊員が逮捕されていたことなどを18日まで明らかにしていなかったことについて、適切な発信ができていなかったと陳謝しました。

防衛省は先週、海上自衛隊の潜水手当をめぐって、隊員62人が訓練の実績を偽るなどして、およそ4300万円を不正に受給していたことを公表しましたが、18日になって、すでに退職している元隊員なども含めると不正受給の額はさらに1000万円余り増える可能性があることを明らかにしました。

また元隊員4人が去年11月に警務隊に逮捕され、その後、いずれも起訴猶予となっていたことも明らかにしました。

これについて木原防衛大臣は、19日の閣議の後の記者会見で「適切な判断が行われていなかったと考えており、その結果として国民の皆様に適切な情報発信ができていなかったことを深くおわび申し上げる」と陳謝しました。

また逮捕の事実について報告を受けたのは18日夜だったことを明らかにしたうえで「事実関係や経緯をしっかりと把握し、今後の公表のあり方について速やかに報告するよう事務次官に指示した」と述べました。

そして「大臣にしっかりと報告をすることが文民統制の要諦だ。その要諦が守られていないおそれがあることはゆゆしきことであり、しっかりと是正をすることも私の責任だと思う」と述べました。

また自身の責任については「再発防止策と隊員1人1人に意識の改革を行ってもらう。それを私自身がしっかりと伝えていくのが一番よい選択だと考えている。防衛省・自衛隊にとって何がベストなのかを私自身考えて、これからも行動していく」と述べました。

林官房長官「内容公表すべきだった」

林官房長官は閣議の後の記者会見で「事案の重大性に鑑みれば防衛省で把握できた内容はできるかぎり詳しく公表すべきだった。担当部局が適切な判断を行わなかったためだと報告を受けているが、今後、防衛大臣のリーダーシップのもと、適切な情報発信に努めるべきだ」と述べました。

また木原大臣の進退を問われ「現在の安全保障環境は大変厳しく、わが国の防衛に一分の隙も許されない状況にある。木原大臣には防衛大臣の責任として強力なリーダーシップを発揮して防衛省・自衛隊の組織そのものを早急に立て直し、国民からの信頼回復に全力であたってもらいたい」と述べました。

海自 海上幕僚長が交代 齋藤聡海将が就任

海上自衛隊で国の安全保障にかかわる「特定秘密」の情報の取り扱いをめぐる違反が確認されたことなどを受け、19日、トップの海上幕僚長が交代しました。

海上自衛隊では「特定秘密」の情報や潜水手当の受給などで違反や不正が多数発覚し、今月12日、木原防衛大臣は新たな体制で立て直す必要があるとして、トップの海上幕僚長を交代させることを明らかにしていました。

これを受け、19日、酒井良海上幕僚長が退任し、新たに齋藤聡海将が就任しました。

東京 市谷にある防衛省では業務の引き継ぎが行われ、酒井前海上幕僚長が「刷新していただきたい。今後の海上自衛隊をよろしくお願いします」などと述べました。

これに対し、齋藤海上幕僚長は「安全保障環境を考えると、立ち止まっていることはできない。不正についてしっかりと対応できるように取り組んでいきたい」と応じていました。

また、先週公表された潜水手当の不正受給をめぐり、防衛省は19日になって不正の額が1000万円あまり増えて総額でおよそ5300万円にのぼる可能性があると明らかにしています。

高市経済安保相「防衛省・自衛隊は猛省を」

自衛隊などで国の安全保障に関わる「特定秘密」情報の取り扱いの違反が60件近く確認されたことについて、高市経済安全保障担当大臣は記者会見で「わが国の情報保全体制に対する国民や諸外国からの信頼を損なう深刻な事態で、防衛省・自衛隊には猛省を求めたい。再発防止策については防衛省をフォローしながら対応していきたい」と述べました。

立民 泉代表「指導力が足りなければ大臣辞任も」

立憲民主党の泉代表は記者会見で「防衛省にも、潜水手当の問題で逮捕者が出ていたことを国民に説明するのが遅れたという問題意識があるので、公開の基準や指針をしっかりつくってほしい」と指摘しました。

そのうえで「不祥事を全部出し切っているかどうかで木原防衛大臣の出処進退は決まってくる。われわれは厳しい目で見ており、指導力が足りないのであれば、大臣の辞任もありえる」と述べました。

公明 山口代表「木原大臣は責任ある立場で再発防止策を」

公明党の山口代表は記者団に対し「新たにさまざまな課題が判明していることは誠に遺憾だ。自衛隊は大きな組織なので全体に対して綱紀の緩みを引き締める対応も重要だ」と述べました。

一方、記者団から木原防衛大臣の進退について問われ「今は責任ある立場で実態を解明し、再発防止策を確立することに全力を尽くすべきだ。国民に説明するという責任感で厳しく対応してほしい」と述べました。