南米アルゼンチンでワカメが増殖!?牛肉大好き国民どうする?
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世界有数の牛肉消費量を誇る南米・アルゼンチン。
その沿岸でなぜか、日本の食卓でおなじみの海藻「ワカメ」が増え続けています。
牛肉が大好きな市民からは「海の雑草」とも呼ばれ、疎まれる存在になっています。
でも、最近は少し事情も変わってきているという話も。現地に行って調べてきました。
(サンパウロ支局 木村隆介)
その沿岸でなぜか、日本の食卓でおなじみの海藻「ワカメ」が増え続けています。
牛肉が大好きな市民からは「海の雑草」とも呼ばれ、疎まれる存在になっています。
でも、最近は少し事情も変わってきているという話も。現地に行って調べてきました。
(サンパウロ支局 木村隆介)
パタゴニアでワカメが大量発生
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4月、私たちが向かったのは、「風と氷の大地」とも呼ばれる南米大陸南部のパタゴニア地方。
このうちアルゼンチン側のパタゴニアでは、太平洋側から吹く湿気を帯びた西風がアンデス山脈を越える際に水分が失われるため、年間を通じて乾いた風が吹きつけます。
このうちアルゼンチン側のパタゴニアでは、太平洋側から吹く湿気を帯びた西風がアンデス山脈を越える際に水分が失われるため、年間を通じて乾いた風が吹きつけます。
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訪れたのは大西洋に面する海辺の小さな町・カマロネス。南半球のため季節は日本と逆で、現地は秋でした。気温は日中でも10度前後しかありません。
人気があまりない海沿いを歩いていくと、いたるところで岩場が緑色に変色しているのに気がつきました。近づいて見てみると、見慣れた海藻がゆらゆら。そう、ワカメです。
日本からみて地球の裏側にあるパタゴニア。その海岸で、まさか味噌汁の具としてもおなじみのワカメを目にするとは…。地元の人に聞いてみると、この町ではほぼ1年を通じて大きく育ったワカメを見ることができるといいます。
人気があまりない海沿いを歩いていくと、いたるところで岩場が緑色に変色しているのに気がつきました。近づいて見てみると、見慣れた海藻がゆらゆら。そう、ワカメです。
日本からみて地球の裏側にあるパタゴニア。その海岸で、まさか味噌汁の具としてもおなじみのワカメを目にするとは…。地元の人に聞いてみると、この町ではほぼ1年を通じて大きく育ったワカメを見ることができるといいます。
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以前は生息せず、いつから?なぜ?
もともとワカメは日本や朝鮮半島の一部で生息している海藻です。
パタゴニアで初めてワカメが確認されたのは1992年。タンカーが運ぶ海水にワカメの胞子が入り込み、はるか南米まで運ばれたと考えられています。
パタゴニアで初めてワカメが確認されたのは1992年。タンカーが運ぶ海水にワカメの胞子が入り込み、はるか南米まで運ばれたと考えられています。
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その繁殖力は強く、いまではアルゼンチンの大西洋沿岸1000キロにわたって生息しているとみられています。
牛肉消費国では“海の雑草”扱い…
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ワカメは生育が早く、長さ1メートルから最大2メートルまで成長するため、海中で周囲の日光を遮ってしまい、沿岸の在来種の海藻が激減する影響が出ています。さらに、それらの在来種の海藻をエサにする貝や魚まで減少してしまい、まさに“やっかいもの”となっていたのです。
栄養価も高いし、ヘルシーだし、食べればいいのではと思ってしまいますが、ワカメを食用として活用するのは日本や韓国など東アジアだけ。他の国では食べる習慣はほとんどありません。
栄養価も高いし、ヘルシーだし、食べればいいのではと思ってしまいますが、ワカメを食用として活用するのは日本や韓国など東アジアだけ。他の国では食べる習慣はほとんどありません。
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特にアルゼンチンは世界有数の牛肉消費国。牛肉を愛する国民は魚介類を食べること自体が他国に比べて格段に少ないのです。
ワカメは手つかずのまま放置され、「海の雑草」としてどんどん増えていきました。
ワカメは手つかずのまま放置され、「海の雑草」としてどんどん増えていきました。
ワカメには快適なパタゴニアの海
実は、ワカメはニュージーランドなどでも繁殖し、養殖業などへの影響が問題となっていて、「世界の侵略的侵入種ワースト100」に選ばれるなど、海外では嫌われものでもあります。
なぜ、パタゴニアでもこれほど増えてしまったのか。そんな疑問を抱えて訪ねたのが、パタゴニアの国立大学です。海藻の研究を進めるフェルナンド・デラトーレさんが、その疑問に答えてくれました。
詳しい生態学的な研究は行っていないものの、1つの仮説として挙げてくれたのが、パタゴニアの中でもこの場所が、水温、海底の環境などの点で、まさにワカメにとって“快適”な生息地だったというものでした。
なぜ、パタゴニアでもこれほど増えてしまったのか。そんな疑問を抱えて訪ねたのが、パタゴニアの国立大学です。海藻の研究を進めるフェルナンド・デラトーレさんが、その疑問に答えてくれました。
詳しい生態学的な研究は行っていないものの、1つの仮説として挙げてくれたのが、パタゴニアの中でもこの場所が、水温、海底の環境などの点で、まさにワカメにとって“快適”な生息地だったというものでした。
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国立工業大学 フェルナンド・デラトーレ教授
「ワカメはパタゴニアの中部と北部の海岸で優勢な種の一方で、南部ではうまく生き延びるには水温が低すぎます。
それと、ワカメなどが繁殖するためには硬い岩が必要なんですが、アルゼンチンのほかの海岸やウルグアイ、それに特にブラジルの南部の海岸などでは、浜や細かい堆積物が広がっていて、繁殖には適していません。
一方で、パタゴニアの沿岸は火山起源の十分な硬い岩があり、このため非常に多くの個体群を生み出す要因となっているとみられています」
「ワカメはパタゴニアの中部と北部の海岸で優勢な種の一方で、南部ではうまく生き延びるには水温が低すぎます。
それと、ワカメなどが繁殖するためには硬い岩が必要なんですが、アルゼンチンのほかの海岸やウルグアイ、それに特にブラジルの南部の海岸などでは、浜や細かい堆積物が広がっていて、繁殖には適していません。
一方で、パタゴニアの沿岸は火山起源の十分な硬い岩があり、このため非常に多くの個体群を生み出す要因となっているとみられています」
“秘める大きな可能性” パスタやコロッケも登場
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まさか地球の裏側で“嫌われもの”となっていたワカメ。街でいろいろと話を聞いていくと、増え続けるワカメを有効活用しようというレストランに出会いました。
ワカメに目をつけたのは、海辺でレストランを営んでいるカローラ・プラチョさんです。
まさに店の前での海岸で増え続けるワカメに興味をもったそうです。調べてみたら、非常に栄養価が高いことを知り、メニューに取り入れることを思いつきました。
ワカメに目をつけたのは、海辺でレストランを営んでいるカローラ・プラチョさんです。
まさに店の前での海岸で増え続けるワカメに興味をもったそうです。調べてみたら、非常に栄養価が高いことを知り、メニューに取り入れることを思いつきました。
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でも食べ慣れないワカメをそのまま出してもすぐに口にしてもらえないので、材料に混ぜ込むなど、工夫を凝らしています。
「栄養素を考えると色々なものが作れるのではないかワクワクします」
そう語るカローラさんが自慢の料理を出してくれました。
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まずアルゼンチン風のコロッケ。取れたてのワカメの塩味をそのまま生かしたそうです。
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それと、ワカメを練り込んだパスタ。さらに食事に添えるワカメのオリーブオイル漬けまで。
ワカメの風味や食感が新鮮で、初めて食べる客にも好評だと胸を張るカローラさん。昨今のヘルシー志向にもマッチしているといいます。
ワカメの風味や食感が新鮮で、初めて食べる客にも好評だと胸を張るカローラさん。昨今のヘルシー志向にもマッチしているといいます。
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レストランでワカメ料理を提供 カローラ・プラチョさん
「アルゼンチンの肉中心の食生活は子どもの肥満などにつながっています。ワカメは海への悪影響はありますが、それ以上に大きな可能性を秘めています。有効に利用できるようになれば、海の環境にとっても助けになるのです」
「アルゼンチンの肉中心の食生活は子どもの肥満などにつながっています。ワカメは海への悪影響はありますが、それ以上に大きな可能性を秘めています。有効に利用できるようになれば、海の環境にとっても助けになるのです」
パタゴニア産ワカメ、日本に来る日も?
前出の地元の大学で海藻の研究を進めているフェルナンド・デラトーレさんも、ワカメをパタゴニアの新たな特産品にしようと奔走しています。
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いま手がけているのは乾燥ワカメを使った商品です。ベンチャー企業を立ち上げて、すでに商品をアルゼンチン国内で販売し始めています。
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フェルナンドさんはパタゴニア産だからこそ大きな可能性を秘めているとみています。
理由の1つが、長い収穫期間だといいます。パタゴニア沿岸は、季節による海水温の差が小さいのが特徴です。日本の代表的なワカメ産地である東北の三陸海岸などと比べて、水温が一定で、1年のうち長い期間、収穫が可能だといいます。
理由の1つが、長い収穫期間だといいます。パタゴニア沿岸は、季節による海水温の差が小さいのが特徴です。日本の代表的なワカメ産地である東北の三陸海岸などと比べて、水温が一定で、1年のうち長い期間、収穫が可能だといいます。
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そして、もう1つの理由が、パタゴニア地方は手つかずの自然が広がっていることです。海沿いに工場などがほとんど立地していないことから、汚染のおそれが少なく、安全性が高く品質の良いワカメの収穫が期待できるとみています。
国立工業大学 フェルナンド・デラトーレ教授
「地球上でワカメが生育できる地域で、パタゴニアよりも良い場所はおそらくないでしょう。消費者の関心は、ワカメの品質の高さにあると思っています。
日本市場は品質への要求が非常に厳しいですが、最大の市場であり、進出に大きな関心を持っています」
「地球上でワカメが生育できる地域で、パタゴニアよりも良い場所はおそらくないでしょう。消費者の関心は、ワカメの品質の高さにあると思っています。
日本市場は品質への要求が非常に厳しいですが、最大の市場であり、進出に大きな関心を持っています」
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現在、ワカメに加えて「めかぶ」の販売に向けた準備も進めているというフェルナンドさん。
すでに複数の日本企業から問い合わせも寄せられているそうです。近い将来、私たち日本の食卓にパタゴニア産のワカメが並ぶ日が来るかもしれません。
すでに複数の日本企業から問い合わせも寄せられているそうです。近い将来、私たち日本の食卓にパタゴニア産のワカメが並ぶ日が来るかもしれません。
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(2024年6月1日 おはよう日本・「おはWORLD」で放送)
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サンパウロ支局長
木村 隆介
2003年入局 ベルリン支局、経済部などを経て現所属
現在は中南米の取材を担当
木村 隆介
2003年入局 ベルリン支局、経済部などを経て現所属
現在は中南米の取材を担当