堀井学衆院議員に強制捜査 公選法違反疑い 堀井氏は自民党離党

自民党に所属していた堀井学衆議院議員が、選挙区内の人に秘書や家族を通じて香典を渡すなど違法な寄付を繰り返していた疑いがあるとして、東京地検特捜部は公職選挙法違反の疑いで堀井議員の事務所などを捜索し、強制捜査に乗り出しました。違法な寄付は贈った枕花とあわせて数十万円分になる疑いがあるということで、特捜部は議員の認識など詳しい経緯の解明を進めるものとみられます。

堀井議員は、東京地検特捜部が自身の事務所などを捜索したことを受けて、自民党を離党しました。

捜索を受けているのは、18日に自民党を離党した堀井学議員(52)の、東京・千代田区の衆議院第二議員会館にある事務所や、北海道登別市にある地元事務所、それに自宅です。

このうち議員会館の事務所には、午前10時45分ごろに東京地検特捜部の係官十
公職選挙法は、政治家本人が参列してその場で渡す場合を除き、選挙区内の人に香典を渡すことを違法な寄付にあたるとして禁じていますが、関係者によりますと、衆議院比例代表北海道ブロック選出の堀井議員は、2年ほど前に、みずからが参列しない通夜や葬儀で、選挙区内の人に複数の秘書や家族を通じてたびたび議員名義の香典を渡していた疑いがあるということです。

また、選挙区内で枕花も贈っていて、違法な寄付はあわせて数十万円分になる疑いがあるということです。

特捜部は、派閥の政治資金パーティーをめぐる捜査の過程でこうした疑いを把握し、捜査を進めていました。

堀井議員は、国会出席などのため地元を離れている時も、香典を渡す相手や金額について秘書などからLINEで報告を受けたり指示したりしていたということで、特捜部は捜索で押収した資料を分析するなどして、議員の認識など詳しい経緯の解明を進めるものとみられます。

選挙区内の男性「妻参列も香典は議員名義」

堀井議員の選挙区内に住み、去年母親の葬儀で喪主を務めた男性がNHKの取材に応じ、堀井議員ではなく妻が参列したが、受け取った香典は議員本人の名義だったと証言しました。

男性によりますと、去年執り行われた母親の告別式に、堀井議員の妻が参列しました。

しかし、受け取った香典を記録した帳簿には、堀井議員の名義で1万円の香典を受け取ったと記されていたということです。

男性は、通夜も告別式も、喪主として参列者への対応にあたっていましたが、堀井議員の姿は見なかったといいます。

男性は「堀井議員本人が参列していたら覚えているはずだが、家族も堀井議員の妻が来ていたことは覚えていたが、堀井議員は見ていない。地元のために頑張っていた議員にこのような疑いが出てしまい残念だ。有権者の葬儀や会合は地元とつながりを持つうえで大事な活動の1つだと思うが、やってはいけないことをしたのであれば、どうしてなのか知りたい」と話していました。

選挙区内の60代男性「6年前の葬儀に議員参列し香典も」

堀井議員の選挙区内に住む60代の男性は、NHKの取材に対し「6年前に自分の母が亡くなった際は、国会会期中にもかかわらず堀井議員本人が通夜と告別式に参列してくれ、香典も受け取った。地域内のほかの葬儀にも頻繁に顔を出していたようで『葬儀などに足しげく通う人』という印象があった」と述べました。

そのうえで「前回の総選挙で小選挙区で敗れたあと、活動のしかたが大きく変わった。後援会を頼った組織型の選挙ではなく、若者や無党派層の票を取り込むためイメージを変えようとSNSなどでの発信に力を入れるようになった一方で、葬儀で本人の姿を見かけなくなった。地元の支援者を回ることもなくなり、印象が180度変わった」と話していました。

自民党に離党届 18日付けで受理

堀井議員は、東京地検特捜部が自身の事務所などを捜索したことを受けて、自民党に離党届を提出し、18日付けで受理されました。

堀井議員は衆議院比例代表北海道ブロック選出の当選4回で52歳。スピードスケートの選手として1994年のリレハンメルオリンピックで銅メダルを獲得したあと、道議会議員を経て、2012年の衆議院選挙で初当選し、外務政務官や内閣府副大臣などを務めました。

しかし、自民党安倍派からキックバックを受けたパーティー券収入を政治資金収支報告書に記載していなかったことが明らかになり、副大臣を辞任しました。

不記載の金額はおととしまでの5年間で2196万円に上り、1年間の党の役職停止処分を受けました。

そして、6月、記者会見を開き、次の衆議院選挙に立候補しない意向を表明していました。

自民 茂木幹事長「極めて遺憾 しっかり説明責任を」

自民党の茂木幹事長は「今回のような事態に至ったことは極めて遺憾だ。現在、捜査が進んでいる状況だが、今後、堀井議員にはしっかり説明責任を果たしてもらいたい」というコメントを出しました。

自民 稲田幹事長代理「信頼回復はまだ途上」

自民党の稲田幹事長代理はNHKの取材に対し「捜査が始まったところなので、行方を注視したい。今回もいわゆる政治とカネの問題での強制捜査ということで、政治家や自民党への信頼回復はまだ途上にある。党としては小手先ではない政治改革・政治刷新の取り組みを進めなければならない」と述べました。

北海道 自民党道連「誠に遺憾 厳粛に受け止めている」

堀井議員の事務所などが特捜部の捜索を受けたことについて、自民党道連は、「わが党の堀井議員が公職選挙法違反の疑いで捜査を受けていることは誠に遺憾であり、厳粛に受け止めている。国民の皆さまにおわび申し上げるとともに、議員1人1人がしっかりと襟を正し、政治の信頼回復に向けて全力で取り組んでいく」というコメントを出しました。

林官房長官「政府として答えることは差し控える」

林官房長官は午前の記者会見で「捜査機関の活動内容に関わる事柄であり、政府として答えることは差し控える。一般論として、選挙や政治活動は公職選挙法など関係諸法令の規定に従い、一人ひとりの政治家が適正に対応すべきものだ」と述べました。

立民 逢坂代表代行「あしき政治の体質の表れ」

立憲民主党北海道連の代表を務める逢坂代表代行は記者団に対し「秘書が香典を持って行くことは本当にやってはいけないことだ。政策や政治姿勢で1票を入れてもらうよりは、カネや利権で1票が欲しいという、あしき政治の体質が表れたものではないか。政治とカネの問題で、自民党が身ぎれいにできるとは思えず、やはり選挙できっぱりと決着を付けるしかない」と述べました。

公明 北側副代表「いまだにあるのは驚きだ」

公明党の北側副代表は記者会見で「極めて遺憾だ。堀井議員は捜査にしっかり協力してほしい。地元の有権者に葬儀などで香典を持っていくことがいまだにあるのは驚きだ。堀井議員だけでなく、すべての政治家が公職選挙法に明確に規定されているルールをしっかり守らなければならない」と述べました。

国民民主 玉木代表「『裏金問題第二幕』で言語道断」

国民民主党の玉木代表は記者会見で「自民党の『裏金』の使途は明らかになっていないが、香典などに支出された可能性が高い。今回の問題は『裏金問題第二幕』と言ってもいいもので言語道断だ。本人が説明責任をしっかり果たすことは必要だが、自民党としても、ほかに同様の事案がないかを調査する必要がある」と述べました。