宅配便の再配達削減へ 「置き配」普及促す動き 官民で広がる

宅配便のドライバー不足が深刻さを増す中、ドライバーの負担となっている再配達を減らそうと、玄関先に荷物を届ける「置き配」の普及を促す動きが、官民の間で広がっています。

宅配業界では、ネット通販の需要の高まりなどで配達件数が増え続ける一方、ドライバー不足が年々深刻さを増していて、1回の配達で届けられない再配達がドライバーの負担だとして課題となっています。

こうした中、国土交通省は再配達の削減に向けて、ことし10月以降、ネット通販事業者を対象に新たな対策を打ち出します。

具体的には、ネット通販の利用者が置き配や宅配ボックスを活用し、1回の配達で荷物を受け取った際にポイントを付与するサービスを事業者が導入した場合、国がポイントの付与にかかる費用を配達1件につき最大5円、最長2か月間、補助します。

一方、宅配最大手のヤマト運輸は、一部のネット通販事業者で利用者が商品を注文する場合に限定していた置き配の対象を、6月から大幅に拡大し、5000万人余りが登録している自社で展開するサービスでも置き配を選択できるようにしました。

国土交通省は、荷物の再配達の割合を今年度中に6%とする目標を掲げていますが、ことし4月時点では10.4%と、依然、10個に1個以上が再配達となっていて、ドライバーの負担軽減に向け、置き配の普及を促す官民の取り組みが進んでいます。

オートロックのマンションでも「置き配」

再配達の削減に有効な「置き配」について、オートロックのマンションでも普及を促そうと、システムを取り入れる動きが出ています。

「三井不動産レジデンシャルリース」は、去年、ネット通販大手のアマゾンジャパンと共同で、配達員が荷物に添付されたQRコードなどを専用のアプリで読み込むことで、マンションの入り口のオートロックを解錠するシステムを導入しました。

安全面での対策として、あらかじめ宅配業者側が登録していた配達のスケジュールや位置情報と合致しているか、システム上で確認が行われます。

ことし5月までに300棟余りの賃貸マンションで導入し、これまでのところトラブルなどは起きていないということです。

また、マンションの管理などを行う三菱地所コミュニティや東急コミュニティーもことしから、マンションの管理組合の同意をあらかじめ得たうえで、提携する宅配業者の配達員がデジタルキーを使ってオートロックを解錠し、マンションの玄関先まで荷物を届けるサービスを提供しています。

物流業界に詳しい流通経済大学の矢野裕児教授は「再配達は、宅配便のコストを上げ、利用者の負担増にもつながる。宅配業者とマンション供給業者、ネット通販業者が一緒になって、再配達を防ぐ仕組みを作ることが重要だ。一方で、さまざまな形でインフラを作っていくことも重要だが、最後は利用者の意識が変わらないかぎり、再配達は減らせない」と指摘しています。