美容目的で使用拡大「エクソソーム」 含まれない製品が

細胞が分泌するごく小さな粒子で、美容目的などでの使用が拡大している、「エクソソーム」という物質について、東京医科大学のグループが自由診療のクリニックなどで使われているエクソソームの製品12品目を調べたところ、3品目でエクソソームが含まれていることが確認できなかったことが分かりました。グループでは「メーカーは正しいエクソソームの製品を製造するべきだ」と指摘しています。

この調査は、エクソソームの研究者などで作る日本細胞外小胞学会の理事長で東京医科大学の落谷孝広特任教授などのグループが行いました。

エクソソームは細胞から分泌されるごく小さなカプセル状の粒子で、組織の再生を促す働きなどがあるとされ、近年、美容などの目的で使われることが多くなっています。

グループでは、自由診療のクリニックなどで使われているエクソソームの製品のうち、ことし3月までに入手できた12品目について、エクソソームに特有の2種類のたんぱく質の反応があるかを調べました。

その結果、3品目はたんぱく質の反応が見られず、エクソソームが含まれていることを確認できなかったということです。

ほかの9品目については、たんぱく質の反応は見られましたが、製品によって差が大きく、含まれているエクソソームの量にばらつきが大きいと考えられるということです。

エクソソームをめぐっては、日本再生医療学会が去年、自由診療での使用が広がっているなどとして、製造過程について将来的に何らかの規制のもとに置くことが望ましいなどとする提言を発表しています。

落谷特任教授は「全くエクソソームを含まない製品があり、分析結果に驚いたし、当惑している。メーカーは正しく安全なエクソソームを製造するべきだ」と話しています。

エクソソームとは

「エクソソーム」は、細胞が放出する直径100ナノメートルほどのごく微小なカプセル状の物質です。

この中にはさまざまなたんぱく質や遺伝子の働きに関わる物質が含まれていて、エクソソームは、細胞どうしの情報伝達の役割を担ったり、病気が起こるメカニズムに関連したりしているとされるほか、組織の再生を促す働きなどもあると考えられていて、病気の診断や治療などに役立つ可能性があるとして、世界中で研究が進められています。

現在のところ、日本も含め医薬品として承認されていませんが、自由診療のクリニックなどではアンチエイジングや美容などの目的で点滴などとして使われるケースが増えているということです。

ただ、医薬品ではないため、こうした製品の品質についてはそれぞれのメーカーに任されていて、日本再生医療学会は、ことし4月に発表したエクソソームに関するガイダンスの中で、医師や歯科医師がエクソソームの製品を提供する際には、粒子が含まれていることを確認することや、エクソソームに特有のたんぱく質の反応を確認することなどが必要だと指摘しています。

専門家「状況が改善されることを期待」

今回の調査について、医薬品の審査を行う国の機関、PMDA=医薬品医療機器総合機構でエクソソームに関する部会長を務めた、京都大学の高倉喜信副学長は、「2種類のたんぱく質を調べてエクソソームが含まれているかを調べるという手法は、科学的に信頼性があり、妥当なものだ。エクソソームは医薬品として実用化を目指す努力が続いている中、今回のような分析結果が明らかになるのは遺憾で、今後、状況が改善されることを期待したい」と話しています。