大阪・関西万博 担当者会議 日程終える「今後もニーズに対応」

大阪・関西万博の参加国などの担当者を集めた会議は、26日までの2日間の日程を終えました。実施主体の博覧会協会の石毛博行事務総長は記者会見し、「ソフト面での支援を強化したことが大きな成果の1つで、今後もニーズに対応した支援をしていく」と述べました。

大阪・関西万博への参加を表明しているおよそ160の国と地域や国際機関の担当者を集めた会議は、2日間の日程を終え、午後5時から博覧会協会の石毛事務総長とBIE=博覧会国際事務局のケルケンツェス事務局長が記者会見しました。

この中で石毛事務総長は「万博の準備が建築から運営に移行する中、参加国などからの相談に答える窓口を新たに設けるなど、ソフト面での支援を強化したことが大きな成果の1つで、今後もニーズに対応した支援をしていく予定だ。万博をなんとしても成功させるという熱気を関西から世界に広げるために、参加者にはさらに発信してもらいたい」と述べました。

運営委員に20か国余の代表選ばれる

会議では、26日午後、参加国などの意見を取りまとめて博覧会協会と協議する「運営委員」として、20か国余りの代表が選ばれました。

このうち、▼スイス、▼イギリス、▼イタリア、▼オランダ、▼アンゴラの5か国の代表が記者会見に臨み、議長を務めるスイスの政府代表のマヌエル・サルチリ氏は「各国から情報や懸念を出してもらった上で、博覧会協会と密に連携し、万博を最大限成功に導きたい」と話していました。

イギリスの政府代表を務めるキャロリン・デービッドソン氏は、今回の参加国会議について、「万博を具体的にどう実現するかということが主なテーマで、活発でポジティブな意見交換を行うことができた」と述べ、有意義だったと評価しました。

運営委員は、来年4月の開幕までは3か月に1度のペースで、開幕後は毎月、会議を開き、参加国から寄せられた運営に関する課題などを博覧会協会に伝え、解決策を協議するということです。

パビリオン タイプ別にスケジュール目安など示す

会議の2日目は、海外の参加国が、
▼自前でパビリオンを建設する「タイプA」、
▼博覧会協会が建設した建物を単独で借りる「タイプB」、
▼協会が建設した建物に複数の国で入る「タイプC」の、
それぞれのタイプ別に説明が行われました。

このうち「タイプC」の準備の進め方について、博覧会協会の担当者は、9月までに展示スペースを各国へ受け渡してから、順次内装工事を始めてもらい、11月には展示品を日本へ輸送、開幕1か月前の来年3月13日までに展示の準備を終えるという、スケジュールの目安を示していました。

また、内装工事で守らなければならない建築基準法や消防法の内容のほか、パビリオン内でレストランを営業する場合に必要な食品衛生法の手続きなどについても説明を行ったということです。

博覧会協会 “建設未定”の国などに6月末めどに回答求める

大阪・関西万博では、51か国が自前でパビリオンを建設する「タイプA」という方式で出展を予定していて、このうち40か国で建設会社が決まり、32か国が着工しています。

しかし、資材価格の高騰などを背景に交渉が難航し、建設会社がまだ決まっていない国も11か国あることから、博覧会協会は、協会が代わりに建物を建て参加国が費用を負担する「タイプX」や、複数の国が1つの建物に入る「タイプC」への移行などの選択肢を提示しています。

関係者によりますと、博覧会協会は開幕に準備を間に合わせる期限が近づいているとして、こうした国などに6月末をめどに回答を求めているということです。

明らかに準備が間に合わないと判断される国には、割り当てた建設用の敷地を返してもらうよう求めていくということです。

敷地が空く場合の活用方法を検討するためだということですが、各国の理解を得られるかどうかは未知数で、博覧会協会としては個別の国と難しい調整を行うことになりそうです。

参加の国と地域の半数が「共同館方式」で

万博に海外の国と地域が参加する方式には、「タイプC」という参加のしかたがあります。

自前のパビリオンを建設しない国や地域が1つの建物のスペースを分け合って展示を行う「共同館方式」と呼ばれ、過去の万博でも行われてきました。

万博の歴史や意義などを調査・研究する「万博学研究会」によりますと、共同館が設置されたのは1967年にカナダのモントリオールで行われた万博からです。

背景には1960年代にアフリカを中心に植民地支配から独立する国が相次いだことがあるといいます。

独立したばかりの国の参加を支援しようと、主催国のカナダが建物を用意し、こうした国々が共同で展示したのが始まりとされています。

これ以降、共同館は各万博で設置されてきましたが、アフリカやアジア、オセアニアなど地域ごとにまとめられることが多く、2005年の愛知万博でも「アフリカ共同館」や「中米共同館」などがありました。

今回の万博では、参加するおよそ160の国と地域の半数ほどが「共同館」で展示を行います。

共同館は4棟になる見通しで、1棟を各国が分け合い、自国のコンセプトに沿って展示を行う予定です。

自前でパビリオンを建設するには資金が足りなかったり、1棟を埋めるには展示物が足りなかったりする国と地域が、共同館での展示を希望し、アフリカなどの途上国が多いのが特徴です。

「共同館」が目指す展示は アドバイザーに聞く

アフリカのマリ共和国出身のウスビ・サコさんは、1991年に留学生として来日し、いまは京都精華大学で教授を務めています。

博覧会協会で副会長を務めながら、今回の万博ではシニアアドバイザーとして主に発展途上国が出展する共同館の展示にアドバイスを行っていて、サコさんによると、およそ90か国が出展を計画し、このうち半数近くがアフリカの国々だということです。

サコさんは「これまでの万博では、途上国は民芸品やお土産品などを展示して、見本市に近いところもあった。共同館は見本市や観光推進ブースでは意味がなく、世界課題に対して、あなたの国がどういうビジョンを持っているか、どういう役割を果たしたいか、メッセージを伝えるよう、アドバイスしている」と話しています。

サコさんは共同館に出展する国々とそれぞれ複数回面談し、万博のテーマである「いのち」を反映した展示をするようアドバイスしているということで、「共同館にここまでの力を入れているのは、万博史上、今回が初めてではないか」と話していました。

また、大阪・関西万博ではSDGs=持続可能な開発目標の達成に向けた取り組みを開催の意義の1つとして掲げられていることを踏まえ、「SDGsの目標の中にはいろんな格差をなくすということもある。経済格差を含めた世界課題を共有して、意識を高めて解決に取り組んでいく展示をしてほしい」と話していました。

参加国の声 リベリア「さまざまな課題を協会に質問」

「タイプC」の出展を予定している、アフリカのリベリアの担当者は「さまざまな課題について協会に質問したので、その回答をもらって、懸念のすべてが解決されるのを楽しみにしています」と話していました。

参加国の声 マーシャル諸島 “支援策聞き 準備を加速”

「タイプC」の出展を予定している、マーシャル諸島の担当者は、「パビリオンでは、自国の工芸のほか、気候変動に対する取り組みなどについての出展を考えています。タイプCに対する支援策について聞き、本国へ戻ったときに準備を加速させられるようにしたいです」と話していました。

展示内容にテーマをどう反映させるか 事前研修も

大阪・関西万博では、共同館での展示を地域ごとではなくテーマごとに分ける試みが行われています。

万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を踏まえ、去年秋には共同館に出展予定の国と地域などの展示担当者およそ75人を日本に招き、展示テーマなどについて話し合う研修が行われました。

参加者どうしで「いのち」について議論を交わし、各国が思い描く展示内容に「いのち」というテーマをどう反映させるかなどが話し合われました。

万博のシニアアドバイザーで、研修で講師を務めた、国立民族学博物館の吉田憲司館長は「テーマの共有がなかった過去の共同館の展示は、土産物などが並ぶ見本市のようだった。今回はテーマを共有するため事前に議論の場を設けることができ、画期的だったと思う。命とのつながりをどういう形で自国の展示に盛り込んでいくのか、人々の関心を集める展示になってほしい」と話しました。

博覧会協会やJICA 途上国への展示支援

JICA=国際協力機構などは、先進国と比べて展示経験が少ない途上国の展示担当者を日本に招いて研修するなどして、展示のノウハウなどを学んでもらう取り組みを進めています。

途上国は、国際的な場で展示の経験も少なく、過去の万博での展示が「土産品の見本市のようだ」という指摘もされてきました。

こうしたことから、実施主体の博覧会協会はJICAなどとともに、「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマに沿った展示内容を意識してもらおうと、途上国への展示支援をしています。

JICAの支援は去年の春から始まり、秋にはおよそ75か国の担当者が日本を訪れ、国立民族学博物館などで万博のテーマについて議論した上で、実際とほぼ同じ形の展示スペースを使って展示計画を考えたり、担当者どうしで意見交換したりしたということです。

意見交換の中で新たな展示のアイデアが生まれることもあったということで、支援を担当するJICA企画部の中根卓さんは「参加者からは『いろんな人と意見交換できたのが非常に有意義だった』という意見があった。研修の講義の中では、万博のテーマである『いのち』について説明しているので、共通のテーマを生かした上で、各国が独自の展示を見せてくれるといいと思う」と話しています。

参加国の声 ガンビア「研修でコンセプト持ち帰ることができた」

「タイプC」で出展する、西アフリカのガンビアの政府代表は、NHKの取材に対し、「われわれの担当者が去年、JICA=国際協力機構の研修を受けたことで、万博のコンセプトを持ち帰ることができた。それによって、コンセプトに沿った準備ができている」と話しました。

ガンビアのブースでは多様性に富んだ自国の社会や文化などを紹介するとした上で、「『いのち輝く未来社会のデザイン』という万博のテーマに沿って、われわれがどのように暮らしているかや、どういったものを食べ、どんな習慣があるのかを、知ってもらえるような展示にしていきたい」と話していました。

参加国の声 ガーナ「展示についての支援 役立っている」

「タイプC」の方式で参加する、ガーナの政府代表は、博覧会協会やJICAの研修などについて、「展示についての支援は全部役に立っている。ガイダンスもそうだし、コンテンツを作り上げるためのアドバイスもしてくれた。展示はコンテンツの中身がすべてなので、支援は非常に助けられた」と話しました。

ガーナは教育やヘルスケアについて紹介するほか、ドローン製造などガーナの産業についても展示する予定だということです。

参加国の声 オーストラリア“サモアやトンガなどとも意見交換”

会議では、各国からは万博に向けてさまざまな質問や意見が出たほか、各国間での意見交換や交流も活発に行われました。

オーストラリア政府代表のナンシー・ゴードンさんは「パビリオンの建設の話だけでなく、文化やビジネスなどイベントの中身についても話し始めた印象がある。雰囲気は非常によかった」と話しました。

全体のイベントや各国の個別イベントの日程をどのように情報共有できるか、日本の担当者と相談したほか、各国とも意見交換したということで、「同じ南太平洋の国のサモアやトンガなどと話し、来年の万博で共同でどういうイベントができるかなど、意見を交換した」と話していました。

(6月26日「ほっと関西」で放送)