米 人工妊娠中絶の判断覆し2年 中絶の権利容認派が抗議集会

アメリカで連邦最高裁判所が人工妊娠中絶は憲法で認められた権利だとするそれまでの判断を覆してから2年になるのに合わせ、中絶の権利を認めるべきだと訴える人たちが抗議集会を行いました。中絶の権利は全米を大きく二分する問題で、秋の大統領選挙の争点の1つとしても注目されています。

アメリカの連邦最高裁判所はおととし6月、中絶は憲法で認められた権利だとする判断をおよそ50年ぶりに覆しました。

その後、全米の半数近い州で中絶の規制が強化されています。

首都ワシントンにある連邦最高裁の前では判断が覆されてから2年となった24日、中絶の権利を認めるべきだと訴える人たちおよそ300人が集まり「自分の体のことは自分で決める」などと抗議の声を上げるとともに、中絶の権利を全米で保障する法律を制定すべきだと訴えました。

一方、最高裁前には中絶反対派も集まり「胎児の命はあなたが決めるものではない」などと訴え、容認派との間で一時、言い合いになる場面も見られました。

2年前の連邦最高裁の判断を巡っては11月の大統領選挙で返り咲きをねらう共和党のトランプ前大統領が、自身が在任中に保守派の判事3人を指名し、多数派になったことで実現したと強調しています。

中絶の権利は大統領選挙の争点の1つとなっていて、今週行われるバイデン氏とトランプ氏の初めてのテレビ討論会でも取り上げられる見通しです。

バイデン大統領「トランプ氏ただ1人にこの悪夢の責任がある」

バイデン大統領は連邦最高裁の判断から2年になるのに合わせて24日、声明を発表し、保守派が多い州で中絶の規制強化が進んだことについて「トランプ氏ただ1人にこの悪夢の責任がある」と非難しました。

そのうえで「機会を与えられたら、彼が全米で中絶を禁止することは間違いない。そんなことは絶対にさせない」として中絶の権利を擁護することが必要で、トランプ氏の返り咲きを阻止すると改めて強調しました。

一方、トランプ前大統領は22日、中絶に反対する保守派の集会で演説しました。

この中で、自身が在任中、連邦最高裁の判事に保守派を指名し、判断が覆ったことにつながったとして、「49年間、求められてきたことを実現できた」と強調しました。

ただ、全米一律で中絶を規制するのではなく、各州が判断すべきだとも改めて述べました。

双方の参加者は

24日に連邦最高裁判所に集まった人たちのうち、中絶容認派の女性は「トランプ氏が当選すれば中絶を含む女性の権利が大きく損なわれる」と述べて、選挙では民主党のバイデン大統領に投票する考えを示しました。

一方で、反対派の女性は「声をあげることができない赤ちゃんのために闘う大統領が必要だ」と述べて共和党のトランプ前大統領に投票すると話していました。