ロシア南部 宗教施設襲撃 市民4人 警察官15人死亡 テロで捜査

ロシア南部のダゲスタン共和国で23日、宗教施設や警察署などが相次いで武装グループに襲撃され、ロシアの捜査当局によりますと、市民4人に加え、警察官15人が死亡したということです。当局は、テロ事件として捜査を進めています。

ロシア南部のダゲスタン共和国の中心都市マハチカラとデルベントで23日、ロシア正教の教会やユダヤ教の礼拝所のシナゴーグ、それに警察署が、相次いで武装グループに襲撃されました。

ユダヤ系の団体によりますとデルベントのシナゴーグは武装勢力によって放火され、現地からの映像では建物が焼け焦げた様子も確認できます。

ロシアの捜査当局によりますと、一連の襲撃で教会の関係者など市民4人に加え、警察官15人が死亡したということです。

また、治安機関などでつくる国家反テロ委員会は、武装グループのメンバー5人を殺害したとしています。

ダゲスタンでは、襲撃の犠牲者を悼むため、24日から3日間、喪に服すと発表しました。

今のところ犯行声明などは出されていませんが、ダゲスタン共和国のトップ、メリコフ氏は「海外からの支援を含め準備されていた」と述べたほか、ロシア国営のタス通信は、治安当局筋の話として「武装勢力は国際テロ組織の信奉者だ」などと伝えています。

ロシアの連邦捜査委員会はテロ事件として捜査を進めています。

ロシア大統領府 “プーチン大統領 遺族らに深い哀悼の意”

ロシア南部のダゲスタン共和国で起きた襲撃事件を受けて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は24日、記者団に対し「プーチン大統領が事件の犠牲者の遺族らに深い哀悼の意を表した」と述べました。

また、記者からの質問で、ロシア南部で武装勢力が活発に活動し、ロシア各地でテロ事件が相次いだ2000年代初めのような状況に戻るおそれはないかと問われたのに対し、ペスコフ報道官は「おそれはない」と答えました。

そのうえで「今のロシアは違う。社会は強固になっている。ダゲスタンで行われたような犯罪的なテロ行為は、ロシアでもダゲスタンでも支持されない」と述べ、社会が不安定化するおそれはないと強調しました。

専門家 “襲撃はイスラム過激派か 今後の情報注視が必要”

ロシア南部のダゲスタン共和国の宗教施設などが相次いで武装グループに襲撃されたことについて、旧ソビエト地域に詳しい同志社大学政策学部の富樫耕介准教授は「攻撃対象となったのが、ロシア正教会やシナゴーグだったことからおそらくイスラム過激派が行ったものだと考えている」と述べました。

そして、事件が起きたダゲスタン共和国について「伝統的に、急進的なイスラム過激思想を持った人々が拠点を作って活動してきた地域だ」と指摘し、襲撃を行ったのが、地元のイスラム過激派によるものか、グローバルなネットワークを持つテロ組織によるものか、今後の情報を注視する必要があるとしています。

そのうえで「ウクライナ戦争において戦地に行く兵士が増えている地域でもあり、犠牲者もそれなりにでてきている」と述べ、ウクライナへの軍事侵攻に多くの人が動員されていることへの不満が、襲撃につながった可能性があるとの見方も示しました。

富樫准教授は今回の事件の影響について「ロシアはウクライナの戦争を継続しつつ、対テロ作戦を継続できるだけの能力や人員、あるいは意思があるのか問われているのだと思う。一歩間違えると政権に対する大きな批判が出てくる可能性もある」と述べ、今後の対応次第ではロシア国内の分断や不満を助長していく可能性もあるとしています。