鹿児島県警に監察官派遣 警察庁 情報漏えいの経緯など検証

鹿児島県警察本部で、元生活安全部長が情報漏えい事件で起訴され、本部長が訓戒を受けるなど問題が相次いだことを受けて、警察庁は24日から、監察官を県警に派遣して、経緯などを検証する特別監察を開始しました。

鹿児島県警察本部では元生活安全部長が内部文書をライターに郵送し、職務上知り得た秘密を漏らしたとして、国家公務員法の守秘義務違反の罪で逮捕・起訴されるなど、ことしに入って現職の警察官や元幹部が逮捕される事件が、4件相次ぎました。

元生活安全部長が、「野川明輝本部長が警察官による盗撮事件を隠蔽しようとした」などと主張していたことについて、野川本部長は、今月21日に開いた記者会見で、隠蔽の指示を改めて否定しましたが、本部長の指示が、警察署に誤って伝わり、2日間、捜査が中止されていたことが明らかになり、警察庁は本部長がきめ細かな確認や指示をせず、捜査の基本に欠けていたなどとして、長官名で訓戒にしました。

一連の不祥事の事実確認に加え、組織運営や職員間の意思疎通の問題など、原因を分析するため、警察庁は24日に監察トップの首席監察官ら3人を県警に派遣して、特別監察を開始しました。

野川本部長など関係者からの聞き取りも改めて実施して経緯を検証し、再発防止につなげたい考えです。

警察庁は「鹿児島県警での再発防止の取り組みが、確実に実施されることが、警察に対する信頼回復のために極めて重要だ。これらの取り組みがスピード感を持ってしっかりと行われるよう、引き続き、厳正な監察を実施する」とコメントしています。

鹿児島県警「重く受け止めている」

警察庁による特別監察について鹿児島県警察本部は「今回、監察が行われることを重く受け止めている。県公安委員会の管理のもと、警察庁からの指導を踏まえつつ再発防止にしっかりと取り組み、県民の信頼回復に努めていきたい」とコメントしています。

一連の不祥事の経緯は

鹿児島県警察本部の本田尚志 元生活安全部長の事件が発覚したのは、ことし3月に明らかになった鹿児島県警の別の警察官による情報漏えいが発端でした。

このとき流出していたのは、警察が告訴や告発を受理した事件の当事者の名前などの個人情報も書かれた「告訴・告発事件処理簿一覧表」と呼ばれる内部文書です。

去年10月、この中の特定の事件の捜査に問題があったとするネットメディアの記事で個人情報が黒塗りにされた状態で掲載され流出が発覚したということです。

この事件では、鹿児島県警の曽於警察署の巡査長が、内部文書などを第三者に漏らしたとしてことし4月に逮捕され、5月、起訴されていて、この捜査の過程で本田元部長による漏えいの疑いが発覚したということです。

この巡査長の情報漏えい事件の関係先として、鹿児島県警はことし4月、ネットメディアを運営する代表の自宅の捜索を行っていました。

本田元部長が逮捕されたのは5月31日。

退職後のことし3月下旬、鹿児島市内で警察の内部文書をライターに郵送し職務上、知り得た秘密を漏らしたとして、国家公務員法違反の疑いでした。

6月5日、裁判所で行われた勾留理由の開示手続きで元部長は、枕崎警察署の巡査部長が今月3日に起訴された盗撮事件のほか、一般市民の提供した情報をまとめた「巡回連絡簿」を悪用した警察官による犯罪があったとして警察の対応状況に触れたうえで、「不祥事をまとめた文書を記者に送ることにした」と述べていました。

その上で元部長は「県警職員が行った犯罪行為を県警本部長が隠蔽しようとしたことがあり、いち警察官としてどうしても許せなかった」と述べました。

これについて、県警は21日、会見を開き、元部長が主張する「隠蔽」について改めて否定した一方、盗撮事件の捜査で、本部長の指示が警察署に誤って伝わり、2日間、捜査が中止されていたことを明らかにしました。

盗撮事件の捜査 2日間中止された経緯

警察庁や鹿児島県警の説明によりますと、枕崎警察署の巡査部長が逮捕・起訴された盗撮事件の捜査では、去年12月19日に警察署が認知し、3日後の22日には「盗撮事件の現場近くの防犯カメラに、枕崎警察署の公用車と同じ車種の不審な車両が写っている。運転しているのは、枕崎警察署の署員である可能性がある」という情報が、首席監察官から野川本部長に報告されました。

野川本部長は、この時点では証拠が乏しかったことなどから、枕崎警察署で引き続き捜査し、署員が容疑者として特定されたら本部長指揮の事件として改めて伺いを立てるよう、首席監察官に指示したということです。

一方、捜査には一定の時間を要すると想定されることから、捜査の間に同種の事案が発生しないよう、綱紀の粛正と不祥事防止のための教養を実施することもあわせて指示したということです。

ところが、首席監察官を通じてこの指示を受けた枕崎警察署の署長が内容を誤解し、署員に対して「捜査を中止した上で教養を行う」と伝えていたということです。

その結果、土日の2日間捜査が中止され、週明けに署長が「本当に捜査を中止してよいか」と首席監察官に確認したことで行き違いが発覚し、12月25日には捜査が再開されたということです。

この盗撮事件について、元生活安全部長は裁判所で行われた手続きの中で「野川本部長による隠蔽の指示があった」と主張したことから、県議会の委員会質疑でも事件の認知から逮捕まで5か月かかったいきさつなどについて質問が出ましたが、このとき県警は捜査が一時中止されたことなどを明らかにせず、6月21日の会見で初めて公表しました。

これについて、西畑警務部長は「捜査が中止されていたのは土日の2日間であり、週明けには再開されたので実質的な影響はなかった」などと述べました。