【会見詳細】岸田首相 電気・ガス料金の補助 追加実施を発表

岸田総理大臣は国会の会期末を前に、21日午後6時ごろから総理大臣官邸で記者会見を行いました。岸田総理大臣は、電気やガス料金への補助をことしの8月から3か月間、追加で実施する方針を表明しました。

=会見のポイント 記者解説=

動画2分42秒

《記者会見 詳細》

岸田総理大臣は国会の会期末を前に、21日午後6時ごろから総理大臣官邸で記者会見を行いました。

憲法改正「前に進めるべく粘り強く取り組んでいく」

憲法改正をめぐり、岸田総理大臣は記者会見で、先週の衆議院憲法審査会で自民党が緊急事態での国会議員の任期延長に関する論点整理の案を示したことについて「5会派の賛成を得たと承知しており、極めて重要な1歩だと考えている」と述べました。

その上で「前に進めるべく党の運動方針に基づいて粘り強く取り組んでいく。憲法審査会では国会閉会後も協議を呼びかけており、全力を尽くして政治としての責任を果たし、議論を1歩でも前に進めるべく努力を続ける」と述べました。

総裁としての3年弱「今の時点での評価は適切ではない」

記者団から「ここまでの党総裁としての3年弱を振り返り、自身で点数を付けるとすれば何点か」と問われ「今の時点で終わるとしたなら評価ということもあるだろうが、道半ばで重要な課題が山積しており、先送りできない課題がたくさんある。結果につなげることで評価が生まれると信じているので、1つでも2つでも結果を出すよう努力することが重要だ。今の時点で評価するのは適切ではないのではないか」と述べました。

選択的夫婦別姓「国会での建設的な議論 重要」

「選択的夫婦別姓」をめぐっては、「経団連からも制度を要望する提案がなされたほか、家名を守るために導入してもらいたいという意見もある一方で、家族の一体感や子どもの姓をどうするのかなどの意見もある」と述べました。

その上で「国会で建設的な議論を進めていくことは重要だ。あわせて現実にお困りの方がいるので、抜本的な制度の改正まで議論を深めることは大切なことだが、やはり具体的な不都合に対する対応について考えなければならない。政治として議論を深めていく努力が求められるのではないか」と述べました。

規正法改正「『まだまだ不十分だ』と指摘 謙虚に受け止め」

岸田総理大臣は、記者会見で「今回の政治資金規正法の改正で国民の信頼を取り戻せたと考えるか」と問われたのに対し「これまで積み上げてきた取り組みの1つの大きなステップだとは思っているが、国民から『まだまだ不十分だ』という指摘があることは謙虚に受け止めたい。政治改革と信頼回復への道のりはまだ道半ばで、引き続き真摯に(しんし)議論を続けていかなければならない」と述べました。

首相の資質「転換点や変化に対する大局観持つことが大事」

秋までに行われる自民党総裁選挙に関連して総理大臣や総裁に求められる資質を問われると「国の内外で歴史的な転換点にあり、経済や社会を維持していくために大きな課題に直面している。転換点や変化に対する大局観を持つことが大事だ」と述べました。

その上で「難しい課題には、さまざまな議論が起き、反対も予想される。難しい判断に向けても勇気と覚悟を持って結論を出していく決断が求められる。強い覚悟や責任を持つことが大事だ」と述べました。

自民党総裁選への対応や衆議院解散の可能性については

岸田総理大臣は記者会見で、ことし秋までに行われる自民党総裁選挙への対応のほか、総裁選挙までに衆議院の解散や内閣改造・党役員人事に踏み切る可能性について問われたのに対し「政治への信頼回復や能登半島地震の復旧・復興、経済対策のほか、不透明な国際環境の中での外交など、先送りできない課題に専念しなければならない。いま考えていることはそれに尽きる。仕事で結果を出すこと以外は考えておらず、それはいまも変わっていない」と述べました。

電気・ガス料金補助 3か月追加実施 ガソリンの補助金も継続方針

今の経済情勢については、力強い賃上げの動きなど、長く続いた「デフレ型経済」から「成長型経済」への「移行」の兆しが明確になってきていると強調しました。

その一方で「物価水準が高止まる中で『移行』に取り残されるおそれがある方々へのきめ細かな支援が必要で、二段構えの対応をとっていく。第一段は早急に着手可能で即効性のある対策、第二段は秋に策定を目指す経済対策の一環として講じる」と述べました。

そして第一段の対策では、「酷暑乗り切り緊急支援」として電気やガス料金への補助をことしの8月から3か月間、追加で実施するほか、現在行っているガソリン価格を抑えるための補助金も、年内に限って継続する方針を表明しました。

その上で、一連の措置による消費者物価の押し下げ効果を、月平均で0.5ポイント以上とするべく検討していきたいと説明しました。

年金生活者や低所得者世帯を対象に給付を検討

第二段の秋以降の新たな経済対策では、年金生活者や低所得者世帯を対象に給付を行うことを検討する意向を明らかにするとともに、「重点支援地方交付金」の拡充を通じ、学校給食費などの保護者負担の軽減のほか、中小企業や農林水産業、学校施設などを幅広く支援していく考えを示しました。

エネルギー 産業構造など総合的に捉えた国家戦略 年内に策定

電気・ガス料金やガソリンへの補助は「脱炭素」の流れに逆行することもあり、いつまでも続けるべきものではなく、日本のエネルギー構造のぜい弱性を克服していかなければならないとして、年内をめどに供給や産業構造などを総合的に捉えた国家戦略の策定を進める方針も明らかにしました。

能登半島地震 常駐派遣の職員を拡大するタスクフォース発足

能登半島地震への対応をめぐり、きめこまやかな支援を行うため、省庁横断的な国の支援拠点を開設し、常駐派遣の職員を100人超に拡大するタスクフォースを来月1日に発足させることを明らかにしました。

そして新たな大規模災害に備えて、医療支援の強化や、初動対応での自衛隊や消防、警察の連携強化などについて法改正も視野に速やかに方針をとりまとめていく考えを示しました。

「政治家の責任強化など盛り込んだ規正法改正 実現」と強調

事実上閉会した通常国会については「わが党の政治資金をめぐる問題に端を発し、政治への信頼回復が最大の論点となった。私自身、覚悟をもって年明けに『政治刷新本部』を立ち上げ、必要な対策を示し、行動を促してきた。時に壁にぶつかることもあったが、自身が1歩前に出るとの思いで、いわゆる『派閥解消』や政治倫理審査会への出席などを決断してきた」と振り返りました。

そして「政治資金制度への信頼を高め、民主主義の基盤をより強固なものにするべく、政治家の責任強化や政治資金パーティーの購入者の公開基準の引き下げ、政策活動費の改革を含む政治資金規正法の改正を実現することができた」と強調しました。

その上で、改正法で検討事項とされた「政策活動費」の透明性強化や支出をチェックする第三者機関について具体化を急ぐ考えを示しました。

岸田総理大臣は「政治改革に終わりはない。選挙制度や国会での議論のあり方などを含め課題は山積しており、各党各会派と真摯(しんし)な議論を続け、民主主義を守るための不断の改革に取り組む」と述べました。

一方、憲法改正をめぐっては、おとといの党首討論で立憲民主党の泉代表に条文の起案に向けた議論に応じるよう求めたことに触れ「賛意を得られず残念だ」と述べるとともに、時代の要請に応えて改正の機会を国民に提起するのは政治の責任だと強調しました。

電気・ガス料金の補助 これまでの経緯

政府による電気・ガス料金への補助は、ロシアによるウクライナ侵攻で燃料価格が高騰したことを受け、去年1月の使用分から始まりました。

導入した当初は、電気料金について、1キロワットアワーあたり、家庭向けでは7円、企業向けでは3.5円を補助し、補助額を縮小しながらも延長を繰り返してきました。

政府はことし3月、燃料価格の高騰が落ち着いたことを理由に5月の使用分までで、電気・ガス料金の補助金をいったん終了すると発表していました。

経済産業省は、補助金が終了したあとも電気・ガス料金が急騰し、国民生活に大きな影響が出る場合は、機動的に対応する方針を示していて、わずかな期間で補助金が復活する形です。

こうした政府の補助金に対しては、円安などを背景に物価高が続く中、家計の負担軽減につながるという見方がある一方、巨額の予算を必要とし、財政規律を損なううえ、消費者の省エネ意欲をそぐという指摘も政府内などにあります。

実際、これまでに電気・ガス料金の負担軽減措置として計上された予算額は3兆7490億円と巨額の規模に上っています。

また、あわせて年内までの継続が発表されたガソリン価格を抑えるための補助金についても、財政負担に加えて、脱炭素の流れに逆行するという批判も根強く、政府は国民生活への配慮と財政規律のバランスをどう図っていくかが問われています。