“新紙幣発行後に現紙幣使えず預金封鎖?” 偽情報拡散に注意

来月20年ぶりに発行が始まる新しい紙幣について「旧紙幣が使えなくなり預金封鎖される」などといった偽情報がSNSで広がっています。財務省は「今の紙幣が使えなくなることはなく、詐欺行為に注意してほしい」と呼びかけています。

20年ぶりとなる一万円札と五千円札、千円札の新紙幣の発行を控え、Xや動画共有アプリ「TikTok」などで、今の紙幣が使えなくなるなどといった偽情報が広がっています。

「タンス預金を半強制的にあぶりだされ国に管理される」とか、「預金が封鎖される」などといった偽情報で、動画の中には20日正午時点でおよそ186万回再生されているものもあります。

中には、対策方法を教えるなどとしたうえで連絡した人に暗号資産の購入を勧めるアカウントもありました。

財務省によりますと、新紙幣発行の目的は、偽造対策の強化と誰でも利用しやすいユニバーサルデザインの導入で、財務省理財局の担当者は「タンス預金のあぶり出しや預金封鎖などを目的としたものではない。これまでの紙幣も引き続き使えるので詐欺行為などには注意してもらいたい」と話しています。

専門家「預金封鎖あり得ない」

金融政策に詳しい帝京大学経済学部国際経済学科の宿輪純一教授は「今の経済状況で預金封鎖はあり得ない。預金封鎖を実施してしまえば国際通貨でもある円の価値の低下は著しいものとなり、世界経済への影響も大きい。政治的にもリスクが高く、そのような政策をとる可能性はないだろう」と話しています。

日銀のウェブサイトによりますと、終戦直後の1946年には激しいインフレを抑えるために、政府が預貯金を封鎖して、流通している紙幣を強制的に金融機関に預け入れさせる非常措置が行われました。

新紙幣の発行に伴って、こうしたことが再び起きるとする偽情報も出ていますが、宿輪教授は「当時は数年で物価が70倍になるようなハイパーインフレーションで、『劇薬』として預金封鎖が行われた。物価の上昇は今とは比べ物にならない」としています。

宿輪教授はこうした偽情報が広がる背景には日本の財政状況やインフレ、災害への不安があるとしたうえで「不安につけ込むもうけ話が出てきているが、『あなただけの甘い話』なんてものはない。怪しいと思ったらすぐ知人に相談したり、ネットで調べたりするなど、身を守る行動をとってほしい。詐欺にだまされないためにも、基本的な金融知識をつけておくことも大切だ」と指摘しました。