気象に関する防災情報見直し案「危険警報」新設の報告書

複雑で分かりにくいと指摘される気象に関する防災情報の見直しの案が示されました。専門家などによる国の検討会は現在の「特別警報」や「警報」に加えて新たに「危険警報」を設け、大雨や土砂災害など災害の種類ごとに発表するという報告書をまとめました。

「大雨警報」や「土砂災害警戒情報」など気象庁などが発表する気象に関する防災情報は種類が多いうえ情報の名称に統一性がなく、災害の危険度をイメージしづらいなどとして、専門家から「複雑でわかりにくい」と指摘されてきました。

災害情報の専門家らによる気象庁と国土交通省の検討会は、情報を体系的に整理して危険度を分かりやすく伝えるため抜本的な見直し向けた議論を続け、18日に報告書を公表しました。

それによりますと、「洪水」と「大雨による浸水」「土砂災害」「高潮」の4つの災害については
▽「氾濫」「大雨」「土砂災害」「高潮」というキーワードに
▽5段階の警戒レベルに対応した数字と
▽「警報」など情報の名称を組み合わせるとしています。

情報の名称の数と警戒レベルの数を対応させて分かりやすくするため、「特別警報」と「警報」の間に新たに「危険警報」を設けるとしています。

それぞれ
▽レベル5は「特別警報」
▽レベル4は「危険警報」
▽レベル3は「警報」
▽レベル2は「注意報」とし
例えば、洪水の特別警報は「レベル5 氾濫特別警報」などと表現します。

レベル1については対応する警報や注意報はありません。

座長を務めた京都大学防災研究所の矢守克也 教授は「統一性が取れた『シンプルでわかりやすい』情報案と考えている。『危険警報』については検討会の中で賛否があったが、レベル4と3が同じ名称なのはマイナスではないかという観点もあり採用した」としたうえで、「国にはこの答申をストレートに受け取っていただき、実際の運用につなげてほしい」と話していました。

報告書を踏まえ、気象庁と国土交通省は今年度中には防災情報の名前を正式に決め、再来年春ごろの運用開始を目指すとしています。

レベル4「危険警報」の経緯は

気象に関する防災情報がわかりにくいとされる理由の一つに、種類の多さと名前に統一性のないことがあります。

気象庁は災害のおそれのある場合に警報や注意報などの情報を発表して、危険性を知らせています。

警報と注意報は大雨や大雪、暴風など7つの種類がありますが、気象庁などはこのほか、土砂災害や川の氾濫といったさまざまな災害に対応した情報を既存の警報や注意報に積み増してきました。

そのつど情報の名前を決めてきたため、バラバラとなっているのです。

国の検討会の会合では防災情報を整理して体系化するのにあたり、5段階の警戒レベルに対応させて災害の種類ごとに「警報」や「注意報」を組み合わせることは大枠で合意しました。

議論となったのは「土砂災害警戒情報」や「氾濫危険情報」などレベル4に相当する情報です。

例えば、「土砂災害警戒情報」のように大雨警報とは違う名称で運用されていたり、高潮の特別警報と警報が同じレベル4相当に位置づけられていたりするという課題があります。

検討会では、気象庁と国土交通省からはレベル3と4をいずれも「警報」としたうえで、数字の大きさで危険度を伝えてはどうかとの案が示されましたが、委員の専門家からはどちらも「警報」では区別しづらいとの意見が上がりました。

そこで国側が打ち出したのが「レベル4 危険警報」です。

しかし、委員の意見はほぼ真っ二つに割れました。

賛成する委員からは「避難を完了することが大切なレベル4とレベル3とでは危険度が大きく違うため、名称を変えた方が分かりやすい」という意見の一方、「特別警報と危険警報のどちらが危険度が高い状況か分かりにくい」とか「新しい情報を覚える負担は避けた方がいい」など反対の意見も出されました。

結局、議論はまとまらず「座長に一任する」という異例の対応となり、「危険警報」を新設してレベル4にあたる情報としてまとまりました。

事務局を務めた気象庁は「レベル4の情報名称として妙案があったわけではない」としたうえで、「警戒レベルの数字の意味が十分社会に浸透していない状況であり、座長や副座長と議論して、数字だけでなくワードをしっかり使っていく必要があるだろうという判断になった。現時点では最良の案だ」としています。

委員「理解してもらうための工夫や時間が必要」

国が発表する気象に関する防災情報は、自治体が災害体制を決めたり「避難指示」などを発表したりする基準となっているだけでなく、住民の命を守る行動のトリガーとしても活用されています。

今回、提言された「危険警報」の新設について、委員の1人は「一般の人たちに理解してもらうための工夫や時間が必要だ」と話しています。

国は4年あまり前に警戒レベルを導入し、災害の危険度と取るべき対応を数字で伝えていますが、情報の意味が十分には浸透していないことが国が行ったアンケート結果で明らかになっています。

地球温暖化などを背景に大雨の回数が増え、線状降水帯など極端な現象が増加するおそれがあると指摘されています。

報告書では「防災気象情報が改善されても正しく活用されなければ適切な防災対応は実現できない」と指摘し、国に情報への理解が深まるよう丁寧な解説を行うとともに、教育機関や専門家、メディアなどと広く連携するよう求めています。

国は情報体系の整理やわかりやすさの改善と、住民みずからが防災情報を活用して災害から命を守る行動をとるための取り組みを両輪で進めていくことが重要です。