東北大学を「国際卓越研究大学」に 初の認定へ 文科省

世界トップレベルの研究水準を目指して国が新たに支援を行う「国際卓越研究大学」について文部科学省は、初の認定候補としていた東北大学が、有識者会議による検討の結果、認定の水準を満たしたと発表しました。ことし10月以降に正式に認定され、今年度中におよそ100億円の助成が開始される見込みです。

「国際卓越研究大学」は、国が設立した10兆円規模の基金「大学ファンド」の運用益を活用し、世界トップレベルの研究水準を目指して重点的に支援する大学で、去年8月、東北大学が初の認定候補として選ばれました。

その後、海外の大学の学長経験者などからなる有識者会議は東北大学が策定した計画の細部について具体的な検討を行ってきましたが、文部科学省は14日、有識者会議が東北大学は「国際卓越研究大学」の認定の水準を満たすと判断したと発表しました。

文部科学省は、国立大学法人法の改正が施行されることし10月以降に必要な手続きを行ったあと、東北大学を初の「国際卓越研究大学」として正式に認定することにしていて、今年度中に初年度分としておよそ100億円が助成される見込みです。

東北大学が策定した計画では、教授を筆頭とした「講座制」と呼ばれる体制から、教員それぞれに学生や研究員などを配置して若手や中堅の研究者がみずから挑戦できる体制への変更や、研究時間を確保するために研究を支援する職員をおよそ1100人増員すること、材料科学や災害科学など大学が強みとする研究分野の戦略的な強化など、大学全体の組織改革が盛り込まれています。

「国際卓越研究大学」について文部科学省は今年度中に2回目の公募も行うことにしていて、最終的に数校を認定する計画です。

東北大学 冨永悌二総長「大学改革を先導変革の結節点に」

「国際卓越研究大学」に認定される見通しとなったことを受けて東北大学の冨永悌二総長が会見を開き、新たに追加した取り組み内容を公表したうえで、今後の決意を語りました。

このなかでは、物理や生物などの自然科学だけでなく人文・社会科学も含めた大学全体の研究力の向上を図ることや、医療提供体制を維持しながら医療の高度化を図るために、研究に軸足を置く医師を増やす仕組みを作る計画などを新たに公表しました。

冨永総長は、日本の研究力について「右肩下がりで落ちるところまで落ちた。回復させるには大学が産業界と連携して新たなイノベーションを生むことが大切だ」と強い危機感を示しました。

そのうえで、国際卓越研究大学の認定に向けた計画について「世界と並ぶ成長戦略を描くためのシステム改革に主眼がある。東北大学は、日本にとってラストチャンスともいえる今回の大学改革を先導し、変革の結節点となりたい」と決意を述べました。

「国際卓越研究大学」とは

「国際卓越研究大学」は、日本の研究力の低下が指摘されるなか、先進的な取り組みを行う大学に優先的に資金を配分し投資することで、研究環境を整備し世界トップレベルの大学を育てようと4年前から政府全体で本格的に検討が始められました。

財源は国が設立した10兆円規模の「大学ファンド」で見込まれる運用益のうち、年間最大で2800億円が「国際卓越研究大学」の制度に使われる予定です。

各大学へは、寄付や共同研究などで外部から獲得した金額や、大学が設置する独自基金などの額に応じて国からの助成金が最長で25年にわたって配分される予定で、研究基盤の強化や若手研究者への支援などに活用することができます。

「国際卓越研究大学」には将来的に大学が独自に基金を運用し、資金を獲得していくことなども期待されていて、大学全体での財務管理の状況や財務戦略なども審査の対象となっています。

文部科学省によりますと、海外の大学では寄付などの資金をもとに大学独自で基金を運用し学生の経済的支援や研究費に充てるなどの取り組みが行われていて、アメリカのハーバード大学では大学独自の基金の運用益から年間およそ20億ドル、日本円でおよそ3000億円が配分され、大学の収入のおよそ4割を占めているということです。

また「国際卓越研究大学」に関連し、ことし10月に施行される国立大学法人法の一部改正をめぐっては、反対する意見も出されています。

改正では大規模な国立大学法人に、中期計画や予算などを決定する「運営方針会議」の設置を義務づけていて、会議の委員は大学法人の申し出に基づき、文部科学大臣が承認した上で学長が任命すると規定されています。

こうした改正について国立大学協会も強い危惧を示す会長声明を出したほか、一部の大学教授などが大学の自治を侵害しているとして廃案を求める署名活動も行いました。