EU 中国製EVに38.1%の関税 上乗せする方針を発表

EU=ヨーロッパ連合は、中国から輸入されるEV=電気自動車について、中国政府からの不公平な補助金を受け、ヨーロッパの企業に損害を与えるおそれがあるとして、暫定的に最大で38.1%の関税を上乗せする方針を発表しました。中国側は強く反発しています。

EUの執行機関、ヨーロッパ委員会は12日、中国から輸入されるEVについて、すでに課している10%に加え、暫定的に関税を上乗せする方針を明らかにしました。

上乗せは最大で38.1%で、中国当局との協議で状況が改善しなければ、7月4日以降、発動するとしています。

対象となるのは、中国メーカーに加えて、中国で製造する欧米メーカーも含まれます。

ヨーロッパ委員会は、中国から輸入されるEVが、中国政府からの補助金を受け、EU市場での競争をゆがめているとして、2023年10月から調査を行っていました。

その結果、供給網のあらゆる段階で補助金を受けていることが確認され、こうした車が、EU市場でのシェアを急速に伸ばしていることで、EUのメーカーは価格を引き上げられず損失を出しているとしています。

中国製のEVをめぐっては、アメリカのバイデン政権が5月に、関税を25%から100%に引き上げると発表していて、EUの方針はこれに続くもので、中国側は強く反発しています。

中国外務省「合法的な権益を断固として守る」

EU側の発表に先立って中国外務省の林剣報道官は12日の記者会見で「市場経済の原則と国際貿易のルールに反し、中国とEUの経済貿易協力や世界の自動車生産のサプライチェーンの安定を損ない、最終的にはEU自身の利益を損なうものだ」と主張しました。

そのうえで「われわれはEUに対し、自由貿易を支持し、保護主義に反対するという約束を厳守するよう求める。中国は、あらゆる必要な措置をとってみずからの合法的な権益を断固として守る」と述べ、対抗措置をとることを示唆しました。

中国商務省「断固反対」EUの発表に強く反発 対抗措置を示唆

EU=ヨーロッパ連合の発表を受けて、中国商務省の報道官は「中国は強い懸念と強烈な不満を示し、中国産業界も深く失望するとともに断固反対する」と強く反発するコメントを出しました。

そして、「EU側の行いは、中国のEV=電気自動車産業の合法的な権益を損なうだけでなく、EUを含む世界の自動車サプライチェーンを乱し、ねじ曲げるものだ」と主張しました。

そのうえで、「中国はEUに対し、直ちに誤ったやり方を正すよう求める。中国側はEU側の今後の進展を細かく注視するとともに、あらゆる必要な措置をとり、中国企業の合法的な権益を断固として守る」として対抗措置をとることを示唆しました。

ドイツ政府 関税の上乗せに慎重な姿勢

フォルクスワーゲンなどの大手自動車メーカーを抱えるドイツ政府の報道官は12日の記者会見で「われわれにはさらなる貿易の障壁は必要ない」と述べ、中国のEVに対する関税の上乗せに慎重な姿勢を示しました。

その上でEUが中国当局との協議で状況が改善しなければ、来月4日以降に関税の上乗せを発動するとしていることについて「まだ時間はある。友好的な解決にたどり着くことが望ましい」として、協議を通じて上乗せが回避されることに期待をにじませました。

ドイツの自動車メーカーは中国市場を重視し、EVに関税を上乗せした場合、中国側の報復を受ける可能性を懸念してきました。

ドイツ自動車工業会のミュラー会長は声明を発表し、中国政府の補助金について課題だとの認識を示しながらも、「世界的な貿易紛争のリスクをさらに高める」として自動車産業への影響にあらためて懸念を表明しています。

EU市場での中国製EVのシェアは

ベルギー・ブリュッセルに拠点を置く交通分野の環境NGOは、ことし3月に発表した報告書で中国からEUに輸入されるEVの今後の見通しを示しました。

それによりますとEU市場で販売されるEVのうち、中国から輸入される車の割合は、欧米のメーカーが中国で生産するEVも含め、去年は19.5%でしたが、3年後の2027年には26%になると予測しています。

また、中国のメーカーのEVが占める割合は、去年は7.9%でしたが、3年後には20%にまで伸びる可能性もあるとしています。

環境NGOによりますと、EU市場で販売される中国のメーカーのEVは、ヨーロッパのメーカーに比べて、5%から27%安いということで、仮に関税をいまの10%から25%にまで引き上げれば、車種によっては中国のメーカーのEVがヨーロッパのメーカーのものより高くなると指摘しています。