手すりの巻き込み口付近で首挟まれ80代女性が死亡 西東京市

12日午前、東京 西東京市のスーパーで、80代の女性がエスカレーターの手すりの巻き込み口付近で、首を挟まれた状態で倒れているのが見つかり、病院に搬送されましたが、死亡しました。女性は買い物用の手押し車を利用していたということで、警視庁が詳しい状況を調べています。

12日午前10時半前、西東京市にあるスーパー「オーケー東伏見店」で「エスカレーターに首を挟まれている人がいる」と通報がありました。

救急隊員や警察官が駆けつけたところ、買い物に訪れていた80代の女性がエスカレーターの手すりの巻き込み口付近で、手すりと床の間に首を挟まれた状態で倒れていて、病院に搬送されましたが、まもなく死亡しました。

女性は自身で持ち込んだ買い物用の手押し車とともに1階からエスカレーターに乗り、地下1階のフロアに降りたところで転倒したということです。警視庁が、当時の詳しい状況を調べています。

現場は、西武新宿線の東伏見駅から南西に800メートルほど離れた住宅などが建ち並ぶ地域のスーパーです。

事故の詳しい状況は

警視庁によりますと、亡くなった女性が利用したのは、店の1階から地下1階に向かう下りのエスカレーターです。

このエスカレーターは大人2人が横に並ぶことができない幅の狭いタイプでした。

女性は自身で持ち込んだ買い物用の手押し車とともにエスカレーターに乗ります。

しかし、何らかの原因で降り口付近で転倒し、進行方向に向かって左側の手すりの巻き込み口付近で手すりと床の間に首を挟まれたとみられます。

当時、女性はあおむけに倒れていて、手押し車は近くにあったということです。

50代の買い物客女性「事故の原因を究明を」

買い物客の50代の女性は「お店の人が『階段で移動してください』と誘導していたので、何があったのだろうと思ったら警察官から事故があったと聞きました。最近オープンしたスーパーで、エスカレーターも使っていたので驚きました。事故の原因を究明して再発防止につなげてもらいたいです」と話していました。

別の買い物客の80代の女性は「同年代の人が亡くなったと聞いて、ひと事ではないと思いました。ふだんからエスカレーターを利用する際は気をつけていますが、事故があったので改めて気をつけるようにしたいです」と話していました。

“高齢者は事故に注意を” 国民生活センターが呼びかけ

高齢者を中心にエスカレーターを利用中の事故が相次いでいることから、国民生活センターはリーフレットを作って注意を呼びかけています。

この中では、エスカレーターに乗ろうとしてステップを踏み外し後ろ向きに転倒して後頭部を打撲した80代女性のケースや、両手に荷物を持ったまま乗ってバランスを崩し頭部を打撲した80代女性のケースが紹介されていて、高齢者は加齢に伴って平衡感覚が衰えバランスを崩しやすくなっていることからエスカレーターを利用する際は手すりにしっかりつかまるよう呼びかけています。

また、歩行につえが必要な人が後ろから上がってきた人に接触され転倒するなど高齢者以外でも事故が起きているとして、歩行に補助が必要な場合や両手に荷物を持っている場合はエレベーターを利用するよう呼びかけています。

エスカレーターの事故 死亡や大けがも

国土交通省によりますとエスカレーターではこれまでにも死亡したり大けがしたりする事故がたびたび発生しています。

ことし3月26日にはJR水戸駅のエスカレーターの降り口で、72歳の男性が手すりが巻き込まれる部分に上着のすそが挟まれた状態で倒れているのが見つかり、その後、死亡が確認されました。

また、国土交通省が2010年から去年5月末までに全国の自治体などから報告を受けたエスカレーター事故は54件あり、中には死亡したり大けがしたりしたものもあります。

このうち、2020年3月13日には神奈川県で点検作業をしていた人がエスカレーターの階段部分を外した状態で動かして作業していたところ、誤ってその中に転落し、挟まれて死亡しました。

また、2017年7月10日には高松市の量販店で車椅子に乗っていた妻と、付き添いの夫がエスカレーターから降りようとした際に転倒し、後ろにいた利用者が巻き込まれて死亡しました。

このほかにも去年5月29日には都内で幼児がエスカレーターの手すりに手を挟まれて軽いけがをしたほか、おととし7月21日には大阪府内で運転中のエスカレーターの手すりだけが停止し、バランスを崩した利用者が転倒して大けがしました。

国土交通省は西東京市の事故について自治体に詳しい状況を確認しているということです。

利用時の注意点は

エスカレーターのメーカーなどでつくる日本エレベーター協会は、エスカレーターは使い方を誤った場合、利用者が死亡したり大けがしたりすることがあるとして適切に利用するよう呼びかけています。

日本エレベーター協会やメーカーのホームページによりますと、エスカレーターを利用する場合は自分がバランスを崩したり、他の利用者を転倒させたりするおそれがあるため、歩いたり走ったりしないことが大切です。

また、エスカレーターが思わぬ原因で急停止した場合に落下や転倒事故につながる危険があるため、ベビーカーや手押し車、車いすなどを乗せることは禁止されています。

さらに、踏み段のすき間や手すりなどに着ている服が巻き込まれると事故につながるおそれがあり、大変危険です。

ロングスカートや着物といった丈の長い衣類やピンヒールの靴などは巻き込まれないよう注意が必要だとしています。

エスカレーターには万が一、転倒事故などが発生した場合に速やかに運転を停止できるよう、乗降口付近に非常停止のスイッチが設けられています。

ただ、突然、運転が止まると他の利用者がバランスを崩して二次被害につながるおそれがあるため緊急時以外は触らないようにするほか、必要なときは周囲に緊急停止することを伝え、手すりにつかまるよう指示してからスイッチを押すことが大切だということです。

専門家“正しく使わないと危険 改めて認識することが重要”

エスカレーターの利用者の事故について、江戸川大学の斗鬼正一名誉教授は「エスカレーターは階段と全く違う機械であり、正しく使わないと危険だということを改めて認識することが重要だ。手すりにつかまり歩かずに利用するつくりになっているので、ルールを守ることを徹底してほしい。特に乗り降りの際は事故が起きやすいので、高齢者や子どもなどがいないか周りでも見守ってほしい」と話しています。