東京 国立 分譲マンション解体問題 最終判断の検討は先月から

来月に引き渡しが迫っていた東京 国立市内の分譲マンションが建物周辺への影響を理由に解体される見通しとなった問題で、事業者は現地調査などを踏まえたうえで、最終的な判断に向けた検討を先月から始め、今月3日の決定に至ったことが分かりました。

国立市中2丁目の分譲マンション「グランドメゾン国立富士見通り」は、来月、契約者に引き渡されることになっていましたが、建設事業者の「積水ハウス」は「建物の周辺への影響に関する検討が不十分だった」として今月3日に事業の中止と解体を決定し、翌日に国立市に届け出ました。

今回の判断に至った経緯について積水ハウスは取材に対し、「去年1月の着工後も住民から景観などに関する要望や意見が寄せられる中、現地確認や調査を進めてきた。事業の継続の可否も含めてこれまで検討してきたが、最終的な判断に向けた検討は先月から始めた」と説明しました。

そして、決定の時期については「検討の結果、このタイミングになった」としています。

一方、今回の判断については「計画の段階から法律や条例にのっとって進め、法令違反などはないが、最終的にはそうしたプロセスによらない決定をした」と話しています。

積水ハウスは今後、契約者の個別の事情を踏まえ、金銭面の補償を含め、できるかぎりの対応を進めていくとしています。

国立市議会 解体理由の説明 早急に行うよう市に要望

今回の問題を受け、国立市議会は、解体の理由などについて事業者から近隣住民に丁寧な説明を早急に行うよう求めることを市に要望しました。

市議会議員の有志でまとめた要望書は、10日に国立市の永見理夫市長に手渡されました。

この中では「今般、当該マンションが取り壊されるとの情報を得たが、詳細については近隣住民に説明がなされていない状況のようだ」としたうえで、住民の不安を払拭(ふっしょく)するため、解体の理由や今後の安全面、それに環境面への対応について事業者から近隣住民に丁寧な説明を早急に行うよう求めることを要望しています。

市議会によりますと、要望に対し永見市長は「近く対応したい」という考えを示したということです。

不動産コンサルタント“裁判などのリスクあると判断したのでは”

不動産コンサルタントの長嶋修さんは、引き渡し直前での今回の対応について「マンション建設の慣例として日照や眺望などについて周辺住民に説明会などを行って交渉を進めていくが、最後まで折り合いが付かず、裁判などに発展するリスクがあると判断したのではないか。金銭的な損失をとるか、企業としての評判を汚してしまう方をとるか、という天秤の中で今回の決断に至ったのではないか」と話していました。

また、契約者への補償については「一般的に契約書上は、手付金の倍の金額を契約者に返すことになるが、今回は引き渡し間近ということもあって自宅を売却したり、賃貸契約を解除した人がいる可能性もあるので、そうしたことに配慮して、見舞い金やおわび金などいろんな名目でさらなる金銭的な補償が発生する可能性はある」と指摘しています。