引き取り手のない遺体のトラブル“実態調査し対策検討”厚労相

亡くなったあと遺体を引き取って火葬する親族などがいない引き取り手のない遺体が増え、自治体の負担が増加し親族などとのトラブルも起きていることについて、武見厚生労働大臣は「引き取り手がない遺体が安らかに弔われる環境づくりが重要だ」として今年度、実態調査を行ったうえで対策を検討する考えを示しました。

引き取り手がない遺体は法律に基づいて自治体が火葬などを行いますが、NHKが全国109の自治体にアンケート調査したところ、自治体が火葬した人の数は2023年度までの10年間分の記録が残る62の自治体で2倍以上に増え、こうした中で火葬後に親族がいることが分かり苦情を受けるなどのトラブルが過去5年余りで少なくとも14件起きていたことが分かりました。

自治体の負担が増える一方、親族調査をどの範囲まで行えばいいかや、火葬はいつ行うべきかなど国による統一的なルールはなく、アンケートでは全体の9割の自治体が「国によるルールの整備が必要だ」と回答しています。

こうした問題について、武見厚生労働大臣は閣議のあとの記者会見で「引き取り手がない遺体が安らかに弔われるような環境づくりが重要だ。今年度実施する遺体の取り扱いの実態や課題についての調査を踏まえ、どのような対応が可能か検討を進めていきたい」と述べ、実態調査したうえで具体的な対応について検討する考えを示しました。

親族がいるのに2日で火葬・納骨も

おととし3月、茨城県鹿嶋市で一人暮らしをしていた近藤芳子さん(当時71)は急な血管の病気で、隣の神栖市の病院に運ばれて亡くなりました。

病院では、芳子さんに家族がいるかわからないとして、翌日神栖市に連絡し、市の担当者が自宅のある鹿嶋市に確認したところ「海外に住む長女がいるが、連絡がとれず、早急に対応できる親族は確認できない」という回答が寄せられたということです。

遺体の引き取り手がいない場合やわからない場合、法律では自治体が火葬すると定められていることから、神栖市では芳子さんを速やかに火葬し、遺骨は市内にある無縁墓地に納めたということです。

芳子さんが亡くなってから2日後、神栖市が連絡を受けてから1日後のことでした。

ところが、海外にいた長女は、芳子さんと連絡がとれなくなったことをきっかけに警察を通じて亡くなった事実を知り、すぐに帰国して神栖市役所を訪ねました。

そこで、市の職員から芳子さんはすでに火葬したことや無縁墓地への納骨が済んだことを伝えられました。

その後、遺骨は返還されることになりましたが、長女は、火葬までの期間が短いことや、芳子さんにはほかにも親族がいたのに連絡なく納骨まで済ませたなどの対応に納得できず、経緯の説明を求めたということです。

これに対し、神栖市では「現状においては、すぐに対応できる『身寄りはない』と判断し、葬儀に向けた手配を進めた。訃報を伝えるための親族調査を準備していたところだった」と回答したものの、長女は当時の市の対応に今も疑問を抱いています。

芳子さんの長女、近藤由理さんは「最後は母親の顔を見てきちんと送ってあげたいと思っていましたが、それがかなわず、ずっと信じられない気持ちが残っていて、おそらくこれからも消えません。なぜそんなに短い間に火葬しなければならなかったのかは今も疑問で二度とこのような思いをする人が出ないように対応を考えてほしい」と話しています。

神栖市では、NHKの取材に対し、「親族と連絡を取ることができず、火葬を親族が行うことができなかったことは残念ですが、当該法律に基づき対応したところであり、ご理解いただきたい」と説明しています。