心臓移植手術見送り 去年 全国で16件 医療機関側の体制理由に

心臓の移植手術をめぐり、医療機関側が受け入れ体制を理由に患者への移植を見送ったケースが去年1年間に全国で16件あったことが、日本心臓移植学会の調査でわかりました。提供された心臓は、ほかの医療機関で別の患者に移植され、廃棄されたケースはなかったとみられるということですが、学会は「医療機関どうしの連携を深めるなど、対策が必要だ」としています。

日本心臓移植学会は、心臓の移植手術を行っている全国の11の医療機関を対象にアンケート調査を行い、去年1年間に実施した心臓移植の件数と、受け入れ体制を理由に移植を見送った件数をたずねました。

その結果、去年1年間に提供された心臓、115件のうち、手術ができる医師やスタッフがそろわなかったり、同じ日に別の移植手術があり、ICUが空かなかったりといった理由で移植を見送ったケースが、合わせて16件あったことがわかりました。

医療機関別では
▽東京大学医学部附属病院が15件
▽国立循環器病研究センターが1件となっています。

実際に移植を行った件数は
▽国立循環器病研究センターが32件
▽東京大学医学部附属病院が25件で
学会は、一部の医療機関に移植手術が集中していることが背景にあるとしています。

学会によりますと、提供された心臓は、移植を見送った医療機関とは別の医療機関で、別の患者に移植が行われ、廃棄されたケースはないとみられるということです。

また、移植が見送られた16人のうち、10人はその後、別の機会に移植を受けられたほか、現在も移植を待つ6人の中に、亡くなった人はいないということです。

日本心臓移植学会の澤芳樹代表理事は「移植を待つ患者も多く、医療機関側の理由で見送らざるをえない状態は改善しなければならない。近くにある別の医療機関で移植を行ったり、不足しているスタッフを派遣したりするなど、医療機関どうしの連携を深めるほか、心臓移植を実施できる医療機関を増やすといった対策を国に提言していきたい」と話しています。