米FRB 金融政策決定会合 年内の利下げ回数の想定が焦点

円相場に大きな影響を及ぼすアメリカのFRB=連邦準備制度理事会の金融政策を決める会合が11日から始まります。先週・7日金曜日に発表された雇用統計で、労働需要が底堅いことが示され、インフレの収束が明確には見通せないなか、年内の利下げ回数の想定をどう示すのかが焦点です。

FRBは11日から2日間、金融政策を決める会合を開きます。

アメリカでは景気の減速を示す経済指標も出ています。

一方、物価の上昇率がFRBの目標の2%を上回る状況が続いていることから市場ではFRBが7会合連続で政策金利を据え置くという予想が95%以上を占めています。

焦点は会合の参加者が示す今後の政策金利の見通しです。

去年12月とことし3月に発表された見通しでは年内に3回の利下げが行われることが想定されていました。

先週・7日金曜日に発表された5月の雇用統計では農業分野以外の就業者の伸びが市場予想を大幅に上回り、労働需要が底堅いことが示され、インフレの収束が明確には見通せない状況です。

こうしたなかで、会合の参加者が政策金利の見通しをどのように示すのかに関心が集まります。

見通しをもとにした年内の利下げ回数の想定が減ればアメリカと日本の金利差縮小には時間がかかると市場で受け止められ、再び円安圧力がかかる可能性があります。

また、パウエル議長が会合終了後の記者会見で今後の利下げの方針やインフレの現状についてどう発言するのかも注目されます。

専門家「景気はいまも強さを維持している」

FRBの金融政策の見通しや景気の現状についてアメリカみずほ証券のスティーブン・リシュートチーフUSエコノミストに聞きました。

Q.インフレの根強さを一貫して指摘されてきましたが4月以降、弱い経済指標も目立ち始めています。

景気やインフレの動向に変化はみられますか。

A.確かに製造業の景況感を示す指標は予想より少し弱いものでしたが、サービス業が含まれる非製造業の景況感を示す指標は予想より強いものでした。

このため、景気が減速し始めているという見方には疑問がありますし、いまも強さを維持していると考えています。

Q.サービス業、サービス消費の現状をどう見ていますか。

A.アメリカでは最近、個人消費の多くの割合を(旅行や外食などの)サービス消費が占めるようになっています。

モノの価格は、これまで下落してきましたが、サービス価格の上昇率は4%から4.5%程度で推移しています。

このことは景気の先行きへの自信を高めることになりますが、その一方で、インフレ率が3%台から抜け出せずFRBが目標とする2%には届かないことを示唆しています。

Q.なぜ、アメリカ経済は予想を上回る強さを維持しているのでしょうか。

A.理由は2つあります。

ひとつは、連邦政府の財政政策が依然として非常に景気刺激的であるためです。

11月の大統領選挙で誰が当選しても多額のお金を使うことが予想され、この傾向は変わらないでしょう。

減税を行うか、減税と社会保障政策を組み合わせるか、違いはそれだけです。

アメリカ経済が堅調なもう1つの理由は、現在の政策金利の水準が多くの人が考えるほど金融引き締め的ではないことがあります。

現在の政策金利は、極端に低かった水準から上昇してきましたが、(FRBの参加者は)利下げによって2026年には金利がいまよりおよそ2ポイント下がるという見通しを示しています。

この水準は(その時点の経済状況に対して)まったく金融引き締め的ではありません。

アメリカは家計も企業も銀行も財務状況が健全です。

景気を刺激する積極的な財政政策の一方、金融政策は景気を抑え込むのに十分な水準ではないため、アメリカ経済の堅調さが続いているのです。

Q.年内にFRBは何回利下げを行うと考えますか。

A.年内の利下げは予想していません。

(景気後退を招かないために)FRBが本当に本当に利下げを望んでいるのは知っています。

利下げしたくてうずうずしているという人もいるでしょう。

しかし、私の考えでは、経済の状況がその機会を与えることはないと思います。

Q.前回、金融政策を決める会合の前に非常に強い経済指標が相次いでいましたが、パウエル議長は記者会見で利下げに積極的な“ハト派”でした。

一方で、その3週間後に公開されたこの会合の議事録では多くのメンバーがタカ派的だったことが明らかになっています。

この隔たりをどう受け止めますか。

A.パウエル議長は委員会の中ではハト派的な傾向があると思います。

ただ、議長にはFRBの決定を市場に伝える責任があります。

この点においては記者会見で(委員会全体のトーンを伝えなかったという点で)彼の仕事はお粗末だったと考えています。