イスラエル軍 人質4人救出 ハマス側“多くの住民死亡”と反発

イスラム組織ハマスによるガザ地区の当局は、イスラエル軍が人質4人を救出したとするガザ地区中部での作戦によって住民210人が死亡したと主張し反発を強めています。また、停戦や人質解放に向けた交渉の仲介役を担うエジプトがイスラエルを非難する声明を発表するなど、交渉にも影響を与える可能性があります。

イスラエル軍は8日、ガザ地区中部のヌセイラトで作戦を実施し、ハマスにとらえられていた人質4人を救出したと発表しました。

イスラエル政府は救出された人たちが家族と再会する様子を写した映像や写真を公開して成果を強調し、ネタニヤフ首相は声明で「人質全員を取り戻すまで手を緩めることはない」と述べハマスへの攻勢を強める構えを示しました。

一方、パレスチナの地元メディアなどはイスラエル軍が救出作戦を行ったとする時間帯に、ヌセイラトなど中部で激しい攻撃が行われたと報じ、多数のけが人が病院に運び込まれている様子などを伝えています。

ハマスによる地元当局は住民210人が死亡し、400人以上がけがをしたと主張したうえで「イスラエル軍は野蛮で残忍な攻撃を行い、民間人を直接標的にした」と反発を強めています。

また、交渉の仲介役を担うエジプトの外務省は8日「イスラエルの攻撃を最も強いことばで非難する」などとする声明を発表していて、停戦や人質解放に向けた交渉にも影響を与える可能性があります。

米軍 ガザ地区への人道支援物資搬入再開を発表

アメリカ軍がガザ地区の海岸に設置した浮き桟橋は一部が破損したため人道支援物資の搬入が中断されていましたが、アメリカ中央軍は8日、物資の搬入が再開されたと発表しました。

8日にはガザ地区におよそ500トンの物資が搬入され、搬入が始まってからこれまでに1500トンを超える物資がガザ地区に届けられたとしています。

ただ、海上の天候などの制約を受ける浮き桟橋は人道状況を改善させる決め手にはならず、イスラエル軍によるラファへの地上作戦によって検問所が閉鎖されるなどして物資の搬入が滞る中、深刻な人道状況が続いています。

イスラエル政府 ノアさんが父親と再会した映像公開

イスラエル政府は4人のうち音楽イベントに参加していて人質になったノア・アルガマニさんの救出後の様子だとする映像を公開し、ノアさんは父親のヤコブさんと抱き合って再会を喜び合っています。

救出された1人ノアさんの父親は去年来日

今回、イスラエル軍が救出したと発表した4人の人質の1人、ノア・アルガマニさんの父親のヤコブさんは、去年12月にイスラエル政府の事業で来日し、人質の早期解放への協力を日本でも訴えていました。

ノアさんはヤコブさんの一人娘で、去年10月7日、ボーイフレンドらとガザ地区との境界の近くで開かれていた音楽イベントに参加しているときにハマスの襲撃を受けてガザ地区に連れ去られました。

ハマスが撮影したとみられる映像ではバイクに乗せられたノアさんが手を伸ばして助けを求める様子が確認されていました。

ノアさんの母親・リオラさんは、がんを患っていて医者からは余命が長くないと言われていて、父親のヤコブさんは来日した際、「妻にとって、たった1つの願いはノアを一目みたい、ということだけです」と話し、一刻も早くノアさんが帰ってくることを願っていました。

またヤコブさんは「戦争に勝者はいません。戦争が続くかぎり、双方に死者が出ます。ガザでも子を亡くした親が私たちと同じように、泣くことになります。私は停戦と対話によってのみ、解決ができると思っています」とも話していました。

ロイター通信 ガザ地区中部デルバラハの映像配信

映像では、辺りをつんざくような大きな音がしたあと、攻撃を受けたとみられる付近から黒い煙がもくもくとあがる様子が確認できます。さらに、爆発音や「タタタタタ」と銃撃するような音が何度も聞こえます。また病院で撮影された映像では、多くの人が集まっている様子や、救急車でけが人が次々と運ばれてくる様子が確認できます。

攻撃があったとき、ヌセイラト難民キャンプにいたという人は「特殊部隊がヘリコプターでやって来て、白い車も1台もあった。ヘリコプターは人々に向けて攻撃してきた。救急車1台に10人のけが人を乗せた。なんとか路地を通って外に出ることができた」と当時の様子を話していました。また、2人のいとこが死亡したという人は「彼らはなにもしていなかった。家にいただけだ」と話していました。

ガザ地区の保健当局は8日、多くの死者やけが人が搬送された病院では、何十人ものけが人が床に横たわっているほか、医薬品や燃料の不足に直面していると窮状を訴えています。

米仏首脳 人質解放を歓迎も停戦を促す

フランスのマクロン大統領は、バイデン大統領との首脳会談のあとの記者発表で「イスラエル軍が4人の人質を解放したことを歓迎する」と述べました。

一方で「私たちは、即時停戦が実現し、政治的解決への展望が開かれることを望む。ラファの人道状況は受け入れられず、イスラエルが人道物資の搬入の経路を完全に開かないことも容認しがたい」として、イスラエル側に苦言も呈しました。

また、バイデン大統領は人質の解放を歓迎しつつ、「人質全員が帰還し、停戦が成立するまで、私たちは努力を止めない」と述べ、停戦の合意に向けて外交努力を続ける考えを示しました。