【詳細】イスラエル・パレスチナ 中東情勢(6月8日)

イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦と人質解放に向けた交渉に進展が見られない中、アラブ系アメリカ人などが即時停戦を求め、首都ワシントンのホワイトハウス前で大規模な抗議デモを行いました。

※中東情勢に関する日本時間6月8日の動きを随時更新してお伝えします。

抗議デモはアラブ系アメリカ人の団体が呼びかけたもので8日、全米各地から数千人が集まり、ホワイトハウス前の広場を埋め尽くしました。

参加者たちは「虐殺をやめろ」とか「イスラエルへの軍事支援をすべて止めろ」などと書かれたプラカードを掲げて即時停戦を求めるとともに、イスラエルへの軍事支援を続けるバイデン政権の対応を厳しく非難しました。

デモに参加した男性「イスラエルを支援すべきではない」

デモに参加した男性は「血塗られた戦闘が終わり、子どもの犠牲がなくなることを望んでいる。バイデン大統領には停戦に向けて動いてほしい。私たちはイスラエルを支援すべきではない」と話していました。

デモに参加した女性「どれだけ悲惨か 言い表すことができない」

また、参加した女性は、8日も多数のガザ地区の住民が犠牲になったことについて「どれだけ悲惨かことばでは言い表すことができない。戦闘が始まった8か月前にすでに越えてはいけない一線を越えてしまっていた」と話していました。

アメリカ国内では、イスラエルを支持する声も根強い一方、ガザ地区の住民の犠牲が増えるにつれ、イスラエルへの軍事支援を継続しているバイデン政権への反発も強まり、秋の大統領選挙にも影響を与える可能性が指摘されています。

イスラエル軍 人質4人救出 ハマス側“多くの住民死亡”と反発

イスラエル軍は8日午前、ガザ地区中部のヌセイラトで作戦を実施し、人質4人を救出したと発表しました。

イスラエル政府は、救出された人たちが家族と再会し、喜びあう姿を写した映像や写真を公開し、成果を強調していて、ネタニヤフ首相も声明で「イスラエルがテロに屈しないことを証明した。人質全員を取り戻すまで手を緩めることはない」と述べハマスへの攻勢を強める構えを示しています。

一方、パレスチナの地元メディアなどはイスラエル軍が救出作戦を行ったとする時間帯に、ヌセイラトなど中部で激しい攻撃が行われたと報じ、多数のけが人が病院に運び込まれている様子などを伝えています。

ガザ地区の病院の担当者は、この攻撃で少なくとも55人が死亡したと発表したほか、ハマスによる地元当局は210人という多くの住民が死亡したと主張しています。

地元当局は「イスラエル軍は野蛮で残忍な攻撃を行い、民間人を直接標的にした」などとする声明を出し、反発を強めていて、停戦や人質の解放に向けた交渉にも影響を与える可能性があります。

人質の1人の父親は去年来日 解放に向け働きかけ

今回、イスラエル軍が救出したと発表した4人の人質の1人、ノア・アルガマニさん(25)は父親のヤコブさんなどが、去年12月にイスラエル政府の事業で来日し、解放に向けた働きかけを訴えていました。

ヤコブさんの一人娘のノアさんは、去年10月7日、ボーイフレンドらとガザ地区との境界の近くで開かれていた音楽イベントに参加しているときにハマスに襲撃されました。

ハマスが撮影したとみられる映像ではバイクに乗せられたノアさんが手を伸ばして助けを求める様子が確認されていました。

ノアさんの母親・リオラさんは、がんを患っていて医者からは余命が長くないと言われていて、父親のヤコブさんは来日した際に「妻にとって、たった1つの願いはノアを一目みたい、ということだけです」と話し、一刻も早いノアさんの解放を求めていました。

イスラエル政府 “救出された人質が父親と再会”映像公開

イスラエル政府は4人のうち音楽イベントに参加していて人質になったノア・アルガマニさんの救出後の様子だとする映像を公開し、ノアさんは父親のヤコブさんと抱き合って再会を喜び合っています。

ロイター通信 ガザ地区の映像配信 被害の様子

ロイター通信は、8日にガザ地区中部デルバラハで撮影された映像を配信しました。

映像では、辺りをつんざくような大きな音がしたあと、攻撃を受けたとみられる付近から黒い煙がもくもくとあがる様子が確認できます。さらに、爆発音や「タタタタタ」と銃撃するような音が何度も聞こえます。また病院で撮影された映像では、多くの人が集まっている様子や、救急車でけが人が次々と運ばれてくる様子が確認できます。

攻撃があったとき、ヌセイラト難民キャンプにいたという人は、「特殊部隊がヘリコプターでやって来て、白い車も1台もあった。ヘリコプターは人々に向けて攻撃してきた。救急車1台に10人のけが人を乗せた。なんとか路地を通って外に出ることができた」と当時の様子を話していました。また、2人のいとこが死亡したという人は、「彼らはなにもしていなかった。家にいただけだ」と話していました。

ガザ地区の保健当局は8日、多くの死者やけが人が搬送された病院では、何十人ものけが人が床に横たわっているほか、医薬品や燃料の不足に直面していると窮状を訴えています。

米メディア “学校空爆に米国製の精密爆弾使用”の見方報じる

イスラエル軍は7日、ガザ地区北部にある国連の学校の敷地内を空爆し複数のハマスの戦闘員を殺害したと発表しました。

戦闘員が敷地内の拠点から攻撃を仕掛けようとしていたなどと主張していますが、パレスチナの地元メディアは学校は避難所として使われていて少なくとも3人が死亡し、15人がけがをしたと伝えています。

またイスラエル軍は前日の6日にも、中部にある国連の学校への空爆を行ったと発表し、複数のハマスの戦闘員を殺害したと主張していますが、ガザ地区の保健当局は子どもと女性を含む40人が死亡したとしています。

この空爆について複数のアメリカメディアは現場で撮影された映像の分析からアメリカ製の精密爆弾が使用されたという専門家の話を相次いで報じています。

このうちニューヨーク・タイムズは6日、ここ数か月の間、アメリカがイスラエルに対して大型爆弾ではなく小型の精密爆弾を使用するよう働きかけてきたとした上で、「イスラエルはより小型の爆弾を使うようになっているが、民間人がいると分かっている場所を意図的に狙っている」とする軍事専門家の話を伝えています。

ガザ地区の保健当局は7日、これまでの死者が3万6731人にのぼったとしていてイスラエルへの軍事支援を続けるアメリカへの批判も強まることが予想されます。

米ブリンケン国務長官 来週エジプトなど訪問へ

アメリカ国務省は7日、ブリンケン国務長官が来週10日から12日にかけて、イスラエルや停戦などをめぐる交渉の仲介役を担うエジプトとカタールそれにヨルダンを訪問すると発表しました。

歴訪中、各国の政府要人と会談し停戦と人質解放の実現に向けた協議を進展させたい考えです。

またヨルダンでは、ガザ地区への人道支援に関連する会議に出席する予定で、支援の拡充に向けて働きかけることにしています。

国連 イスラエルを「子ども権利を侵害した国」に指定

国連は、世界各地の武力紛争がもたらす子どもへの影響を調査し、報告書としてまとめていて、この中で、子どもの権利を著しく侵害した国を指定しリストにして公表しています。

去年の調査結果をまとめた最新の年次報告書は、6月中旬に公表される予定ですが、国連のデュジャリック報道官は7日の定例会見で、子どもの権利を著しく侵害した国のリストに新たにイスラエルを加えたとイスラエルの国連大使に電話で伝えたことを明らかにしました。

このリストには、内戦が続く中東のシリアやイエメンなどがあげられているほか、去年は、ウクライナに軍事侵攻を続けるロシアが加えられました。