能動的サイバー防御“早期に法案を” 首相がデジタル相に指示

サイバー攻撃を受ける前に対抗措置をとる「能動的サイバー防御」の導入に向け、政府の有識者会議が初会合を開き、岸田総理大臣は可能なかぎり早期に必要な法案をまとめるよう、担当の河野デジタル大臣に指示しました。

有識者会議の初会合には、元アメリカ大使の佐々江賢一郎氏や筑波大学准教授の落合陽一氏など17人のメンバーに加え、岸田総理大臣や河野デジタル大臣らが出席しました。

岸田総理大臣は「サイバー対応能力の向上は現在の安全保障環境に鑑み、ますます急を要する課題だ。かったつに議論し、成果を報告してもらいたい」と述べ、可能なかぎり早期に「能動的サイバー防御」の導入に必要な法案をまとめるよう河野大臣に指示しました。

これを受けて河野大臣は有識者会議に対し、数か月以内に意見集約を図るよう求めました。

安全保障環境が厳しさを増す中、政府が導入を目指す「能動的サイバー防御」は、国内の通信事業者から情報提供を受け、攻撃元と疑われるサーバーを検知することや、攻撃を受ける前にサーバーに侵入し、無力化することなどが想定されています。

今後の検討では、防御措置の具体的なあり方に加え、一連の対応が、憲法が保障する「通信の秘密」などに抵触しないよう、どのように整合性をとっていくのかが論点となります。

落合陽一氏「産官学が連携し整理していくことが必要」

落合陽一氏は記者団に対し、「『通信の秘密』や国民一人一人の権利の保護と、安全保障の問題が同時に関わってくることになるが、適切に対処できるようにしておくことは生活のインフラを保つうえで非常に重要だ。産官学が連携し、同じ地平に立って考えられるよう議論を続けながら整理していくことが必要だ」と述べました。

河野デジタル相「対応能力の向上は急を要する課題」

河野デジタル大臣は、閣議のあとの記者会見で「世界各国でサイバー攻撃が激しくなり、海外の政府と気脈を通じて行われているものもある中で、対応能力の向上は急を要する課題だ。岸田総理大臣の指示を踏まえ、可能なかぎり早期の法案の取りまとめに向け、しっかり努力していきたい」と述べました。

林官房長官「早期に法案示したい」

林官房長官は閣議のあとの記者会見で、「会議では今後の検討の進め方や重点的に検討すべき点などについて、貴重な意見をいただいた。引き続き充実した検討が行われることを期待したい。法案の国会への提出時期は現時点では未定だが、会議での取りまとめの結果などを踏まえ、可能なかぎり早期に法案を示したい」と述べました。