トヨタ生産停止受け 地元の地方銀行が実態把握進める 愛知

大手自動車メーカーなど5社が国の認証試験で不正を行っていた問題で、トヨタ自動車は、6日朝から対象の車種の生産を停止しました。

今回の生産停止を受けてトヨタ自動車が本社を置く愛知県では、地元の地方銀行が顧客の自動車部品メーカーにどの程度の影響が及ぶか、実態の把握を進めています。

名古屋市に本店を置く「名古屋銀行」では、6日午後、「自動車サプライチェーン支援室」のメンバーが融資などを行っている顧客の部品メーカーに電話をかけてヒアリングを行っていました。

聞き取りは各支店でも進めていて、生産停止の車種の部品を納めているメーカーからは「受注が減少し、売り上げが1か月で2割減少する」とか、「生産が止まる車種は月9000台以上生産されていて、その部品を納めているので影響が大きい」といった回答も寄せられたということです。

このため銀行では大きな影響が出る部品メーカーに対しては、生産が停止している間にも必要となる人件費や設備の維持費などについて、個別に資金繰り支援を検討したいとしています。

名古屋銀行 法人営業部 自動車サプライチェーン支援室の近澤保室長は「生産再開がいつになるかもわからず、影響がどこまで大きくなるか不安に思っている企業もある。銀行としても当面の資金繰り支援に万全を期していきたい」と話していました。

生産停止3車種の部品手がける宮城県の工場では

生産が停止されたトヨタの3車種の部品を手がける宮城県色麻町にある自動車部品メーカーの工場でも対象の車種の部品の生産と出荷を6日から停止しました。

生産停止が長引けば経営への影響は避けられないとして、来週以降、今後の補償などについて話し合いを予定しています。

宮城県色麻町にある自動車部品メーカーの工場では、トヨタの2次下請けとして、40人余りの従業員が車のプラスチックの部品を生産しています。

この工場では国の認証試験で不正があったトヨタの3車種の部品も手がけていて、トヨタの工場での生産停止を受けて、この工場でも6日から対象の車種の部品の生産と出荷を停止しました。

生産停止の影響はおよそ1万台分、ひと月の売り上げの3分の1にあたるとみています。

松本光弘工場長は「停止の連絡を受けたときは正直『ドキッ』とした。1か月の売り上げの3分の1がそのまま無くなることになるので、影響はかなり大きい。生産停止の期間が本当に今月いっぱいなのか、その先がまだ見えないが、仮に延期になった場合より厳しくなると思う」と話していました。

生産停止になった一部の車種の部品の組み立ては、下請けに入っている別の会社の社員およそ15人が行っていますが、部品の生産停止で仕事が無くなったため、再開までのあいだ、休みをとってもらっています。

今後の補償などについては来週以降、取引先を通じて協議することにしています。

松本工場長は「仕事が無くなった人たちが我慢して休んでくれればいいが、生計が成り立たなくなれば、ほかの仕事に移ってしまうおそれもある。補償に関する正確な情報は今のところ何も来ていないので現場の人たちと今後の具体的な話ができていないのが実態だ」と話していました。

トヨタ東日本の工場がある宮城 大衡村長は

不正があった3車種の生産を停止したトヨタ自動車東日本の工場がある宮城県大衡村の小川ひろみ村長はNHKの取材に応じ「残念なことだ。従業員やその家族、それに関連企業の関係者もたくさんいるし、『1か月の生産停止』はちょっと長いとは思う」と述べました。

そのうえで、5日、トヨタ側から直接、謝罪があったと明らかにしたうえで「一刻も早く生産開始をすることで、皆さんに影響がないようにやってほしい。村にある企業は『企業村民』と思っており、信頼関係があるし、これからも関係を作っていきたい」と述べました。

補償や支援が今後の焦点に

部品などを供給する取引先にとっては、トヨタ自動車やマツダからの補償や支援が今後の焦点となります。

▽トヨタが生産を停止した3車種に部品などを供給する取引先の企業は間接的なところも含めて1000社以上ありますが、トヨタは「適切な補償の対応を行う」ととしています。

ただ、具体的な内容は示しておらず、今後、検討する見通しです。

▽マツダは、生産を停止した2車種に部品などを供給する取引先は、直接、取り引きを行う企業だけでもおよそ300社あります。

マツダは「個別の取引状況によって金銭的な補償が必要かどうか検討する」としています。

去年12月以降、国内の4つすべての工場で一時、稼働を停止する事態となったダイハツ工業の認証取得の不正問題では、取引先への補償は現在も完了していません。

ダイハツが直接、補償を行うのは1次下請けの企業で、特に、2次下請けから先の間接的な取引先については、調整に時間がかかっている実態があります。

ある3次下請けの企業は、NHKの取材に対し、現在も補償の話は具体的に進んでいないとしています。

トヨタとマツダによる補償や支援がどのように進められるかが取引先の中小企業など地域経済にとって今後の大きな焦点となります。