梅の収穫期なのに… “近年まれに見る不作” 価格にも影響が

6月6日は「梅の日」です。
例年、梅が収穫の時期を迎えますが、ことしは状況が違います。
全国各地で梅が不作となっていて、実の数がいつもの年の3割ほどに落ち込んでいる地域も。何が起きているのでしょうか。

日本一の産地 和歌山では

全国一の梅の産地、和歌山県では梅の収穫量は大幅に減少する見通しです。

和歌山県やJAなどでつくる協議会によりますと、県内の梅の主力品種「南高梅」のことしの収穫量は、暖冬の影響で過去10年で最も少なくなる可能性が高いということです。

和歌山市にある産直市場では、先月下旬から「南高梅」などの販売を始めていますがことしは、1キロあたりの平均価格が例年と比べて200円から300円ほど高くなっているということです。

販売する量も、例年の6割から7割ほどに減っていて、店では、ことしは例年より早く梅が売り切れる可能性があるとして、早めに買い求めるよう呼びかけています。

店を訪れた和歌山市の70代の男性は「毎年、梅酒をつけているので買いに来ましたが、ことしの梅は傷が多く、価格が高いと感じる」と話していました。

「産直市場よってって狐島店」の武石一真店長は「ことしは、傷がついているものも多く、量も少ないので、きれいな梅は大変貴重です。値段も、このまま高い状況が続きそうです」と話していました。

どうして不作に?

和歌山県などでつくる協議会によりますと、県内の梅の主力品種「南高梅」のことしの収穫量は、過去10年で最も少なくなる可能性が高くなっています。

全国一の梅の産地であるみなべ町など8つの自治体では、県と地元のJAなどでつくる協議会が、毎年4月から5月にかけて「南高梅」の木の枝になった実の数などを調べています。

それによりますと、「南高梅」の実の数は、過去10年の平均と比べて少なくなっていて、みなべ町を含む4つの自治体の地域では38%、田辺市を含む4つの自治体の地域では50%にとどまっています。主要な産地であるみなべ町と印南町は、過去10年の平均の31%と特に低くなっています。

ことしは暖冬で梅の開花が早まり、雌しべが短くなるなどしたため、受粉がうまくいかなかったことが原因とみられるということです。

さらに、ことし3月、県内で降ったひょうによって、梅の実が傷つく被害が相次ぎ、品質の低下が懸念されるということです。

全国的に実り悪く

梅の収穫量が日本海側で最も多い福井県でも、「福井梅」として出荷される梅が不作となっています。

梅の栽培が盛んな福井県若狭町周辺の全体の出荷量は去年より3割以上少なく、特に梅酒などに使う「剣先」と呼ばれる品種では6割以上落ち込む見通しです。

関東でも千葉県横芝光町では例年より1週間ほど遅れて実の収穫が始まりましたが、梅林のひとつでは実のつきが例年の10分の1ほどと極端に少なくなっています。

収穫量は不作と言われた去年をさらに下回る見込みだということです。

催しや収穫体験に影響も

埼玉県越生町でもまれにみる梅の不作となっていて、町の野菜の直売所では梅の販売コーナーを縮小し、価格も例年より3割ほど高くなっているということです。

また、町では十分な梅の量を確保できないとして今月9日に開催を予定していた毎年恒例の梅の直売などを行うイベント「梅フェア」を中止することにしました。

また、宮崎県日南市では、梅の収穫体験ができる梅林が無料で開放されていますが、園のひとつでは実の数が例年の3割程度にとどまっているということです。

JA紀州担当者「傷あっても 味はいつも通り」

全国一の梅の産地、和歌山県のJA紀州によりますと、ことしは暖冬などの影響で梅の実をつけない花が多く例年より実の数が少ないうえ、3月に降った「ひょう」で傷が付いてしまった実も多いということです。

JA紀州みなべ営農販売センターの山崎竜麻さんは「ダブルパンチになっています。全体的に見て、梅の実がかなり少ない状況です」と話しています。

例年、梅を出荷する際には、最も品質が高いことを示す「秀」と次の等級の「○秀」の梅だけを扱っていましたが、ことしはその下の等級の「良」を新たに加えて出荷量を確保しようとしているということです。

山崎さんは「傷があると見た目は少し悪くなってしまいますが、味はいつも通りです。あるものは出して、みなさんに届くようにしていきますので、梅シロップや梅酒、梅ジャムなどにして、おいしく食べてもらえればと思います」と話していました。

一方、梅干しについては原料の梅は冷凍保存されているほか、梅干し自体、保存が利くため在庫もあるとしていて、すぐに影響は出ないとみられるとしています。

和歌山が59年連続で1位

農林水産省によりますと、去年、2023年産の梅の収穫量は全国でおよそ9万5500トンでした。

このうち、梅の生産地として知られる和歌山県はおよそ6万1000トンで3分の2近くを占め、59年連続で収穫量1位となっています。

次いで群馬県がおよそ5520トン、福井県がおよそ1730トン、山梨県がおよそ1650トン、三重県がおよそ1460トンとなっています。

和歌山県は年間を通して気温の差が小さく、温暖で、水はけのいい土壌が梅の栽培に適しているということです。

和歌山県によりますと、江戸時代に徳川家康に仕えていた領主が年貢に苦しんでいた農民を助けるために梅の栽培を推奨して広まったとされています。

特に肉厚な果肉と柔らかさから最高品種とされる「南高梅」は、和歌山を代表する品種として全国に知られています。

「来年は豊作になって」

6日、田辺市の世界遺産「熊野本宮大社」で、梅の生産者や加工業者などおよそ40人が訪れて梅の豊作や関連する産業の繁栄を祈願する「梅祭」が行われました。

生産者などは、収穫が最盛期を迎えている、南高梅およそ30キロをたるに入れて奉納しました。そして、九鬼家隆宮司が梅に塩とお神酒をかけて漬け込む「梅漬けの儀」を行いました。

この梅は、加工業者などが持ち帰り、1か月ほど漬け込んだあと、梅干しにして、ことし10月に再び奉納するということです。

組合の前田雅雄理事長は「ことしは、近年まれに見る不作で、来年は豊作になってほしいと祈りを込めました。いまは危機的な状態だが、おいしい梅を皆さんに届けられるよう頑張っていきたい」と話していました。