フルコンボ目指す76歳 日課は“エア太鼓” eスポーツに熱中

ゲームを競技として行う「eスポーツ」。

熊本県では認知症予防やお年寄りの生きがいづくりのために各地の自治体がeスポーツを推進しています。

その中でも積極的なのが熊本県のほぼ中央に位置する美里町です。

このeスポーツがことし10月に行われる60歳以上の人たちのスポーツと文化の祭典「ねんりんピック」に初めて正式種目として採用されることになったのです。

町の大会で優勝経験があるほどの腕前を持つ女性がねんりんピックを目指し、挑戦を始めました。

eスポーツで「ねんりんピックに出たい」

宮崎たづ子さん(76)。5月中旬に家でプレーしていたのは、音楽に合わせて太鼓をたたくリズムゲームでした。

流れてくる的をタイミングよくバチでたたいていきます。

的をたたければ「可」、的の中央をたたけば「良」、たたけなければ「不可」となるこのゲーム。すべての的をたたけると「フルコンボ」と呼ばれ、高得点になります。

ねんりんピックでは身体をより多く動かせることからこのリズムゲームが採用されました。

たづ子さんはeスポーツがねんりんピックで採用されると聞き、すぐに練習を始めました。

宮崎たづ子さん
「ねんりんピックに出られたら出てみたいなあってこの年になって、国体とかそういうねんりんピックとかにはスポーツが全然ダメだったけん、eスポーツで出られるんだと思って。あの出られるもんなら出てみたいなって思って練習を始めました」

これまでリズムゲームをほとんど経験したことがなかったたづ子さん。音楽に合わせて身体を動かす難しさに戸惑ったと言います。

「目で見てあの手でたたいて聞いてそれをどうやってあのタイミングよくこうバチを落とすかということが難しくてできたときはうれしいですね」

さらに、課題曲7曲はたづ子さんにとってほとんどなじみのない曲ばかり。

しかし、ここで諦めないのがたづ子さん。

まず始めたのが、若者向けの歌の歌詞を書き起こすということでした。

たづ子さんの秘密のノートには歌詞が

たづ子さん
「これ、私の秘密のノート。歌詞もほら分かっとったほうがたたきやすいかなって。これも自己流で自分でただほら、やりやすいかなと思ってやっただけで。これが正解かなんかわからんけど。『夜に駆ける』が一番(難しかった)。ほら、この辺がこのあたり書ききれんかった。何て言ってるかわからんもん」

さらに、たづ子さんにはもう1つの自己流トレーニングがあります。

日課のウォーキング中に行う、通称“エア太鼓”

“エア太鼓”をしながらウオーキング

歌を口ずさみながら太鼓をたたく動きを繰り返します。

慣れないリズムゲームですが、少しでも上達しようと努力を重ねていました。

宮崎たづ子さん
「もう右手ばっかりでするけんが、ちょっと左手がうまいこといかんでこれができんのよ。あの連打、連打がね。こっちをまあまあ動くけど左が動かない。それで苦労しています」

夫の清一さんも見守る

「ねんりんピック」の熊本県代表を決める予選会が近づき、たづ子さんは課題の克服に取り組んでいました。

課題は曲の終盤。連打したあと流れてくる的をどうしても続けて叩けないのです。

大会本番に向けて練習を重ねました。

目標は課題の克服とフルコンボの達成

そして、予選会当日。

熊本県代表の出場枠は熊本市内が3枠・熊本市外が3枠。

たづ子さんがエントリーした市外の枠に3人しか応募がなかったため、この時点で本選への出場が決まりました。

ねんりんピック本番を見据えたたづ子さんの目標は、課題を克服し、フルコンボを達成すること。

美里町のeスポーツチームのユニフォームを着て気合十分。練習の成果を試す時です。

課題の連打のあとに続く的をたたくことはできるのか。

序盤からテンポよくたたいていきます。歌を口ずさみながらプレイを続けました。

課題の連打の場面、しっかりと的をたたくことができました。

課題は克服できましたが、すべての的をたたくフルコンボを出すことはできず、少し悔しそうな表情を見せました。

宮崎たづ子さん
「とにかく健康で10月まで健康でいて練習をいっぱいする。大会にむけて練習します」

大会後も毎日練習を続けているたづ子さん。

10月に鳥取県で開催されるねんりんピックに向けて、eスポーツに夢中な日々が続きます。