インド モディ首相 連立協議開始 8日に宣誓式見通し 地元報道

4日に開票が行われたインドの総選挙で勝利宣言をしたモディ首相が、3期目の政権維持に向けて5日に連立協議を始め、地元メディアは6月8日には宣誓式が行われる見通しだと伝えました。

4日に開票されたインドの議会下院の選挙では、モディ首相率いる与党インド人民党が議席を大きく減らし、単独では過半数を失ったものの、与党連合としては過半数を維持しました。

選挙結果を受けて、5日午後には与党連合の協議が行われ、モディ首相の3期目を支持する方針を確認するとみられ、地元メディアは、6月8日には宣誓式が行われる見通しだと伝えました。

一方、出口調査の予想に反して大きく議席を伸ばした野党連合も、5日に会合を開く予定で、政権樹立を目指して、連立与党側の少数政党の取り込みをはかってくるものとみられます。

これまで強力なリーダーシップで政権運営を進めてきたモディ首相ですが、与党が大幅に議席を減らしたことで、影響力の低下は免れず、中小の政党との協力を迫られることになり、連立交渉の行方に注目が集まっています。

専門家 “経済不満の広がり”が議席大幅減の要因に

インド政治に詳しいデリー大学のスシラ・ラマスワミー教授は、与党インド人民党が議席を大幅に減らした要因について「物価の高騰や失業といった市民生活に影響する課題が深刻化している。現政権がこうした課題への対応を怠り、何もしてくれないという気持ちが有権者に広がった」と述べ、経済成長の恩恵を受けられないことへの不満が市民の間で広がったことが背景にあるとの見方を示しました。

さらに、モディ政権が推し進めた人口の8割を占めるヒンドゥー教徒寄りの政策についても、少数派のイスラム教徒などとの宗教対立への懸念がヒンドゥー教徒の間でもあり、支持につながらなかったと指摘しました。

そのうえで、最大野党の国民会議派を中心とする野党連合は、こうしたモディ政権への批判票を取り込むことに成功したとしています。

また、新政権の発足に向けた今後の見通しについては、「与党連合の小規模政党が、インド人民党と引き続き連立を組むことを選ぶかが焦点だ」と述べ、与党連合から離反する動きが出ないか注視する必要があるとしています。

そして、与党連合という形で、モディ首相が3期目の政権を維持できても、政策決定などで影響力の低下は避けられないとの見方を示しました。

有権者「より多くの雇用機会を」

与党が大幅に議席を減らしたことについて、首都ニューデリーの有権者からは驚きの声とともに、雇用問題の改善などを期待する声が聞かれました。

与党インド人民党の支持者の30代の男性は「大の支持者なので選挙の結果はショックでした。モディ氏には、次の選挙に向けて今後5年間一生懸命働いてもらう必要があると思います」と話していました。

また21歳の大学生の女性は「モディ氏の率いる与党に勝ってほしかったです。若い世代としてはひたすら勉強を強いる教育システムが変わってほしいし、インドの成長はまだ遅いのでもっと成長して、世界で2番か3番目の大国になってほしい」と話し、さらなる経済成長を期待していました。

一方、インドでは若い世代の失業が大きな問題となっていて、ILO=国際労働機関によりますと、大学を卒業した人の失業率はおととしの時点で29.1%に上っています。

今回の総選挙で初めて投票したという21歳の大学生の女性は「政権に国民の選択を認識してもらうことになり、現状の民主主義にも変化が出ると思います」と話すとともに、失業問題について「まもなく就職の準備に入りますが、雇用機会をもっと増やすことが必要です。優秀な人材を外国へ流出させずに、国内にとどめる努力をすべきです」と話していました。

また24歳のエンジニアの男性も「今後5年でより多くの雇用機会が生まれ収入が上がる政策を期待しています」と話していました。

岸田首相「緊密に連携していきたい」

岸田総理大臣は「モディ首相がインドのさらなる発展に向け、リーダーシップを発揮されるとともに『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向けて、緊密に連携していきたい」とするお祝いのメッセージを送りました。

林官房長官「今後とも日印関係の強化に取り組んでいく」

林官房長官は午前の記者会見で「モディ首相が率いる与党連合の勝利をお祝いする。インドは『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向けた重要なパートナーであり、今後とも、日印関係の強化に取り組んでいく」と述べました。