【動画】福岡 みやこ町 田んぼの脇に現れた“ロボット図書館”

「開放感が全然違うよね。風も感じるし、お日様の日も感じるし」

福岡県みやこ町で、ある工夫をこらした「図書館」が子どもたちの心をつかんでいます。

いったいどんな「図書館」なのでしょうか?

長年、本と関わってきた仕掛け人の話を聞きました。
(北九州放送局カメラマン 野村恵悟)

田園風景に“ロボット図書館”

福岡県東部、みやこ町にある平成筑豊鉄道の犀川駅。
駅舎を出てしばらく歩くと、のどかな田園風景が広がっています。

ここで地域の子どもたちの心をつかんでいるのが、田んぼの脇にぽつんと立つ、かわいらしい顔の木製のロボットです。

やって来たのは家族連れ、子どもたちが手を伸ばす先には…

ロボットのおなかの扉を開けると、子ども向けの絵本など、およそ50冊が並んでいます。

ここは、自然の中で読書を楽しめる“ロボット図書館”です。

町民たちで管理する田んぼ脇の土地に、地域の子どもたちのためにと2023年6月から置かれています。

ロボットの近くにはベンチがあり、四方を山に囲まれた自然の中で思い思いに読書を楽しむことができます。

絵本に夢中になる親子

屋外なので読み聞かせも気兼ねせずに

ロボットの中の本は、いつでも誰でも自由に借りて帰ることができます。

気に入った絵本を繰り返し読むことで、“子どもたちに読書を好きになってほしい”と返却期限も設けていません。

訪れた 男性
「自然の中で読み聞かせできるのは、すごくいいかなって思います」

“本との出会いの場所”を

「開放感が全然違うよね。風も感じるし、お日様の日も感じるし」

ロボット図書館の管理人の山崎周作さん(73)です。

長年、地域の図書館で働いていた山崎さん。

副館長も務め、子どもたちが絵本に夢中になって、成長していく姿を見守ってきました。

30代のころ地域の図書室で働く山崎さん

子どもたちに本に直接触れてほしい。

思案を重ねていた時に、世界中の図書館を紹介する写真集でロボットの形をした本棚を目にしました。

「こんな図書館があれば、子どもたちが本に関心を持つきっかけになるのでは」

そこで思いついたのが「ロボット図書館」です。

工作が得意な知人の手を借り、高さ1.6メートルの木製ロボットが完成。

目は自転車の反射板。

胴体はタンスの引き出し、扉はコロナ禍で使ったアクリル板と、有り合わせの材料を組み合わせ、おととし山崎さんのロボット図書館は誕生しました。

コロナ禍で仕切りに用いたアクリル板

1冊1冊 自分で選ぶ

山崎さんの自宅には、書庫があります。

部屋の壁は本でびっしり。

譲ってもらった本も含め、およそ1万冊にのぼります。

持っている本を子どもたちのために役立てたい、想像力を育む絵本は子どもの成長に欠かせないと、この中から季節にあわせて1冊1冊、自分で選んでいます。

山崎さん
「絵本の中には、悲しんだり弱ったりした時に助けてくれる、そういう物語が入っていると思うんですよ」

「本から吸収すること多いんだよね。絵本を皆さんに活用してもらえればいい」

ロボット図書館“出張”も

ロボット図書館は、時にみずから子どもたちの元へ向かいます。

この日、山崎さんはロボット図書館を仲間とともに抱きかかえ…
トラックに乗せて“出張”です。

いつもの場所には山崎さん手書きの「出張中」看板

向かった先は、認定こども園のお散歩コースです。

到着するとくいを打ち、ロボットが倒れないようにしっかり固定して子どもたちを待ち受けます。

散歩中にロボットに気付いた子どもたち。

すぐにロボットのもとに駆け寄ります。

山崎さんが選んだ本を手に取ると…
夢中になって読み始めます。

気に入った本を次々と取りだして、それぞれに絵本を楽しんでいました。

「僕、本好き」「読むのが楽しい」

ロボット図書館は、地域の子どもたちが、さまざまな本を楽しむ場になっています。

園長
「だんだん本から離れていっているので、携帯電話とかですぐ読める時代になっているので、こうして手にとって本を広げて文字を読む、触れ合うってのがすごくいいと思ってます」

山崎さんが1冊1冊選んだ絵本。

その世界に心つかまれる子どもたちの姿を、山崎さんはニコニコと見守っていました。

山崎さん
「『楽しかったよね』と言ってくれたのが一番よかったよね。出張したかいがあった」

いまは絵本を届けるロボットは1体だけですが、地域の人の中には一緒に新しい「ロボット図書館」を作りたいと話す人もいるそうです。

子どもたちのことを思って活動を続ける山崎さん。

今後は、地域の人たちとこうした場を増やしていって、いっそう絵本に親しみやすい地域にしていきたいと話していました。