目指せABC体制?欧米独占の航空機市場に中国が参入?

目指せABC体制?欧米独占の航空機市場に中国が参入?
中国が国家プロジェクトとして開発した新型旅客機のC919型機。

これまでアメリカのボーイングとヨーロッパのエアバスの2社が世界の市場で圧倒的なシェアを誇ってきた旅客機と競合する機種です。

実際の乗り心地はどうなのか?
メイド・イン・チャイナの新型旅客機は世界市場にどうやって打って出ようとしているのか?

現地で取材しました。

(中国総局長 石川慎介)

中国で一気に拡大?C919型機とは

中国の新型旅客機のC919型機。去年(2023年)5月から中国国内の一部の路線を中心に運航を始めました。ことしに入り、中国の大手航空会社3社が、それぞれ100機を導入すると足並みをそろえてアピールし、今後中国国内で一気に増える勢いです。
C919型機は、航続距離は最長で5500キロあまり、座席数は最大190席あまりです。同じクラスのアメリカのボーイング737型機やヨーロッパのエアバスA320型機と競合する旅客機です。中国独自の製造業の強化をめざす習近平指導部の強い後押しのもとで開発が進められてきました。
開発を担当したのは、上海に拠点を置く国有企業「COMAC=中国商用飛行機」。

2007年にプロジェクトがスタート、設計・製造が続いて2015年にロールアウトし、その姿を現しました。そして2017年に初飛行を行い、その後、機体の耐久試験や厳しい気象条件での飛行試験を繰り返して、2022年に中国の航空当局から安全性を証明する「型式証明」を取得。

去年(2023年)5月から中国の大手航空会社が商業運航を開始し、上海を中心に一部の国内線などに就航しています。

実際に乗り込むと

大手の中国東方航空はこれまでに6機導入し(6月1日時点)、上海と北京、四川省の成都などを結ぶ路線で運航しています。

取材許可を得て成都行きの便に乗り込むと、機内は家族連れやビジネスマンなどでほぼ満席。同じ路線ではエアバス機も運航していますが、中国の国産旅客機を選ぶ乗客も多いといいます。
機体が動きだすと、C919型機が登場する機内安全ビデオを上映。

離陸後ほどなくして提供された機内食のケーキにもこの旅客機が描かれ、初めて導入した航空会社の意気込みを感じました。
機内サービスが一段落すると、客室乗務員に機内を案内してもらいました。大きな特徴は、「ギャレー」と呼ばれるキッチンが欧米のライバル機に比べて広く、作業しやすいことだといいます。
また化粧室も明るく開放感があり、大きめの洗面台は使い勝手がいいとのことです。

乗客にも話を聞くと、出張でよく航空機を利用するという男性は「荷物の収納スペースが少し狭いですが、自国の飛行機なので許容範囲です」とのこと。国産旅客機と知らずに乗ったという女性は「座席が少し広くなった感じがして、とてもいいです」とおおむね好評でした。
到着して乗客が降機したあと、欧米などのさまざまなタイプの旅客機を操縦してきたというベテラン機長に取材すると、「飛行を制御する性能が非常に高く、安全性の高い機器も備えていて、快適性もすぐれている」とのことでした。

海外への売り込み、しかし大きな課題が・・・

中国メディアによりますと、これまでに国内の航空会社を中心に1000機以上の受注があるということです。

そして、ことし2月、海外の航空ショーでは初めて「シンガポール・エアショー」で展示され、飛行する様子も披露されました。これに続いて、インドネシアやベトナムなど東南アジア5か国へも飛行してデモンストレーションを行いました。
一方で、大きな課題も抱えています。国際的な基準として広く通用しているアメリカやヨーロッパの「型式証明」を取得していないため、中国以外で飛行できる国や地域が限られています。

また、中国政府は、本格的な国産旅客機とアピールしているものの、エンジンや飛行制御のシステムなどの基幹部品は欧米メーカーのものが採用されていて、価格も競合する欧米の機体と大きな差はないといわれています。

中国の経済・産業に詳しい専門家は、中国国内市場だけでも今後多くの需要が見込まれるため、まずは国内でのシェア拡大をはかっていくと分析しています。
鈴木 経済研究チーム長
「中国としてはこの機種を輸出したいというところはあるが、海外で飛ばす型式認証が取れない、アメリカの方も出さないという状況なので、輸出は困難と思われる。当面は国内でやっていかざるを得ない。中国市場では、今後6000から7000機の新規と更新の需要があり、そのなかのすでに2割くらいは中国機がとっており、ボーイング、エアバスとの競争はすでに始まっている」

中国の戦略は

開発した航空機メーカー・COMACは、ボーイングやエアバスと同じように、さまざまな機種をそろえて、航空機市場での存在感を高めていく方針です。

すでに「リージョナルジェット」と呼ばれる小型のARJ21型機を開発し市場に投入しています。
中国の航空会社が地方路線などで100機あまりを運航しているとされていて、2022年には海外で初めてインドネシアの航空会社が導入しました。

また航続距離1万2000キロで座席数およそ280席のC929型機の開発計画をロシアと共同でスタートさせています。さらに座席数400席前後のC939型機の開発構想もあるといいます。

中国国内でシェアを拡大して、将来はエアバス(Airbus)とボーイング(Boeing)、COMACの3社の頭文字をとって”ABC体制”をめざすものとみられます。

旅客機も「一帯一路」?

米中対立などを受けて、欧米の「型式証明」を取得するのは難しいのではないかとの見方が広がるなか、海外市場にどう打って出るのか。

国内市場で実績を重ねて安全性への信頼を高め、部品の国産化などによって価格競争力を追求していくものとみられます。

そのうえで改良型も開発しながら、欧米の「型式証明」に必ずしもしばられない東南アジアなど中国が主導する「一帯一路」の参加国への売り込みをはかっていく可能性があります。高速鉄道やEV=電気自動車などと同じような展開になることを期待しているのかもしれません。

エアバスとボーイングがほぼ独占する市場に風穴をあけることになるのか。欧米中心の国際秩序に対抗する中国の対外戦略を後押しするかたちとなる可能性もあるだけに、注目されています。
(5月21日「キャッチ!世界のトップニュース」で放送)
中国総局長
石川 慎介
1993年入局 新潟局 国際部 ウラジオストク支局
モスクワ支局 大阪局 おはよう日本を経て現所属