バイデン政権“ウクライナ供与兵器でのロシア領内攻撃を許可”

アメリカのバイデン政権は、ロシア軍の侵攻を受けるウクライナに対して、東部ハルキウ州の防衛を目的に、自国が供与した兵器でロシア領内を攻撃することを許可したと発表しました。ウクライナ国内での使用に限定していたこれまでの方針を転換した形で、今後の戦況への影響が注目されます。

ウクライナ東部ハルキウ州ではロシア軍が先月、国境を越えて州内に侵入し、国境周辺の複数の集落を掌握したと発表したほか、ミサイルなどで住宅街を攻撃するなど攻勢を強めています。

こうした中、アメリカのブリンケン国務長官は31日、訪問先のチェコで記者会見し、バイデン大統領がウクライナ側の要請を受けて、アメリカが供与した兵器でロシア領内の国境沿いに集結するロシア軍部隊などを攻撃することを許可したと明らかにしました。

アメリカはこれまで供与した兵器についてウクライナ国内での使用に限定するよう求めてきましたが、ロシア領内の一部の地域への攻撃を認める方針に転換した形です。

アメリカ政府当局者によりますと、認められるのはハルキウ州の防衛のための使用で、射程の長いミサイルで国境から離れたロシア領内を攻撃することは引き続き、許可していないとしています。

ドイツ政府も供与兵器でのロシア領内攻撃を認めると発表

また、ドイツ政府も31日、ウクライナが、ハルキウ州への攻撃を防ぐために、ドイツが供与した兵器でロシア領内に攻撃を行うことを認めると発表しました。

ドイツのショルツ首相は戦闘の拡大を防ぐためとして、欧米製の兵器によるロシア領内への攻撃には慎重な姿勢を示してきました。

ウクライナへの最大の支援国アメリカと、それに次ぐ規模のドイツがそろって方針を転換させたことで今後の戦況への影響が注目されます。

ゼレンスキー大統領 SNSでバイデン大統領に謝意

ウクライナのゼレンスキー大統領は31日、SNSでバイデン大統領に対し謝意を示した上で「ウクライナと国民をロシアのテロや、戦争を拡大する試みからこれまで以上に守れるようになる歓迎すべき一歩だ」と評価しました。

そして「こうした断固とした効果的な対応を取り続けるべきだ」として各国に支援の強化を呼びかけました。

ゼレンスキー大統領「欧米の兵器を使うのは時間の問題」

ゼレンスキー大統領は31日、訪問先のスウェーデンで北欧各国の首脳とともに行った記者会見で「ロシア領内で欧米の兵器を使うのは時間の問題だと思う」と述べました。

一方で「戦闘機を使う可能性があるかは今のところ分からない」と述べ、デンマークなどが近く供与するとしているF16戦闘機をロシア領内で使用することについては慎重な姿勢も見せました。

また、ゼレンスキー大統領はこの日、新たにスウェーデン、ノルウェー、そしてアイスランドと2国間の安全保障協定を結び、これでウクライナが安全保障協定を結んだ国は15か国となりました。