紅麹問題受け 機能性表示食品制度見直し 政府対応方針まとまる

小林製薬が機能性表示食品として届け出ていた紅麹の成分を含むサプリメントを摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題を受けて、政府は31日の関係閣僚会合で健康被害情報の報告の義務化や、サプリメント形状の製品について、GMPと呼ばれる製造規範を守ることを義務づけるなど、機能性表示食品制度の見直しなどへの対応方針をとりまとめました。

この問題をめぐっては、消費者庁が機能性表示食品制度の見直しなどを検討し、31日の関係閣僚会合で政府の対応方針がとりまとめられました。

それによりますと、機能性表示食品の届け出事業者に対して
▽医師が診断した健康被害と疑われる情報を集め、因果関係が不明でもすぐに国に報告することと
▽サプリメントを加工する工場では安全で質の高い製品を作るための「適正製造規範=GMP」に基づいた製造管理をすることを、食品表示法に基づく内閣府令の「食品表示基準」で定めるとしています。

このほか
▽GMPを守れているか消費者庁が必要な体制を整備して立ち入り検査を行うこと
▽新たな機能性関与成分を届け出る時に安全性や機能性について専門家の意見を聞く仕組みを導入することなどが
今後の取り組みとしてまとめられています。

また、さらなる課題として
▽特定保健用食品=トクホでも同様の措置をとることや
▽機能性表示食品に限らずサプリメントへの規制のあり方についても検討するとしています。

自見 消費者担当大臣は「この対応方針に即して、よりよい機能性表示食品制度の実現に向けて全力を尽くしたい。本日の取りまとめをもとに関係省庁とも連携しながら、機能性表示食品に関する消費者の信頼性を高めるべく取り組んでいきたい」と話していました。

健康被害 食品衛生法で報告義務づけ

また、31日の関係閣僚会合では、機能性表示食品を製造・販売する事業者に対して、健康被害の情報の都道府県知事などへの報告を食品衛生法の施行規則で義務づけたうえで、報告しなかった場合には営業禁止や停止の措置を可能とする方針も決まりました。

今回の小林製薬の問題のように、多数の健康被害が発生し、製品が広域に流通しているような緊急性の高いケースでは、高度な調査が必要と判断すれば都道府県と連携し必要に応じて国が対応するとしています。

武見厚労相「再発防止にまずは全力」

武見厚生労働大臣は閣議のあと記者団に対し「今回の事案を踏まえたさらなる検討課題として、原因究明を進め、必要がある場合には、食品衛生法上の規格基準の策定を検討することなどとしており、再発防止にまずは全力を尽くす」と述べました。

そのうえで、工場内の青カビが培養段階で混入した可能性があることをめぐり、記者団から小林製薬の製造管理に問題があったのではないかと問われたのに対し「食品衛生法で定める一般衛生管理基準では、カビの発生防止の具体的な規定は設けられておらず、法律上、直ちにに問題があったとは言えない」と述べ、現時点で追加の行政処分を行う考えはないことを明らかにしました。

林官房長官は「紅麹関連製品による健康被害事案は、食の安全や機能性表示食品の信頼にかかわる重大な問題だ。本日の取りまとめに基づいて必要な措置を講じ、食の安全・安心の確保に努めてほしい」と話していました。

GMP取り入れた生産現場からは

政府がまとめた機能性表示食品制度の見直し案で、品質確保のために義務づけられることになったGMPと呼ばれる製造規範を設立当初から取り入れてサプリメントの原料などの製造工程管理を行っている静岡県の食品メーカー「オムニカ」です。

この工場では、材料の受け入れから成分の抽出や粉末化など、それぞれの工程ごとに品質をチェックするための規格をあらかじめ設定し、そこから外れたものが出てきたら製造を止め、原因を調べて安全性や品質への影響がないか確認しています。

たとえば、輸入した果物のビルベリーをサプリメントなどに使われる粉末に加工する工程では、それぞれの工程ごとにサンプルをとって必要なデータを記録し、保管しています。

チェック項目は色やにおいなどを人が確認したり、成分が適切に濃縮されているか専用の機器で計測したりと、200項目以上に上るということです。

摂取した人が腎臓の病気などを発症した小林製薬のサプリメントをめぐっては、錠剤をつくる岐阜県の協力会社の工場ではGMPを守っているという認証を取得していましたが、紅麹原料を製造している大阪市の工場では取得しておらず、厚生労働省の調査でも紅麹菌を培養する段階で青カビが混入したと推定されています。

この問題を受け、政府のまとめた対応案では原材料を受け入れるサプリメントの製造工場でのGMPが義務化され、今後、受け入れ段階での成分全体の同質性を確認するようチェック項目を整備する方針です。

オムニカの高尾久貴 社長は「現在の制度ではGMPが普及しても原材料の品質については完全に立ち遅れている状態だった。今回改めて原材料の受け入れの問題が取り上げられたのは大きな一歩で、今後の取り組みに期待している」と話していました。

専門家「安全性確保を一番大事に考えて対応を」

食品安全に詳しい立命館大学の客員研究員の畝山智香子さんは、今回の見直し案について「これまで機能性表示食品の中身や安全性については事業者の責任で、国は届け出を受けるだけで責任はないというスタンスだったと思うが、今回ある程度国がチェックをするなり責任を持つ形になるような介入を求められることになった。ただ、大きく取り上げられたのが健康被害の情報を早くつかんで被害が出た場合の対策を強化することで、被害にあわないためにどうすればいいのかが全体としては十分に検討されたとはいえず、消費者にとって安全を守るには足りない。消費者庁の本来の目的は消費者を守ることなので、安全性を確保することを一番大事に考えて対応してほしい」と話していました。

また、新たな機能性関与成分の使用の届けを受ける際に、事業者が行った安全性の検証が十分か消費者庁が医学や薬学などの専門家の意見を聞く仕組みを導入することなどが盛り込まれたことについて「これまで食経験がない新規成分についてどういうデータを出して安全性を立証するのかというガイドラインはなく、食品安全委員会を含めて大きな視点できちんとしたガイドラインを作るところから始めなければいけないのではないか。どれだけの食経験があれば安全性の根拠になり得るのか諸外国ではきちんとルールがあるのに対し、日本ではふんわりしていて届け出内容を見ても1年間の販売実績としている企業があるなどばらつきがあり、今後議論をしていく必要がある」と話していました。