群馬 安中 住宅にクマが入り込み夫婦大けが 周辺で警戒強化

31日未明、群馬県安中市でクマが住宅に入り込み、この家に住む70代の夫婦が襲われて大けがをしました。クマはその後、外に逃げ出し、近くの小学校では登下校の際、車での児童の送迎や保護者の付き添いを求めるなど警戒を強化しています。

31日午前0時半前、群馬県安中市松井田町の住宅で、この家の74歳の男性が外の物音に気付いて1階の裏手にある寝室近くの窓を開けたところ、クマ1頭が住宅に入り込んできました。

警察によりますと、クマは体長が1メートルほどの成獣とみられ、男性と、助けに入った72歳の妻の2人が相次いで襲われ、男性は頭や顔などをひっかかれ、妻は腕を骨折し、ともに大けがをしました。

その後、クマは住宅から外に逃げ出したということです。

これを受け、現場近くの細野小学校では保護者に対し、登下校の際には車での児童の送迎や付き添いを求め、31日朝、児童の多くが保護者の車に乗って登校していました。

また、警察も周辺のパトロールなどを強化していて、付近の住宅に不要不急の外出を控え、家の戸締まりをしっかりするよう呼びかけています。

現場はゴルフ場などがある山あいの地域で、過去にも警察にクマを目撃したという情報が寄せられたことがあるということです。

2階にいた次男が語る当時の状況

クマが侵入した際、住宅の2階にいた夫婦の次男(42)が取材に応じ、当時の状況を語りました。

それによりますと、次男は2階で寝ていましたが、母親に呼ばれて1階の寝室に向かったところ、父親は頭から出血していて、母親が119番通報をしていたということです。

また、次男が1階に降りてきた時には、すでにクマはいなかったということです。

クマが侵入してきた寝室の近くにある障子は一部が破けていて、「クマが襲ってきた際に破けたのではないか」と話しています。

自宅の敷地内で飼育しているミツバチの巣箱も荒らされていたということです。

次男は「寝室の畳が血まみれで、両親のけがの様子を見た時にはいったいどうなってしまったのだろうかと思った。命に別状はないということで、ほっとした」と話していました。

親族 “夫婦は住宅の北側 1階寝室で寝ていた”

大けがをした夫婦の親族によりますと、夫婦は当時、住宅の北側にある1階の寝室で寝ていたということです。

2階にいた次男が1階に駆けつけた時、次男の父親は玄関先で倒れていたということです。

また、母親は寝室から離れた居間にある固定電話から119番通報していたということです。

寝室や廊下、それに居間などには血痕が残っていたということです。

近くに住む女性 「今までなかった 怖くなった」

近くに住む80代の女性は「これまでも近くでクマを見たという人がいることは知っていたが、家の中に入ったり、人をけがさせたりすることは今までなかったので、不安です。毎日、田んぼに行かないといけないが、こういうことが起こり、怖くなりました」と話していました。

近くの小学校の校長「安全第一で対応」

現場の近くにある細野小学校の小高哲茂校長は「保護者にメールを送って親の付き添いで登校するように連絡した。登下校を含め、学校生活の中でも子どもたちだけで活動しないようにするなど、安全第一で対応していきたい」と話していました。

群馬県 クマ対策強化決めた矢先に

クマによる被害が全国で相次ぐ中、群馬県は、クマが4月から「指定管理鳥獣」に追加されたことなどを受けて、今年度、範囲を拡大して生息調査を行い、対策を強化していくことを決めていました。

具体的には、正確な個体数を把握するため、赤外線カメラを昨年度までの人の生活エリアに近いおよそ30か所に加え、今年度は山奥にも20か所ほど設置します。

そのうえで、人の生活エリアとのすみ分けによって被害を防止する「ゾーニング」やクマの適切な管理計画の作成などといった対策を強化していくということです。

今回の調査範囲の拡大にかかる費用などを含んだ補正予算案は、現在開かれている定例県議会に提出されていて、今後、審議されることになっています。

県鳥獣被害対策支援センターの長澤忠昭さんは「この調査はあらゆる対策の基礎データになる。人身被害や農業被害を減らすために関係部署と連携しながら、引き続き対策を行っていきたい」と話しています。

インターネットに対処法や出没マップ

群馬県内のツキノワグマの生息数は、2020年度の時点でおよそ2000頭と推定されています。

県によりますと、昨年度は、県内での出没数が715件にのぼり、前の年度より240件余り増えています。

また、人身被害も4件発生し、このうち、去年5月には片品村で、6月には川場村で、それぞれ1人がクマに襲われてけがをしていて、ことしも活動が活発化するこれからの時期は特に注意が必要です。

こうした中、群馬県は被害を防ぐため、5月からインターネット上でクマに遭遇した際の対処法を解説した動画の掲載を始め、7月からは目撃情報をリアルタイムで伝える「出没状況マップ」も公開することにしています。

山本知事は先週の会見で「夏ごろまではクマと遭遇しやすい。山に行く際にはクマよけの鈴やラジオ、撃退スプレーなどを持ち歩いてほしい」と注意を呼びかけていました。

安中市 クマ捕獲のおりを5か所に設置

今回の被害の発生を受け、群馬県安中市は急きょ、逃げたクマを捕獲するためのおりを5か所に設置しました。

安中市が31日設置したのは木の実が多く落ちているクマが立ち寄りそうな場所など、現場から半径500メートルの範囲にある合わせて5か所の地点です。

おりの中には、クマが好むとされるハチミツを置いて中に誘い込むようにしています。

安中市農林課の有阪義和主査は「地域住民も不安になっていると思うので、一刻も早く捕獲できるように尽力したい」と話していました。