大阪 堺市は日本一のバナナ好き なんでなん?

栄養豊富で手軽に食べられるバナナ。

みなさんもお好きですか?

1世帯あたりのバナナ購入量日本一の都市が、関西にあるんです。

それは大阪・堺市。

地元でもほとんど知られていない“日本一”です。

堺市民がバナナ好きなのなんでなん?

(大阪放送局 記者 橘井陸 / ディレクター 矢野菜奈)

堺市民はバナナ好き?

堺市のみなさんに聞きました。

堺市はあることで日本一なんですが、何でしょう?

「古墳の数!」

「住みやすい!」

「バナナ」と答えた方は1人もいませんでした。

堺市民は日本一のバナナ好きだとお伝えすると、みなさん驚いていました。

総務省統計局の最新の家計調査によると、堺市のバナナ購入数量は1世帯あたり年間2万3662グラム。

全国平均を約4000グラムも上回っています。

なぜそんなにバナナを買うのか?取材班がおじゃましたのは堺市内のスーパーマーケット。

ほかの果物と比べても、ひときわ大きなバナナ売り場がありました。

産地や大きさなど様々なバナナが16種類も。

お客さんが次々と購入していきます。

みなさんどうしてバナナお好きなんですか?

「安いでしょ」

「栄養あるからね」

「皮むいたらすぐ食べられるから」

たしかに。

そうですよね。

とはいえ、全国どこで聞いても同じような答えが返ってきそう。

なんで堺市民にバナナが人気なのか?

大阪出身の店長に聞いてみました。

イオンスタイル堺鉄砲町店長 梶本望さん
「ミックスジュースがあるじゃないですか、大阪は。あと大阪の人間は“せっかち”って言われますよね。朝食で口に放り込んでいくっていう人が多いんじゃないかな。でも、はっきりしたことは分からないです」

明確な理由は分かりませんでした。

バナナの加工会社?

さらに調べると、市内には大正時代から続く「バナナの加工会社」があることが判明。

バナナの加工?
約100年の老舗?

堺市で長年バナナを扱ってきた会社なら、何か知っているかもしれません。

社長の薮内寛之さんに聞きました。

そもそも「バナナの加工」とは何なのでしょう?

そう尋ねた私たちを会社の地下に案内してくれました。

そこは8畳ほどの広さの地下室(ちかむろ)。

所狭しと置かれていたのはバナナの箱。

中のバナナはすべて青くてカチカチに堅い状態でした。

実はバナナは、日本にいない害虫の侵入を防ぐため、熟れる前の状態で輸入することが法律で決まっているんです。

この青いバナナをどのように「加工」するのか、見せてもらいました。

まずは地上でスプレー缶を噴射させた状態にして、地下室にそのまま投下。

すぐに入り口をふさぎます。

スプレー缶の中身はエチレンガス。

一定の温度の地下室でこのガスを充満させます。

こうした工程を経て、およそ5日後。

青いバナナはおなじみの甘くて黄色いバナナに変わっていました。

「バナナの加工」とは、バナナを食卓に届けるために必要な「熟成」のことだったんです。

地上の倉庫で温度をコントロールして加工する方法もありますが、この会社では昔ながらの地下室にこだわっているといいます。

薮内産業社長 薮内寛之さん
「気温や湿度が一定の地下室はバナナにとって非常に良い環境。100年以上かたくなに守っています」

なるほど。

そこで、この質問。

なぜ堺市民はバナナ好きなんでしょう?

「うちのバナナがおいしいから。というわけじゃないと思うけどね(笑)」

うーん、やっぱり分かりませんでした。

謎は深まるばかりです。

バナナと関西に歴史あり?

そこで総務省の家計調査を見直してみると、気になる事実が。

バナナ購入数量のトップ10の都市。

その多くを関西の都市が占めています。

堺市だけではなく「関西はバナナ好き」なんです。

なぜ関西の人はバナナが好きなのか?

30年以上関西の食文化を研究しているフードジャーナリストの曽我和弘さんに聞きました。

曽我さんも、はっきりとした理由は分からないとした上で、関西とバナナは古くからのつながりがあるのではないかと指摘しました。

フードジャーナリスト 曽我和弘さん
「バナナは明治36年に初めて日本に入ってきました。そのときは神戸港に入ってきているんです。70キロぐらいが神戸港に入ってきて、それが日本に入ってきたはじめといわれていて、基本的にそこから神戸港が『バナナの港』みたいになっているんです」

昭和初期のバナナの荷揚げ

曽我さんは、西日本は東日本に比べて甘いもの好きの傾向があると指摘します。

そこに早い時期からバナナが入ってきたことで、食文化に根付きやすかったのではないかと言います。

そういえば、堺市のスーパーでも、お客さんがこんな話をしていました。

「トーストを食べたら必ずバナナを食べてますよ」

トーストとバナナ。

相性ぴったりの名コンビですよね。

実は総務省の家計調査では関西のパン好きを示すデータが。

食パンの購入数量で関西の自治体が上位を占めていました。

1位は、堺市です。

フードジャーナリスト 曽我和弘さん
「バナナは朝食べるケースが多いですよね。栄養もあるのでパンといっしょに。パンの消費量とバナナの消費量は結びつくかもしれないですね」

日本一のバナナ好き、堺市。

その明確な理由は分かりませんでしたが、街にはバナナへの愛やこだわりが根づいていました。

その歴史にも思いをはせながら、これからもおいしくバナナをいただきます。

(5月22日「ほっと関西」で放送)