【解説】“仏がウクライナへ兵士訓練の教官派遣する計画”

ウクライナ軍の総司令官は、フランスが兵士を訓練するための教官をウクライナに派遣する計画を進めていると明らかにしました。

そのねらいと、戦況への影響についてキーウで取材している横山記者に聞きました。

※「国際報道2024」で5月28日に放送した内容です。
動画は3分46秒。データ放送ではご覧になれません。

ウクライナのゼレンスキー大統領は27日、スペインを訪れてサンチェス首相と会談。2国間の安全保障協定を締結しました。

ことし中に10億ユーロ、日本円で1700億円余りの追加の軍事支援が行われるといい、サンチェス首相は、防空システム「パトリオット」のミサイルや、ドイツ製の戦車「レオパルト2」などを供与するとしています。

ゼレンスキー大統領は欧米に対し、防空システムのさらなる供与を求めました。

「ロシアは(1か月に)およそ3000発もの誘導爆弾を使っている。少なくともあと7基のパトリオットが必要だとずっと求めている」。

こうしたなか、ウクライナ軍のシルスキー総司令官は27日、フランスが兵士を訓練するための教官をウクライナに派遣する計画を進めていることを明らかにしました。

派遣の規模や時期については明らかにしていませんが、フランスの教官が準備のため、近くウクライナの訓練施設を訪れる予定だとしています。

実際に教官が派遣されれば、ロシアによる反発は避けられないとみられ、今後、ヨーロッパ各国がこうした動きに加わるかどうかにも関心が集まっています。

ねらいと戦況への影響

Q.今回のシルスキー総司令官の発表にはどのような意味があるのでしょうか?

A.ウクライナと欧米側の軍事的な協力のレベルを上げ、ウクライナ軍の強化に努めていると国内外に示すねらいがあるとみられます。

ウクライナではこのところ、東部を中心にロシア軍が攻勢を強めています。
今月10日にはハルキウ州でロシア軍が国境を越えて侵入し、集落を掌握したと発表していて、防御、そして撃退が喫緊の課題となっています。

ウクライナ国内での訓練についてウクライナとフランスの国防省はいずれも
検討しているとは明らかにしましたが決定とまでは発表していません。
こういったところに、対応を急ぎたい総司令官の姿勢も感じられます。

Q.外国から教官の派遣を受けることで戦況にはどういった効果があるのでしょうか?

A.戦況をすぐに好転させられるかは不透明ですが、長い目で見て改善につながる可能性はあります。

ロシアによる侵攻後、ウクライナからは兵士が各国に派遣され、地上の戦闘や戦闘機の操縦といった訓練を受けてきましたが、外国への派遣は多くの手間がかかります。

教官がウクライナに来れば効率が高まることが期待され、アメリカのニューヨーク・タイムズは、より前線に近い場所で新たに加わる兵士15万人の
訓練を支援するようウクライナ側から欧米側に求めていたとも伝えています。

今後のポイントは、ほかの国の動向です。

すでにリトアニアやチェコなどもウクライナ軍の兵士の訓練のため教官を派遣することに前向きな姿勢を示していて、こうした動きがどこまで拡大していくかどうか、焦点となります。