“日本は独立した人権機関設立を” 国連人権理事会の作業部会

国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会は28日までに公表した調査報告書の中で、日本には独立した人権機関がないことに懸念を示したうえで、救済に障害を生じさせないよう設立を求めるなど、政府にさまざまな勧告をしています。専門家は「指摘を踏まえ国際的な基準とのギャップを埋められるよう取り組む必要がある」と指摘しています。

各国の企業活動における人権問題などを調べて対応を促す国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会は、去年の夏に日本で初めて行った調査の報告書を公表し、ジャニー喜多川氏による性加害問題のほか、さまざまな人権問題を指摘しています。

具体的には
▽政府から独立した人権機関がないことに深い懸念を示し、救済を求めるうえで障害を生じさせる可能性があるなどとして、人権機関を設立するよう勧告しています。

このほか
▽賃金や管理職登用などにおける男女格差や
▽東京電力福島第一原子力発電所で廃炉や除染作業などを行う作業員の賃金や健康の問題
▽アニメーション業界の長時間労働の問題などについて課題を指摘しています。

報告書に対する日本政府の見解もあわせて公表されていて、この中で一部の指摘については「事実誤認や一方的な主張と思われる事項が含まれている」などとコメントしています。

国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」の事務局長の小川隆太郎弁護士は「企業が人権を尊重する責任を果たせるよう、国が仕組みを改善すべきという提言が多い印象を受けた。法的拘束力はないものの真摯(しんし)に受け止め、指摘を踏まえて国際的な基準とのギャップを埋められるよう取り組むことが必要だ」と話しています。

報告書は来月下旬に国連人権理事会に提出される予定です。

被害訴えてきた人「画期的で重大な出来事」

国連人権理事会の作業部会が公表した報告書の中で、ジャニー喜多川氏による性加害問題も言及されたことを受け、被害を訴えてきた「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の石丸志門さんは「国連に関係する機関が一企業を名指しして問題提起をしたことは、エンタメ業界にとって画期的で重大な出来事ではないかと思います」とコメントしています。

また、被害を申告した人への補償を進めている『SMILE-UP.』に対する指摘を踏まえ「弁護士費用が被害者本人の自己負担になっていることを容認できないとするなど、具体例を示して非難していた点もありました。そうした点は、被害を訴える人にとってとても重要で、『SMILE-UP.』は指摘されたことについて、改善をしていってほしい」としています。

SMILE-UP. “引き続き被害者救済に向け真摯に対応”

国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会が公表した調査報告書で、ジャニー喜多川氏による性加害問題についても課題を指摘されたことを受け、旧ジャニーズ事務所から社名を変更した「SMILE-UP.」はNHKの取材に対し「被害者救済に向けた弊社の努力について一定程度のご理解を頂いたものと考えておりますが、報告書では何点かの指摘もなされていることから、これらの指摘内容を精査の上、引き続き被害者救済に向け真摯に対応して参りたい」などとコメントしています。

また、報告書の中で被害者のメンタルケアや補償をめぐる費用負担について課題を指摘されたことについては「被害者救済委員会によれば、被害者の方から専門家を同席させたい旨の申し出があればこれに応じています。補償プロセスにおいて弁護士のサポートがなくとも補償金額の算定および支払いを受けられる体制だと聞いています。被害者の方が弁護士を起用する場合でも、補償金額は日本の裁判例で通常認められる賠償金額よりも高額な金額が提示されていると認識しており、諸般の費用も含まれる趣旨だと認識しています」などと説明しています。