政治資金規正法改正 自民が修正案 野党“不十分” 30日協議へ

政治資金規正法の改正に向けた与野党の修正協議で、自民党は、「政策活動費」を議員が支出した年月を開示することや、施行から3年をめどに法律を見直す規定を盛り込むなどとした修正案を示しました。野党側は、不十分な内容だとして企業・団体献金の禁止などを追加するよう求め、30日に改めて協議することになりました。

与野党双方が提出した政治資金規正法の改正案などをめぐり、自民党は29日午前、衆議院の特別委員会の理事懇談会で各党の主張を一部取り入れた法案の修正案を示しました。

それによりますと、党から支給される「政策活動費」について項目ごとの使いみちに加え、支出した年月を開示するとしています。

また、議員に規正法違反などがあった場合に 政党交付金の一部の交付を停止する制度を創設するほか、個人献金を促進するための税制優遇措置を検討するとしています。

さらに、議員自身が代表を務める政党支部に寄付した場合は税制優遇措置の対象外とすることや、外国人などによるパーティー券購入に関する規制も検討するとしています。

そして、施行から3年をめどに法律を見直す規定を盛り込むとしています。

一方、野党側が一致して求めている企業・団体献金や「政策活動費」の支給の禁止などは盛り込まず、パーティー券の購入者を公開する基準額を現在の「20万円を超える」から「10万円を超える」に引き下げるなどとした法案の骨格は維持しています。

これに対し、立憲民主党など野党側は不十分な内容だと主張し、公明党も含めた各党が持ち帰りました。

そして、午後に再開された理事懇談会で野党側は、企業・団体献金の禁止などを追加することや、岸田総理大臣も出席して質疑を行うことを求めました。

また、公明党は党内で対応を協議していると説明しました。

これに対し、自民党は引き続き修正案の内容を検討する考えを伝え、30日、改めて協議することになりました。

《与党側》

自民 大野氏「前進させようと思っている 党内調整できていない」

与党側の筆頭理事を務める自民党の大野敬太郎氏は記者団に対し「われわれとしては、これだけ大きな事件を起こしたのでしっかり対応しないといけないという認識で、何かしら前進させようと思っているが、党内調整が完全にはできていない。基本的には今月中に衆議院を通過させるということで引き続き努力したい」と述べました。

また記者団から30日の修正協議で、再度修正した案を示すかを問われ「そこまでできるかどうかも含めてこれから検討したい」と述べました。

公明 中川氏「なるべく早い段階で党としての結論示したい」

特別委員会の理事を務める公明党の中川康洋氏は記者団に対し「自民党からの提案に対しなるべく早い段階で党としての結論を示したいと伝えた。あす、党の役員会や中央幹事会などがあるので、そうしたところも見据えながらの対応になってくる」と述べました。

《野党側》

立民 笠氏「修正協議が行われるような提案期待したい」

特別委員会の野党側の筆頭理事を務める立憲民主党の笠国会対策委員長代理は記者団に対し「自民党は『真摯(しんし)に対応している』ということなので、それを信じ、野党側が要求している3項目について、本当の意味での修正協議が行われるような提案を期待したい」と述べました。

そのうえで、法案の審議日程について「今週中の採決はあり得ず、到底受け入れられない。少なくとも修正協議がまだ行われていて、いろんな論点について審議をしなければならない。今月中の衆議院の通過は難しいのではないか」と述べました。

立民 泉代表「自民と公明は『同じ穴のむじな』」

立憲民主党の泉代表は党の会合で「自民党は野党の求めにゼロ回答で、公明党も自民党の案に賛成するのではないかという話になっている。結局は『同じ穴のむじな』のような状況で、今の両党の姿を世に発信しなくてはならない」と述べました。

そのうえで「企業・団体献金の禁止など、特に野党が共通して求めている3点について、与党側からしっかりとした答えを出してもらわなければならない」と述べました。

立民 安住国対委員長「要望にゼロ回答 納得いかない」

立憲民主党の安住国会対策委員長は、党の会合で「自民党からは、野党側の要望に対してゼロ回答だった。公明党を何とか賛成にして、世論や国民を無視して中央突破しようということのようだが、みずから起こした事件についておざなりの対策を出してごまかそうというのは納得いかない。野党全体で話し合い、もう一段、政策活動費の公開や企業・団体献金のあり方について交渉していきたい」と述べました。

維新 藤田幹事長「自民の修正案 全く改革の意思感じられず」

日本維新の会の藤田幹事長は、記者会見で「自民党が提示した修正案は、全く改革の意思が感じられない。政策活動費の透明化は完全に骨抜きで、企業・団体献金のあり方もテーブルにのせる意思がなく、議論を避けている。法案の付則や付帯決議に少し記載するのではなく、本則に大きく踏み込んで姿勢を示すことが最も必要だ。委員会で議論し、最終的にどのような形で態度表明するか決めたい」と述べました。

共産 田村委員長「要求に対してゼロ回答はありえない」

共産党の田村委員長は記者会見で「『裏金事件』のような事件を二度と起こさないために野党が突きつけた要求に対してゼロ回答はありえない。要求がのめないのであれば、なぜのめないのかの議論を特別委員会できちんとしなければならない。もし自民党が公明党の了承を取り付けて採決を強行するようなことがあれば、岸田政権も自民党も国民から完全に見放される」と述べました。

国民 玉木代表「不十分な中身だと言わざるをえない」

国民民主党の玉木代表は党の会合で「自民党の修正案にはわが党が主張してきた、議員に規正法違反などがあった場合に、政党交付金の一部の交付を停止する制度などは盛り込まれたが、本丸の『政策活動費』の廃止や全面公開などは全く盛り込まれず、不十分な中身だと言わざるをえない。公明党もまさかこんな内容で合意するのかというものだ。政治全体に対する信頼を回復する立法プロセスであり、妥協せず、信頼に足る改革を求めたい」と述べました。

《関連した動き》

自公の幹部 今の国会での改正へ改めて連携を確認

自民党と公明党の幹部が会談し、今の国会での政治資金規正法の改正に向けて改めて連携を確認しました。

国会の会期末まで1か月を切った中、自民党の茂木幹事長と浜田国会対策委員長、公明党の石井幹事長と佐藤国会対策委員長が会談し、今後の国会運営などをめぐって意見を交わしました。

この中で茂木氏は政治資金規正法の改正に向けた与野党の修正協議で、自民党が各党の主張を一部取り入れた法案の修正案を示したことを説明しました。

そのうえで両党は今の国会での法改正の実現に向けて改めて連携を確認しました。

このあと浜田氏は記者団に対し「しっかり法改正をできるようお互い努力することを確認した。自民党と公明党がしっかりとタッグを組むことが重要だ」と述べました。

一方で、法案の審議日程については「なかなか日程の話まで届いていない」と述べるにとどめました。