【詳細】イスラエル・パレスチナ 中東情勢(5月29日)

ガザ地区の地元当局は、イスラエル軍が28日も南部ラファを空爆し、21人が死亡したと発表しました。
国連機関は、この3週間でラファから100万人以上が避難を余儀なくされたと明らかにしました。

※中東情勢に関する日本時間5月29日の動きを随時更新してお伝えします。

ラファに空爆相次ぎ 3週間で100万人以上が避難 UNRWA

UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は、28日の会見で、「過去3週間に100万人以上がラファから避難した」と述べ、多くの住民がラファからの避難を余儀なくされたとしたうえで、一刻も早い停戦を訴えました。

国連事務総長 “ラファ攻撃は絶対容認できない破壊”

国連のグテーレス事務総長は、国連の会議で訪れていたカリブ海の島国アンティグア・バーブーダで28日、NHKの単独インタビューに応じました。

この中でイスラエル軍が攻撃を続けているガザ地区南部ラファでの状況について、「民間人の死傷者の数や民間インフラや住宅の破壊が前例のない形で軍事作戦が行われてる」「絶対に容認できないレベルの破壊だ」と述べて、イスラエルを強く非難しました。

また先週、ICJ=国際司法裁判所がイスラエルに対してラファへの攻撃をただちに停止するよう暫定的な措置を命じたことについて、「国際法と国際人道法、それに法の支配が優先され、国際司法裁判所の判決が尊重されなければならない。これは意見ではなく、拘束力のある決定だ。イスラエルはその決定に従わなければならない」と強調し、ただちに攻撃をやめるようイスラエルに強く求めました。

そして国際社会の対応について「混乱を止めなければならない。人質を解放し、いま目の当たりにしている破壊と殺りくを止め、民間人を解放するためにあらゆることを行ってほしい」と述べ、戦闘の停止と人質の解放に向けた交渉の仲介をはじめ、事態の打開に向けた働きかけを強めるよう、各国に呼びかけました。

米政府高官 “対抗措置でICC制裁 正しいやり方だと思わない”

ICC=国際刑事裁判所のカーン主任検察官が5月20日、戦争犯罪や人道に対する犯罪の疑いでイスラエルのネタニヤフ首相らの逮捕状を請求すると明らかにしたことをめぐり、アメリカのバイデン大統領は「言語道断だ」と批判し、ブリンケン国務長官はICCに対して何らかの措置をとる可能性を示唆していました。

これについて、ホワイトハウスのカービー大統領補佐官は28日、記者会見で「アメリカは逮捕状の請求を支持しない」と改めて批判する一方で、「ICCに制裁を科すことは正しいやり方だとは思わない」と述べて、関係者への制裁には否定的な考えを示しました。

アメリカでは、野党・共和党の一部の議員からICCに対して制裁を科すべきだとの声があがっていて、バイデン政権の対応に関心が集まっています。

国連安保理 “ラファ攻撃の即時停止” 決議案を提示

外交筋によりますと、国連安全保障理事会では、イスラエルに対してガザ地区南部のラファでの攻撃を直ちに停止するよう求める決議案をアルジェリアがとりまとめ、28日、安保理の理事国に示しました。

アルジェリアはできるだけ早く採決にかけたい意向を示しているということですが、イスラエルを擁護してきたアメリカが決議案の修正を求める可能性もあり、今のところ採決の時期は決まっていません。

米国防総省 “悪天候で浮き桟橋一部破損 物資搬入中断”

アメリカ国防総省は28日、ガザ地区に海上から人道支援物資を搬入するためアメリカ軍が設置した浮き桟橋の一部が悪天候の影響で破損し、物資の搬入を中断したと明らかにしました。

国防総省のシン副報道官は記者会見で、破損した桟橋はガザ地区の海岸からいったん撤去して修理を行うと説明し「修理には少なくとも1週間以上かかるだろう」と述べました。

シン副報道官によりますと、5月17日に浮き桟橋からの支援物資の搬入を始めてから、これまでに1000トン以上の物資がガザ地区に届けられたということですが、搬入の中断で人道状況の改善がさらに遅れることも懸念されます。

米高官 ラファ空爆懸念も イスラエル軍事支援の方針変わらず

アメリカ・ホワイトハウスのカービー大統領補佐官は28日、記者会見で、ラファへの空爆で45人が死亡したとされることについて、「胸が張り裂けそうな映像だった。イスラエルは罪のない人々の命を守るため、あらゆる予防措置を講じなければならない」と述べて懸念を示しました。

一方、28日の攻撃については、「イスラエル側はそのような攻撃はなかったとしており、それについて話すことはできない」と述べるにとどめました。

また、ロイター通信などが、現地の目撃者の話として、イスラエル軍の戦車がラファの中心部に到達したと伝えていることについては「大規模な地上作戦は見られない」と述べました。

そしてカービー補佐官は、イスラエルへの軍事支援を続けるアメリカの方針について、記者団から空爆などを受けて変更することはないか繰り返し問われましたが、「政策変更について何も話すことはない」と述べて変わりはないという認識を示しました。

バイデン大統領は、イスラエル軍がラファへの大規模な地上作戦を行った場合、砲弾などの武器を供与しないと警告していますが、住民の犠牲は今もあとをたたず、アメリカメディアからは支援の停止を決める基準を問う質問が相次いでいます。

イスラエル軍 ガザ地区南部ラファを空爆 21人死亡 64人けが

ガザ地区の地元当局によりますと、28日、イスラエル軍が南部ラファで、多くの住民が避難する場所を空爆し、21人が死亡、64人がけがをしたと発表しました。

これに対してイスラエル軍は声明で「空爆は、人道エリアには行っていない」としています。

さらにロイター通信などは現地の目撃者の話として、イスラエル軍の戦車が28日、ラファの中心部に到達したと伝えています。

一方、イスラエル軍のラファへの空爆によって26日に45人が死亡したとされることをめぐりイスラエル軍のハガリ報道官は28日、攻撃で使用した弾薬のみでは多数の死傷者が出ることはありえないとしたうえで、攻撃目標に隣接するハマス側の武器庫に引火して被害が拡大した可能性も含めて調査しているとしています。

ラファでの軍事作戦をめぐっては、5月24日にICJ=国際司法裁判所がイスラエルに対して、攻撃を直ちに停止するよう暫定的な措置を命じていましたが、イスラエル軍は、空爆に加えてラファ中心部に戦車を到達させたとみられるなど攻撃を繰り返していて、国際社会の非難をよそに軍事作戦を続ける姿勢を鮮明にしています。